Project/Area Number |
23K12598
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
河村 裕樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教育職(教務職員)相当 (10906928)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2027: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 精神医療 / 治療文化 / エスノメソドロジー / 医療社会学 / 医療コミュニケーション |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ある地域で精神科専攻医の養成プログラムを担う医療機関でのフィールドワークを通して、治療文化として理解可能な実践がどのように行われていて、変動期にある精神医療において、治療文化がどのように共有・教示されているのかを記述する医療社会学研究である。その際、治療文化を共有・教示するには、相互行為において他者にも観察可能で、論理的で一貫性のある方法を用いる必要があることから、このような人びとの方法を記述するエスノメソドロジーの構えにおいて、実践を跡づけていく。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、複数の医療者がともに働きながら、調査先医療機関に固有の精神医療実践を形作る実践上の手立てを特定するという本研究の目的のもと、調査先医療機関でのフィールドワークを継続的に実施した。その際、精神科医や薬剤師、看護師やケースワーカーなど、異なる専門性を有すると思われる医療専門職が、入院患者の治療方針について話し合うリエゾンカンファレンス場面の録音・録画データを約18時間分収集した。また、受け持ちの患者を治療するなかで直面する課題を話し合うケースカンファレンスの調査では、約25時間分の録音・録画データを収集した。そして、得られたデータをもとに予備的な分析を進め、その結果のいくつかを学会で報告し、現時点での分析結果の妥当性と今後の分析の方針についてコメントを受けた。 これらを通して明らかになった現時点における本研究の意義は、次のとおりである。第一に、上級医・下級医を問わず発言が活発に行われる調査先のケースカンファレンスの特徴を、会話分析の知見である発話の順番交替システムに関する議論を下敷きにしながら、分析的に導き出したことである。第二に、精神科以外の診療科に入院している患者のうち、精神医療を受けることが必要と判断された患者に精神医療を提供するリエゾン精神医療場面を分析することによって、異なる専門性と知識を有する医療専門職同士が協働することを可能にしている実践上の手立てを分析的に導出したことである。 このように本研究は、これまで調査をすること自体が困難であった精神医療の臨床場面において行われている諸活動の特徴を分析的に記述することで、憶測や印象で語られることの多い精神医療を理解するために、根拠に基づいた知見を提供し得るという点において、重要であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、2023年5月に開催された日本保健医療社会学会にて、「『その医局らしさ』を可能にする実践――精神科ケースカンファレンスにおけるリフレクティング・プロセス」というタイトルで、リフレクティング・プロセスという考え方と照らし合わせながら、調査先のケースカンファレンスで用いられている方法を報告した。また、2023年6月に開催された国際社会学会では、”Reflective Process in Case Conferences: Focusing on Structures that Enable Equal Dialogue”と題して、調査先のケースカンファレンスで行われている実践を、より国際的な議論へと位置づけた報告を行った。そして、2023年10月に開催された日本社会学会大会において、「リエゾン精神医療における多職種協働を可能にする実践上の手立て――異なる専門性のもとでの処方薬調整を事例として」というタイトルで、調査先のリエゾンカンファレンスで、多職種協働を可能にしている実践を報告した。 さらに、日本質的心理学会機関誌『質的心理学フォーラム』に、依頼論文(査読付き)として、「現場から問いを引き受ける――精神科ケースカンファレンスにおける実践の論理」を投稿し、2023年10月に掲載された。あわせて、2023年11月に開催された日本質的心理学会大会のシンポジウムに登壇し、調査を行う上で様々な課題が生じうる精神科をフィールドとした調査研究の特徴について報告し、来場者や他の登壇者らと意見を交わした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後本研究課題を遂行するにあたり、研究環境と生活環境の大幅な変化があったことから、調査計画の一部を見直す必要が生じた。具体的には、これまで毎週一回、調査先の医療機関でフィールドワークを実施してきたが、物理的な距離の制約が生じるため、これを2023年度8月と3月にそれぞれ一週間程度の集中的なフィールドワークを実施するやり方に変更する。しかしそのままだと、調査先医療機関で生じている課題や変化を経時的に捉えることが難しくなるため、遠隔システムを介して週に一回ケースカンファレンスに参加し、その場面を録画することで、現象を経時的に捉えることを試みる。 また、新たな居住・研究先である愛媛県においても、地域に根差した精神医療従者とのネットワークを有している研究者と共同で、月1回程度勉強会を開催し、地域に固有の課題や、治療文化と地域社会の文化的特徴との関わりについて、見通しを得る。可能であれば、このネットワークを活かして、当該地域で行われている精神医療実践の文化的特徴を明らかにするべく、予備調査を実施し、本研究のもともとの調査対象であった医療機関における実践の治療文化的側面の特徴を、より明確に特定することを目指す。 そして、分析の精度をあげるために、2024年6月に開催されるエスノメソドロジー・会話分析研究の専門学会での報告を行う予定である。また、本研究の社会学的な意義を検討するために、2024年10月に開催される日本社会学会大会で報告することを予定している。学会報告以外には、リエゾンカンファレンスの分析をベースとした論文を、国際的な医療社会学の雑誌である”Social Sciences & Medicine”誌に投稿する。また、ケースカンファレンス場面の観察に基づき、精神医療実践における診断概念の位置づけについて検討する論文を、日本保健医療社会学会機関誌『保健医療社会学論集』に投稿する。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)