Project/Area Number |
23K12385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05050:Criminal law-related
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
大関 龍一 大阪経済法科大学, 法学部, 准教授 (20822274)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 刑法 / 因果関係論 / 危険の現実化 / 客観的帰属論 |
Outline of Research at the Start |
現在、刑法における因果関係論の通説である危険の現実化論は、その判断構造をめぐる「総合考慮モデル」と「現実・予測照合モデル」の分裂という重要な問題を抱えている。因果関係要件は行為者に帰責される結果の範囲を画する機能をもち、犯罪論の骨格の一部をなすものであるから、判断構造の明確化は、犯罪論全体に影響を及ぼしうる重要な課題である。 そこで、本研究は、危険の現実化論の沿革に遡った検討を通じて、2つのモデルの使い分けを可能とする理論構造を解明すべく、①危険の現実化論の系譜調査、②日独の学説比較を通じた理論的基礎の探究、③2つのモデルを分析軸とした判例検討という3つの具体的課題に取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、危険の現実化論の沿革に遡った検討を通じて、その理論的根拠を明らかにしたうえで、判断構造の明確化および実践的な判断枠組みの構築を目的とするものである。この目的を達成するため、①ドイツ法・英米法に遡った危険の現実化論の系譜調査、②日独の学説比較を通じた理論的基礎の探究、③2つの判断モデル(総合考慮モデルと現実・予測照合モデル)を分析軸とした判例検討という3つの具体的課題を設定した。 初年度である2023年度は、主に①の系譜調査に取り組んだ。まず、日本における危険の現実化論の嚆矢は井上祐司の研究に求められるところ、同研究で援用されたエンギッシュ(ドイツ法)およびハート=オノレ(英米法)の著作に検討を加えた。これらの論者の理論が井上の研究を通じて間接的に危険の現実化論に影響を与えたことは確かである。しかし、現在の危険の現実化の判断モデルや日本の判例実務への影響関係・共通性を同定するには至らなかった。 もっとも、ハート=オノレの著作を通じて、英米因果関係論における多数の判例資料とその類型論に触れ、日本の危険の現実化論に応用する素地を見出すことができた。しかし、日本では、限られた最高裁判例に基づく類型論が展開されているにとどまるため、比較法的検討の前提として、判例実務における危険の現実化という枠組みの使われ方を言語化し、その類型化を改めて構築する必要性が生じた。そこで、③日本の判例検討にも先行して取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題①については、日本の危険の現実化論に対する外国法の影響関係の同定を期待したが、当初想定したような成果は得られなかった。現在の危険の現実化論は、日本の判例実務を通じて、ガラパゴス的に展開されたものである可能性が高く、外国法に遡った系譜調査の有用性については再考の必要がある。 もっとも、判例資料を用いた類型論については、比較法検討の素地を見出すことができた。また、日本判例については、近時のものを中心に、一定程度分析・検討を行うことができ、課題③を進展させることができた。そこで、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず日本の判例分析を通じて、判例実務の思考枠組みを言語化し、類型化と考慮要素の抽出を試みる。また、ドイツ法・英米法との類例比較も行い、日本の危険の現実化論の特殊性についても考察する。 研究成果の公表については、2024年7月に学会(刑法学会関西部会)での報告を予定しているほか、これまでの成果を論文にまとめ、投稿することを予定している(媒体は未定)。
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