Project/Area Number |
23K12612
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
宮脇 かおり 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (10806186)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | ぬいぐるみ / コミュニケーション / モノ |
Outline of Research at the Start |
本研究はコミュニケーション研究における「コミュニケーションは常に人間同士の関係性の中で生起する」という前提を脱構築し、コミュニケーションを物の観点から再定義する。人とぬいぐるみ間のコミュニケーションを事例として検証する。ぬいぐるみは布と綿でできた物ではあるが、ぬいぐるみがそこに存在するからこそ紡ぎ出されることばや感情がある。こうしたぬいぐるみの持つ特性は、コミュニケーションは人間同士で行うという前提を捉え直すヒントとなり得る。また本研究はぬいぐるみ愛好家が表現する感覚についても考察を行い、主観性、触覚、矛盾といった要素を抽出し、既存のメディア論に欠如しているものを見出すことを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
コミュニケーション研究では、コミュニケーションを行う主体(=人間)がまず存在し、その人間が他者(=他の人間)と関わるという前提の元に様々な研究が行われてきた。本研究は「コミュニケーションは常に人間同士の関係性の中で生起する」という前提を脱構築し、コミュニケーションを再定義することを目指す。その為には「一見、人とコミュニケーションが成立しているモノ」の事例を取り上げるのが望ましい。そこで、ぬいぐるみと会話をするという人間は一定数存在することから、ぬいぐるみを人とモノのコミュニケーション事例として検証する。 2023年度は、日本で広く公開されているぬいぐるみ愛好家の語りを精査した。日本で出版されたぬいぐるみに関する書籍、ぬいぐるみ関連サービスウェブサイト(例:ぬいぐるみ病院、ぬいぐるみトラベル)に紹介されている、ぬいぐるみ愛好家とぬいぐるみの語りからモノとコミュニケーションの実像を探った。 さらに理論的な枠組みを構築するため、モノと人との関係に関する先行研究を哲学、文化人類学、民俗学、記号学など学術分野を横断しながら収集、分析した。日本コミュニケーション学会第52回年次大会にて行った研究発表では、新しい唯物論やアクターネットワーク理論を参照しながら、物質に刻印された時間の痕跡や死の兆候といった新たな軸をコミュニケーション研究に導入する可能性を、ぬいぐるみ病院での様々なサービスと関連づけて提示した。また前年度から進めていた、雑誌『ユリイカ』でのぬいぐるみ特集をコミュニケーションの観点から分析した論文を記号学研究1号に発表した。 加えて、モノと人との関わりにおいてぬいぐるみと親和性が高い人形やおもちゃの博物館に足を運び、知見を得た。また、講演会、ぬいぐるみ保育園、ぬいぐるみカフェといったぬいぐるみ関連事業に携わる方々と交流し、今後の調査の足掛かりを形成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は学会発表を行い、参加者から有用なコメントを得た。医療コミュニケーション研究者から示唆をいただき、特に子どもを対象とした医療施設でのぬいぐるみの活躍を調べる機会を得た。また非言語コミュニケーション研究者からの助言により、人とモノとの関係性を非言語コミュニケーションの視点からも考えることができた。査読付きの学術誌に論文を発表することもできた。ぬいぐるみ愛好家らとのネットワーク構築を進めることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、モノと人は客体と主体という二元論に留まっていても実態が掴めないということが明らかになった。特に民俗学や文化人類学によるモノ研究は、モノに宿る魂といったこれまで非科学的とされてきた概念に近づく知見を与えてくれた。今後は引き続きモノ研究との親和性が高い理論を中心に読み進めていく。脳科学や心理学などの科学分野からも知見を得ていく。 モノとコミュニケーションを説明しうる理論的枠組を構築しながら、今後はぬいぐるみ愛好家を対象としたインタビュー調査を行う。これまで公にされることが少なかった声を収集、分析し、現代社会におけるモノとコミュニケーションの一例として提示していく。
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