Project/Area Number |
23K12603
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中村 昇平 東洋大学, 国際学部, 助教 (60913275)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2027: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 地域社会学 / 都市社会学 / インドネシア / エスニシティ / 農村社会学 / 帰属意識 / 身体 / 地縁コミュニティ / 武術 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、一般的な集団意識が日常次元の包摂/排除の局面に結びつく過程と、社会的排除・分断が顕在化する局面で分断を越えた社会関係を創出して包摂と連帯を可能にする過程を説明することにある。均質化と標準化に特徴付けられるエスニシティ観念とは異なる次元における連帯の創出を人々の実践の中に見出し、新自由主義の浸透によって個人が分断・流動化される現代社会における連帯の可能性を提示することが最終的な目標である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドネシア、ジャカルタ郊外のブタウィ人の事例に着目して、集落の帰属意識から民族意識を説明しようとするものである。平成30年度提出の博士論文では、集落先住者が中心となって運営する住民自治組織の活動から、先住者ブタウィの集落(カンプン)への帰属意識を説明した。集落としてのカンプンへの注目は、これまでジャカルタの住民コミュニティ研究では実態が明らかにされてこなかった点だった。また、博士論文以降にジャカルタで行なった現地調査の成果としては、武術実践が集落の帰属意識をかたちづくる過程を詳細に論じた。この成果は、複数回の口頭発表および、書籍の一章として発表してきた。この成果をこれまでの研究と結びつけることとで、社会組織・親族認識に加え、身体実践の側面からも、ブタウィ人の集落・民族意識の実態の包括的解明を目指してきた。加えて、令和5年度にジャカルタ近郊で実施した現地調査においては、集落の芸能・身体技法について良質の映像記録を収集する試みもはじめており、順調にデータが収集できている。 本研究ではまた、京都郊外の村落先住者としての自身の立場性を踏まえた上で当該地域での調査を実施してきた。その過程で、京都周辺の村落とジャカルタ周辺の集落を比較の俎上に載せる試みを続けている(令和元年には単著として成果を刊行した)。令和2年度以降は、建築環境の改変とまちづくりに着目し、より具体的な調査を実施してきた。令和5年度は、もと村の共有地であった農業用ため池の利活用をめぐるまちづくり活動に参与観察調査を行ってきた。令和5年12月には、この成果を「調査者の立場性」の観点からまとめ、現代民俗学会第71回研究会で口頭発表を行った。こうした試みが順調に進展すれば、インドネシアの慣習村研究と都市研究、日本の村落研究を接合し、三者を新たな観点から捉え直す議論となることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、インドネシア、ジャカルタ郊外のブタウィ人の事例に着目して、集落の帰属意識から民族意識を説明しようとするものである。令和5年度は、10日間の現地調査を実施し、参与観察とインタビューを用いて、集落の親族関係、経済関係、身体技法等に関する調査を行うとともに、芸能や身体技法に関する良質な映像記録を収集する取り組みを行った。これまでのジャカルタを対象とした研究成果を前提として、令和6年3月には書籍『東南アジアで学ぶ文化人類学』(昭和堂,2024)に分担執筆で寄稿(「民族とエスニシティ──『民族』の境界はどう決まるのか」)した。ここでは、ブタウィ人の事例から人種エスニシティ研究・民族論の問題点、論点を簡潔に整理するとともに、ジャカルタ、ひいてはインドネシアの民族状と、日本社会の人種民族状況との比較の可能性を示した。また、京都市郊外の村落でも、生活における建築環境、自然環境と人々とのかかわり合いについての参与観察から、村落への愛着とその可変性・開放性について調査研究を実施した。この成果をまとめ、令和5年12月に現代民俗学会第71回研究会で口頭発表した。 調査研究の進展と成果発表に鑑みて、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ジャカルタを対象としてこれまで行ってきた、集落の親族関係・身体技法・芸能と帰属意識の関係についての調査を継続するとともに、収集した映像資料を用いて身体技法をより詳細に考察、感覚と帰属意識との関係性を論じることを目指す。その理論的な準備は、鈴木赳生氏(京都精華大学)との共同でこれまでにも行ってきており、令和5年5月の関西社会学会第74回大会では「感覚とエスニシティ」をテーマとした口頭発表を行っている。今後は、理論的成果とフィールドでの知見を接続することで、認知科学的な知見にかたよりがちな人種論・民族論を身体技法や感覚・情動の観点から批判する、より現実に即したエスニシティ論の構築を構想している。
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