Project/Area Number |
23K12606
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
前川 志津 立教大学, 社会情報教育研究センター, 教育研究コーディネーター (20935887)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 歴史継承 / 元アメリカ兵捕虜 / 第二次世界大戦 / 戦後和解 / ナショナル・アイデンティティ / 戦争捕虜 / コミュニケーション |
Outline of Research at the Start |
本研究は、敵国として第二次世界大戦を戦った歴史をもつ日米市民が、大戦の歴史について建設的なコミュニケーションをおこない、紛争の過去を乗り越え、友好な関係を築くための課題と可能性を探求する。事例として大戦中に日本軍捕虜となった元アメリカ兵、およびその家族と日本人のあいだのコミュニケーションを取り上げ、それぞれの市民がコミュニケーションに向き合う態度とナショナル・アイデンティティの関係を明らかにすることで、戦後和解のコミュニケーションに関する新たな知見を得ることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、ニューメキシコ州で開催された元捕虜の家族を中心に構成されたソーシャルグループ「American Defenders of Bataan & Corregidor Memorial Society(ADBC-MS)」の年次大会に参加し、6泊8日のフィールドワークを実施した。4日間の大会期間中に企画されていたすべてのプログラムに参加し、捕虜の歴史が次世代に人々によってどのように語り継がれているのかを明らかにするためのデータを収集した。音声データはすべて文字に起し、特に本研究と関連のある、元捕虜の子どもたちが日本政府の招聘により日本に滞在した交流事業を報告したプログラムの音声データに関しては、コーディングまで終了した。 コーディングの結果、交流事業の語りの2つの特徴が明らかになった。1つは日本の歴史認識に対する厳しい批判、もう一つは自身の思いや感情を述べる語りが多いことである。全体としてアメリカの捕虜の物語を逸脱する語りはなく、第2世代への歴史の継承は問題なく行われていると結論できるが、今後、今回収集できた第2世代の思いや感情、そして少数ではあるが歴史の意味づけの語りをさらに精緻に分析することで、戦後和解のコミュニケーションに対する第2世代の態度を明らかにする可能性が得られた。 アメリカ社会の戦争をめぐる言説に関しては、2000年1月1日以降のNew York Timesのデータベースをキーワード「Prisoners of War」で検索し、2589の対象記事を抽出した。2020年以降の記事をクリーニングし、重複しているものや関連のないものを除外した約210件の記事のうち、およそ半数のコーディングが終了した段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アメリカでのフィールドワークを実施し、貴重なデータを収集できたのは計画通りの大きな成果であった。すべての音声データの文字起しが完了し、また、戦後和解の中心的な語りとなる交流事業の報告に関してはコーディングまで終了、その特徴をつかむことができた。本年度は、それらの語りから「第2世代の戦後和解のコミュニケーションに向かう態度」について得られた示唆を学会で報告する予定であったが、示唆を得られるところまでは考察を進められなかった。 アメリカ主要メディアにおける2000年以降の戦争の語りの分析は、対象とするデータベースの選定、検索キーワードの決定に時間を要した。また、最終的な分析対象を決定するために検索結果をクリーニングする必要があることも想定していなかったため予定よりも進捗が遅れているが、今後は分析速度があがると期待できる。 戦後和解関連、コミュニケーション関連、第二次世界大戦関連の文献調査に関しては、概ね予定通りに進んでいる。 以上から、進捗状況はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も「American Defenders of Bataan & Corregidor Memorial Society(ADBC-MS)」年次大会のフィールドワークを行う。2023年度のフィールドワークから、「家族」が第2世代の語りの鍵概念であることが判明した。2024年度は特に「元捕虜の娘たち」による父親についての語りの聞き取りから、元捕虜家族の経験にアプローチする予定である。また、これに伴い、アメリカの家族、特に父と娘の関係に関する文献調査を行う。最終的には「家族」の語りが戦後和解のコミュニケーションにどのような影響を持つのかを明らかにしたい。
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