Project/Area Number |
23K12607
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
清水 拓 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (80875203)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 石炭産業 / 炭鉱労働 / 炭鉱技術 / 採炭技術 / 生産職場 / 労働態様 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、日本石炭産業の衰退期において、採炭技術が複線的発展を遂げ、それに伴って生産職場における労働態様も多様化したこと明らかにする。一般的に技術は発展とともに収斂するという見方で論じられる傾向にあるが、石炭産業の場合は、自然条件の不確実性という環境制約によって生産技術が収斂せず、複線的発展を遂げた。それに伴い、固定配番による平準化した生産が可能だった炭鉱もあれば、その時々の自然条件や作業内容に対して流動配番によって対応せざるをえない炭鉱も存在した。本研究では、三井芦別炭鉱(1992年閉山)、住友赤平炭砿(1994年閉山)、太平洋炭砿(2002年閉山)を対象に、その生産職場を比較検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本石炭産業の衰退期における採炭技術の複線的発展と、それに伴う生産職場の労働態様の多様化の実態を明らかにすることを企図している。2023年度は、三井芦別炭鉱と住友赤平炭砿の技術史・労務管理史の整理を目標に、以下の3点に取り組んだ。 第一に、急傾斜採炭の生産職場に関する資料収集である。全国の産炭地の古書店を通じて関連資料を収集したほか、芦別市星の降る里百年記念館において三井芦別炭鉱旧蔵資料の閲覧・複写をおこなった。社史・組合史等の記念誌については収集できたが、そこでの情報を補完する一次資料の収集については難航しており、技術史・労務管理史の整理・記述が可能になるほどの蓄積には至っていない。 第二に、急傾斜採炭の生産職場に関する予備的な聞き取り調査である。北海道芦別市・赤平市において、坑内労働経験者への聞き取り調査を実施した。三井芦別炭鉱における生産組織・職種分類や、住友赤平炭砿の欠口採炭の現場レイアウトの把握に関して進展があった。 第三に、急傾斜採炭との比較対象となる緩傾斜採炭の生産職場に関する調査である。北海道釧路市において、元採炭員への聞き取り調査と、太平洋炭砿資料室での資料調査を実施した。報告者がこれまで主たる研究対象としてきた太平洋炭砿の生産職場のディティールに関して、情報を補うことができた。また、太平洋炭砿同様の緩傾斜採炭をおこなっていた池島炭鉱の関係者の聞き取り調査も実施し、太平洋炭砿の生産職場の特殊性・普遍性に関する知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時には、1年目は三井芦別炭鉱と住友赤平炭砿の技術史・労務管理史の整理を目標としていた。社史・組合史などの刊行された文献資料について収集が完了したが、一次資料の収集については難航している。本課題において三井芦別炭鉱と住友赤平炭砿の比較対象としており、報告者がこれまで研究対象としてきた太平洋炭砿については、技術史・労務管理史を詳細に整理済みであるが、それと同水準で技術史・労務管理史を記述できるほどの資料の蓄積には至っていない。この点については今後の課題であり、2年目以降も他のアーカイブズに赴くなどして資料収集に努めたい。 関係者の聞き取り調査については、計画通り、予備的調査として実施でき、今後の資料調査・聞き取り調査に向けた基礎的知識を得ることができた。また、申請時には3年目に実施予定であった太平洋炭砿の生産職場に関する追加調査に関しては、先んじて着手でき、聞き取り調査・資料収集の両面でかなりの進展があった。 以上のとおり、急傾斜採炭の生産職場に関する資料収集については難航しているが、その他の聞き取り調査については計画通りであり、比較対象となる緩傾斜採炭の生産職場に関する調査については先んじて着手できたため、本課題は全体としておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時には、2年目は、三井芦別炭鉱と住友赤平炭砿の関係者を中心とした聞き取り調査を本格的に実施し、生産職場のレイアウトや労働態様などに関する証言を収集しつつ、その整理と記述を進める、という計画であった。この計画と現在までの進捗を踏まえ、2024年度は次の3点に取り組む。 第一に、急傾斜採炭の生産職場に関する資料収集を実施する。前述のとおり、技術史・労務管理史を記述するうえでの資料収集が難航しているため、2024年度は住友赤平炭砿を中心に据えて関連資料の収集を実施する。具体的には、赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設と赤平市炭鉱歴史資料館での資料調査を計画している。また、軌道に乗っている太平洋炭砿の調査についても継続する。 第二に、急傾斜採炭の生産職場に関する聞き取り調査である。前述の通り、2023年度に予備的調査を実施することができた。それを踏まえて質問項目を精査し、急傾斜採炭の経験者の聞き取り調査を進め、生産職場のレイアウトや作業工程、労働態様などに関する整理・記述を進める。 第三に、2点目と関連して、一部の聞き取り調査については、経験者とともにかつての採炭現場を再現した模型を製作しながら、作業工程や現場経験についての証言を得る機会としたい。聞き取り調査の協力者のなかには、炭鉱勤務時代の技能をいかしてDIYを得意とする者も含まれる。口述のみでは説明・理解しづらい生産職場のありようについて、模型製作を通じて詳細に記録・記述することを企図している。ただし、これはあくまで実験的な試みであり、現時点では協力者との今後の協議や作業空間の確保などの実践上の課題が存在する。2024年度中に実現せずとも、次年度には実現できるよう準備を進めたい。
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