Project/Area Number |
23K12681
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08030:Family and consumer sciences, and culture and living-related
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
嘉瀬井 恵子 福井大学, 地域創生推進本部, 特命講師 (40793047)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 新生活運動 / 結婚簡素化運動 / 祭礼自粛運動 / 冗費 / 農村生活 / 生活改善普及事業 / 冠婚葬祭の簡素化 / 地域文化 |
Outline of Research at the Start |
戦前戦後、政府とその意向を受けた自治体による冠婚葬祭の簡素化や改善要請の強化に対しては、物心両面で困窮していた住民でさえも「抗う」という独自の反応を見せながら、伝統の祭りや、しきたり通りの婚儀を継承し続けてきた。その結果、伝統の祭りや婚礼習俗は、地域文化として定着し、今や観光振興や地域づくりの重要な資源となっている。そこで本研究では、そのような住民の「抗い」の行為にはどのようなプラグマティズムが内包され、いかに地域文化を形成するに至ったのかを分析する。対象事例として、昭和期に要請された「福井県の結婚簡素化運動」「岐阜県の高山祭における祭礼自粛運動」を取り上げ、新たな生活改善論を提示する。
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Outline of Annual Research Achievements |
戦前戦後期、農村改革と考える農民の育成を目指して、農林省は日本各地で生活に関する種々の改善普及事業を推進した。そのような展開において、政府やその意向を受けた団体の生活改善の合理化に対する前提が、地域住民の当時の行為と一律であったのかを通史的に解明することが本年度の研究目的である。そこで、戦後の新生活運動の分析では、新生活運動協会と生活改善実行グループの全国発表大会議事録、広報誌、地域新聞等を中心に分析した。生活改善運動の中でも冠婚葬祭の改善に着眼し、福井県の結婚簡素化運動と、岐阜県高山祭における祭礼簡素化運動を対象とした。 福井県の結婚簡素化運動の調査では、運動の一環として県が結婚憲章を制定した1948年と、県連合婦人会が1945年に冠婚葬祭改善要項を制定以降の展開を主に対象とした。当時を知る地域住民に対する聞き取り調査からは、明治後期から続く婚礼日に饅頭を撒く婚礼文化が深刻な課題となっていることがわかった。広報誌に掲載された記事の分析からは、婚礼費用に対する見栄や冗費との見方が多々見受けられた。一方、自宅で饅頭を撒く風習の改善策として、自治体は結婚式を料亭(当時は魚屋)や、公民館で行うことを推奨した。だが、当時の多くの住民は、料亭結婚式や公民館結婚式に切り替えたものの、結局、饅頭撒きは自粛せずに自宅で撒いたと証言し、自治体による自粛要請には抗いの態度を見せていたことが分かった。 高山祭は昭和初期以降、祭りに際する悪習の問題が深刻化した。1940年代、悪習一掃を理由に、婦人会が中心となって春の山王祭と秋の八幡祭を統一する祭礼簡素化運動が展開した。祭りの費用が冗費との見方も強まり、1952年、高山市、社会教育委員会、文化協会、婦人会、青年団による招待客の全面的な廃止協議が展開したが、このような展開の中においても住民らは、屋台組費用の負担、技術維持を克服しようとしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自治体の広報誌などを通じた資料調査は順調であるが、研究開始時、高齢者を対象とした聞き取り調査である本研究では、特に、コロナ(体調不良)を理由に、調査の時期を見送らざるを得ない事態が数件、発生したため。
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Strategy for Future Research Activity |
自治体による自粛や簡素化要請に対する、地域住民の態度(抗いの行為)の解明のため、引き続き、生活改善諸活動に当時、かかわった(「暮らし」ていた)人たちからの聞き書き作業行う。また、改善や簡素化運動に対する抗いの行為が、こんにちの国の重要有形民俗文化財や、重要無形民俗文化財の指定、それらの指定に伴う観光化に繋がっているとの具体的な道筋を明らかにする。
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