法秩序の間主観的な構成過程の現象学的解明:法秩序の動態の現象学的把握に向けて
Project/Area Number |
23K12352
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05010:Legal theory and history-related
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
宮田 賢人 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (40881420)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 法哲学 / 法理学 / 法現象学 / 法秩序 / 法動態論 / 現象学 / エトムント・フッサール / 法社会学 |
Outline of Research at the Start |
近年、グローバル化による法秩序の変容や国境を超えたソフトローの増加、法整備支援の活発化などを受け、法秩序の生滅変化の動態を分析する理論枠組の必要性が高まっている。だが従来の法哲学者の分析は、法秩序の本質的特徴を理論家として抽象的に記述するに留まり、この必要性に十分応えられていない。そこで本研究は、主にE.フッサールの現象学を応用して、法秩序の内で様々な役割に即して生きる人々の一人称的法経験を具体的に分析し、法秩序が間主観的に構成される過程を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、法秩序の現象学的探究の前提となる方法論的考察を行うための調査・検討を実施した。第一に、「「観点」から「態度」へ:ハートの「外的/内的観点」区分の現象学的再考」というタイトルの論文を『法の理論』(成文堂、42号)に掲載した。そこでは、ハートの外的/内的観点という二分法的区分を批判的に検討するなかで、さまざまな役割・立場・関心をもつ主体が法秩序へと関わるその多様なあり方を捉えるためには、「観点」という概念をフッサール現象学のキー概念である「態度」に変更すべきことを論じた。そのうえで同論文は、法秩序とは、さまざまな態度に即した法経験が相互に連関するなかで相互主体的/間主観的・意味的に構成される法的世界であること、それに応じて、法秩序の現象学的探究の課題は「それらの多様な諸態度を、適宜、差異化・類型化しながら、各態度をとる主体の一人称的経験においてどのように法が現れているか、そして、それらの法経験の相互連関を分析することで、法的世界の構成過程を解明すること」としてまとめられると論じた。 第二に、日本現象学・社会科学会の第40回大会のシンポジウム(「法と権利の現象学の現在)で「法への現象学的アプローチの課題と可能性: 法哲学者の観点から」というタイトルの報告を行い、法への現象学的アプローチの課題を、法哲学の観点から、法的本質直観の分析、法秩序の静態的/動態的現象学、法的価値の構成分析、法的思考における暗黙知の現象学的解明、批判的法現象学という五つの課題に整理した。 ほかにも、ケルゼンの弟子であり、いわゆるウィーン法学派の一員として、純粋法論をフッサールの現象学によって根拠づけようとしたフリッツ・シュライアーの法現象学を調査・検討し、その議論の整理と現代的意義の考察を行った。また、最近の討議理論の展開を調査するなかで、法・国家の討議理論への現象学的アプローチについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に、法秩序の現象学的探究を開始するための前提となる方法論的考察や、法哲学/法理学の観点から見た法への現象学的アプローチの課題・可能性の整理を十分に行うことができ、次年度以降の課題や方針を明確にすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は主に次の3つに取り組みたい。 ・ハート・ラズ以降の英米法理学の動向を調査し、そこでの議論と法秩序の現象学探究との接点を模索する。とりわけ、義務賦課的ルールと権限付与的ルールの性質の差異が現象学的な観点からどのように分析されうるかを検討する。 ・現象学における本質をめぐる議論・論争が法的本質をめぐる近時の法理学・法哲学の論争に対して有する示唆を調査・検討する。 ・近時の司法判例(例:旧優生保護法に基づく優生手術に対する国家賠償請求訴訟)においても登場した条理概念との関係で、ハイデガーに影響を受けつつ法の現象学的存在論を構想し、それにもとづいて事物の本性論を論じたヴェルナー・マイホーファーの所説を調査する。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)