立法裁量・行政裁量と裁判所による実効的統制─「最低限度の生活」の具体化を巡って
Project/Area Number |
23K12371
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
松本 奈津希 広島修道大学, 法学部, 准教授 (90876707)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 生存権 / 裁量統制 / 社会保障 / 租税負担 |
Outline of Research at the Start |
縮小化社会において憲法25条の生存権保障と税負担配分をどのように調整すべきかという問題に対処するために、税法・社会保障法領域における立法裁量及び行政裁量を憲法の観点から枠づけるための理論を獲得し、現代社会において保障されるべき憲法上の「最低限度の生活」を描出する。その素材として、ドイツ専門裁判所の判例を扱う。専門裁判所による「合憲」判決の中での取り組みからは、「違憲」ではなく「合憲」や「違法」判断の中であっても、裁量を統制していく余地があるという成果が得られるだろう。このようにして、憲法上の最低生活ラインを動態的に明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、日本における立法裁量・行政裁量の統制のあり方について、日独の比較を踏まえつつ、憲法25条の生存権保障の観点から検討を行った。 まず、ドイツの社会法判例として重要な2010年ハルツⅣ判決(BVerfGE 125, 175)を素材とし、その審査の中で注目されているのは「結果」だけではなく、そこに至るまでの「過程」ないし「手続」であること(「手続(過程)審査」)を確認した。また、ハルツⅣ判決においては、いわゆる「首尾一貫性の要請」が用いられたと考えられる。そこで、首尾一貫性の要請を用いる際にしばしば問題となる、「基本決定」とは何かについても、社会国家原理の観点から考察を加えた。 さらに、今日の日本において裁判が行われている、公的年金引き下げ訴訟および生活保護基準引き下げ訴訟について、これらのドイツ法研究から得られた知見をもとに、検討を行った。その結果、日本においても「手続(過程)審査」や「首尾一貫性の要請」の考え方と親和的な裁判例があることが確認された。 以上の研究成果は、論文(拙稿「立法者の形成余地と結果・手続・首尾一貫性──公的年金引き下げ訴訟・生活保護引き下げ訴訟を素材として──」一橋法学22巻2号(2023年)119頁)として公開した。 こうした裁量統制手法を今後より洗練していくことにより、「最低限度の生活」の具体化にかかる立法裁量・行政裁量を、裁判所を通じて実効的に統制していく途が開かれていくと思われるため、引き続き注目したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、ドイツ法研究を行う前提として、日本における立法裁量・行政裁量の統制のあり方を、裁判例を通じて具体的に明らかにする作業を行った。着目したのは、公的年金引き下げ訴訟および生活保護基準引き下げ訴訟である。これらの裁判例の検討を通じて、日独の相違や共通点を見出すことが可能となったため、本研究にとって重要な作業を1つ遂行できたといえる。 他方、公務の関係で、2023年度は海外での情報収集ができなかった。そのため、日本で入手できた資料のみをもとに研究を進めることになり、日本法研究と比較すると、ドイツ法研究の部分の進展が少なかったといえる。 以上のことから、現在までの進捗状況は(2)おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、引き続き日本の裁判例の進展に留意しつつ、日本において最低生活ラインの形成と密接に関わると思われる学説の研究に着手したい。この研究は、「税法・社会保障法領域における立法裁量及び行政裁量を憲法の観点から枠づけるための理論を獲得し、現代社会において保障されるべき憲法上の「最低限度の生活」を描出する」という本研究の目的に即したものであるといえる。 また、日独に共通して、最低生活保障領域で問題となる、世代間公平の問題についても検討を加えたい。これは、「縮小化社会において憲法25条の生存権保障と税負担配分をどのように調整すべきかという問題に対処する」という本研究の目的にとって、必要不可欠であると考えている。そのため、当初の研究計画には含まれていなかったが、この点を検討することとする。 同時に、時間の許す限りで、ドイツの専門裁判所研究も進めていきたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)