Project/Area Number |
23K12399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05070:New fields of law-related
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
船橋 亜希子 創価大学, 法学部, 講師 (10803851)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 治療と研究 / 治療の限界 / 未確立医療 / 実験的医療 / 治療目的 / 注意義務 / 同意 / インフォームド・コンセント / 刑法 / 医事法 / 医療行為 / 医療の安全 / 医療の質 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、「医療=治療」という伝統的・古典的な理解から脱却し、その行為の質と目的の観点から、医療の中身を3分類してこれを捉え直す。この3つの「医療」を取り巻く現在の法規制はそれぞれにバラバラであり、法規制が適切に及んでいないものすら存在する。そこで、現在の法制度下での刑法の役割と現代医療の抱える問題への対応の限界と課題を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで「治療」と「研究」とに区別されてきた「医療」という活動をその目的と手段に応じて「治療」・「研究」・「未確立医療」と3分類する医事法・研究倫理領域の議論を踏まえて、それぞれの医療に対する刑事規制の限界を明らかにし、(医事)刑法の役割の再検討を目的とする。 令和5年度は、「治療」の限界に関する研究を行ない、学術論文として公表した。 (1)本研究の準備段階で収集していた刑事医療過誤に関する国内の裁判例の検討:具体的には、①刑事裁判例において「治療」と「研究」とは区別されていないことを確認し、②「治療」として許容されなかった裁判例を抽出して、③当該裁判例で示された「治療」実施の許容要件について検討した。(2)「『治療』と『研究』の区別」と「『治療』と『人体実験』の区別」: 具体的には、①先行研究としての医事法・研究倫理分野における「治療」と「研究」の区別に関する議論を確認し、②(医事)刑法における「治療」と「人体実験」という区別と射程について検討した。(3)Heilversuchについて: (医事)刑法領域の「治療」と「人体実験」の区別の議論においてしばしば用いられてきたHeilversuchの射程について検討した。 以上の検討によって、(医事)刑法領域で用いられてきた「治療」と「人体実験」という独自の分類に関する批判的検討と、医療行為の3分類への統合可能性を試みた。これによって、(医事)刑法の独自の2分類によっては、特に複雑な規制に至っている研究行為が抱える現代的な問題を捉えきれなくなっている一方で、ドイツ刑法学の比較法において示されてきたHeilversuchの概念については、これまで革新的医療・実験的医療・未確立医療・治療的実験と呼ばれてきた医療行為をいわば無意識的に捉えてきた可能性があることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医療行為の3分類のうち「治療」に関する検討を主とした国内の刑事医療過誤に関する裁判資料に関する整理・検討はほぼ終了したと考えている。加えて、(医事)刑法領域において用いられてきた「治療」と「人体実験」という区別と射程を検討してその問題点を明らかにするとともに、研究計画当初予定をしていなかったドイツ刑法学におけるHeilversuchの射程と未確立医療との接合を見出すことができたことは、2024年度からの研究につながる重要な研究成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の検討対象たる3つの医療のうち、とりわけ「未確立医療」についてはその射程を示すことも難しい。そこで、この検討を本研究最終年度の令和7年度の検討課題とする。 最終年度の検討課題に向けて、まず令和5年度の中心的課題であった「治療」に関する研究の成果を踏まえ、令和6年度の中心的課題を「研究」とし、その射程と限界に関する検討を進める。具体的には、①現行の複雑な研究規制に関するルール(法律に限られない)について整理・検討を行う。これによって、関連するルールの全体像とその射程を明らかにして課題を示す。これに加えて、②未確立医療に関する最新の民事裁判例の調査・検討を通じて、最後の砦たる刑法にどのような役割が求められるかを検討する。加えて、令和7年度の研究に向けた準備として保護法益と同意に関する基礎理論の整理・検討を開始する。
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