明治10~20年代の地域社会における多数決による〈近代的政治秩序〉の確立過程
Project/Area Number |
23K12418
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
伊故海 貴則 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (90906744)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 多数決 / 町村会 / 公議輿論 / 明治地方自治制 / 町村制 / 町村合併 / 議会 / 日本近代史 / 地方議会 / 公議 |
Outline of Research at the Start |
静岡県遠江地域をフィールドとし、未刊行の一次史料を調査・分析することで、①地租改正や、明治地方自治制に伴う町村合併をめぐる地域住民の合議を検討し、土地所有者の利害対立から多数決が導入されるに至る過程。②町村会や、複数町村で構成される連合町村会の実態を検討し、町村レベルで多数決を合意形成方法として規範化させた「議会政治」が形成されていく過程。そして、以上の2点の相互作用を通じて、明治10~20年代の地域社会で、議会等における多数決を通じた合意形成方法が規範化していくことを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に、明治地方自治制成立後の町村で生じた住民間の対立について検討するべく、静岡県遠江佐野郡南郷村を事例に、関係史料(掛川市立大東図書館所蔵文書「河井家文書」、「山崎家文書」のほか、『静岡大務新聞』)などを調査した。 南郷村は町村制の施行に伴い、隣接する掛川町と町村組合を形成したものの、両町村の間で町村域の境界をめぐる紛議が発生した。その過程で、南郷村会議員と南郷村住民のなかで、掛川町への合併を推進する「合併派」と、組合を解除し、南郷村の独立を目指す「分離派」が生まれ、村内対立が生じた。この対立は、掛川駅の土地帰属にも関わるため、掛川町にも波及し、両派の対立は激化、最終的には内務省の裁定での解決が図られることになった。 以上の過程において、議員が分離派と合併派に分かれ、住民を巻き込んでの対立に発展するなかで、両派はともに多数住民の「輿論」を自派の主張を正当化する根拠に据えた。本研究は以上の対立を、明治10年代以降に進んだ町村における多数決の規範化に伴い生じた、住民の多数意見(「輿論」)をめぐる政治対立と評価した。なお、上記の研究については、明治維新史学会の大会などで報告して、研究者からフィードバックを得ることができた。 このほか、本年度は遠江の豪農岡田良一郎が主導した近代報徳運動と地域秩序の関係性について、地域住民の「一致」形成という視点で考察したほか、天龍川治水を主導した金原明善が結社による治水事業を進めるなかで、近世由来の地域における水防組合とどのような関係性を構築していったのか、以上2点についての論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の一年目では南郷村の町村分合問題を考察することを記載したが、上記の通り、計画した研究は予定通り着手でき、成果も学会で発表することができた。また、調査の過程で明治20~30年代の町村対立に関する新聞記事も調査できたほか、関連する研究を2点、論文として発表できたため、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に行った南郷村の事例を論文として公表することを第一目標に定める。また、2024年度から研究代表者が、北海道の大学に就職したため、静岡県の事例だけではなく、北海道における多数決による〈近代的政治秩序〉の形成についても研究を行いたいと考えている。北海道では、1901年の北海道会法成立まで議会が設けられず、本州とは異なる制度的枠組みが適用されていたものの、移民集団内の合意形成については、総代人会という議会と異なる制度が生み出されていた。そこでは多数決が採用されていたことが明らかにされているが、総代人会を地方制度形成という観点で扱った研究は鈴江栄一『北海道町村制度史の研究』しか存在しておらず、その内実も具体的に明らかにされていない。そこで、総代人会を多数決による〈近代的政治秩序〉の形成という視点から考察し、本州とは異なった多数決の制度化過程がなされたこと、それが北海道会以降の北海道における議会制度の前史をなすことを論じることで、地域比較的な視座から日本近代社会の形成を研究していく。 その後は、函館区会を事例に多数決による議会の制度化を研究していく予定である。なお、当初予定していた静岡県遠江の事例についても、明治20年の連合町村会と水利土功会などを事例にしつつ、研究していく。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)