Project/Area Number |
23K12654
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08020:Social welfare-related
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
森島 遼 川村学園女子大学, 文学部, 講師 (30911771)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | COVID-19 / 思春期 / メンタルヘルス / 大規模調査 / 社会的決定要因 |
Outline of Research at the Start |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生以後、思春期のメンタルヘルス不調(=精神的不健康)は長期的に増大し続けている。その背景として、精神的健康の社会的決定要因(Social Determinants of Mental Health, SDMH)による不均衡増大が関与している可能性がある。本研究では一般の中学校・高等学校と連携して思春期の生徒を対象とした毎年継続の大規模調査から、SDMHの経時的変化を検証する。これにより、COVID-19流行下における思春期のSDMHに関するエビデンスを得て、教育・社会政策や学校保健活動への提言につなげる。
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Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生以後、思春期のメンタルヘルス不調(=精神的不健康)は長期的に増大し続けている。その背景として、精神的健康の社会的決定要因(Social Determinants of Mental Health, SDMH)による不均衡増大が関与している可能性がある。本研究では思春期を対象とした調査からSDMHの経時的変化を検証する。特に、一般の数十の中学校・高等学校と連携して思春期の生徒を対象とした毎年継続の大規模疫学調査(School Adolescent Behaviour and Care study, S-ABC)を実施する。調査協力を得づらい思春期を対象に多忙な学校現場と連携して行う調査は、国際的に貴重な知見を提供し得る。本研究により、COVID-19流行下の思春期の支援体制構築に示唆が得られ、教育・社会政策や学校保健活動への提言につながるという創造性を有する。また、研究構想段階から学校現場と協働し続けてきたため、現場にとって有用性の高いエビデンス創造が期待できる。さらに、社会活動として学校現場への調査結果をフィードバックし、東京大学医学部附属病院精神神経科スタッフと協力して、中学生・高校生向けの出前授業(こころの健康授業)や学校現場での授業教材活用に関する研修会も実施してきた。啓発活動を目的としたウェブサイト(サポティーン:https://supporteen.jp/)も開設し、調査結果を公表している。パンデミック発生から3年間分のデータを用いて分析を行い、研究成果を査読付きの国際学術雑誌にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
S-ABCは、無記名式調査票により実施し、2023年度には参加申出のあった6624名のうち、6016名の中学生・高校生から回答を得た(有効回答率90.8%)。調査実施はクラス単位で行われ、教員からも参加クラスの背景情報を聴取する目的で教員用調査票への回答を求めた。アウトリーチ活動として、調査結果は各校へのフィードバックを行うとともに、教員研修会やホームページ等で結果を公表した。2020年~2022年の有効回答データが18,501件あるため、2023年度データと連結することで24,517件の回答データが得られており、調査進捗は計画通りである。 また、パンデミック発生から3年間のメンタルヘルスやSDMHの経時的変化を検証した。この結果、COVID-19流行下において、メンタルヘルスの問題が長期的に維持・悪化していることや、困っているにもかかわらず助けを求められていない思春期の子ども達が増加していることが示唆された。またこの長期的傾向には社会・人口統計学的要因(発達段階、ジェンダー、出身国、家族構成)における不均衡がみられ、より集中的な支援を必要とする層の存在を明らかにした。さらに、中学生はパンデミック初期における影響が大きいこと、パンデミックの最もストレスの高い時期には家族構成にかかわらず支援が必要なことなど、時期特異的な結果も観察された。これらの結果は、国際学術雑誌Journal of Adolescent Healthで2023年9月にアクセプトされた。研究成果を迅速に公開できたことから、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、2024年度のS-ABCの実施準備をすすめており、2025年度も調査実施の計画を進めている。これらを含めた6年間分の調査データから、COVID-19流行下で思春期の精神的不健康にSDMHによる不均衡が生じているか、SDMHによる不均衡が経時的に増大しているか(=時間とSDMHの交互作用があるか)、という2点の検証を行っていく。さらに、厚生労働省および文部科学省が所管する21世紀出生児縦断調査(平成13年出生ならびに平成22年出生)のデータ申請利用を行い、研究知見を補完する予定である。この出生コホートに含まれる調査参加者は、思春期前期(平成22年出生)ならびに思春期後期(平成13年出生)にCOVID-19を体験しており、SDMHによる不均衡の経時的影響を発達段階別に検討可能である。本邦においては2023年にCOVID-19が5類感染症へ移行したことにより、社会活動の制限が緩和され、経済活動も活性化してきていると考えられる。しかし、自然災害の被災地における研究では、発災から数年後にメンタルヘルスが悪化する層の存在も示唆されている(e.g., Morishima, 2019)。これらの研究の推進によってCOVID-19の影響を長期的にうける層を明らかにしていくことで、思春期の支援体制構築における重要な示唆が得られると考えられる。
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