Project/Area Number |
23K12701
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08030:Family and consumer sciences, and culture and living-related
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Research Institution | Osaka Seikei College |
Principal Investigator |
坂下 理穂 大阪成蹊短期大学, 生活デザイン学科, 特別専任講師 (10964538)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 高齢者 / 歩行支援 / 下衣設計 / スパッツ / 靴下 / 冷却ベスト / 被服材料学 / 被服衛生学 |
Outline of Research at the Start |
日本人の不健康期間は、男女ともに10年前後と報告されており、健康寿命の延伸こそが現代社会の喫緊の重要課題となっている。歩行は生活の基本動作の一つであるが、最も早期から低下をきたすといわれている。 本研究では、高齢者の歩行アシストを目指して、テーピング機能を付与した下衣設計(スパッツやタイツなど)を目的として、衣服圧・歩行動態の観点から研究を行うとともに、人体に密着して着用することから温熱的快適性、および“ずり・すべり”などの素材の摩擦特性の観点からもアプローチする計画である。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、高齢者の歩行を支援する衣服設計について、下記の観点から研究を進めた。 A.試作スパッツの素材の力学特性からのアプローチ:スパッツを構成する素材の物性として引張試験を行い、スパッツに適切な生地およびテープ布を検討した。 B.着用実験による歩行安定性、圧的快適性からのアプローチ:歩行安定性については、歩行をアシストすると考えられる様々なテーピング方法を検討した。その結果に基づいて、膝丈スパッツを試作し、自由歩行およびトレッドミルを用いて坂道を想定した強制歩行下での歩行動態および筋電図測定により歩行アシスト効果を検証した。その結果、ストライド長の割に筋負荷が小さくなる、両脚支持期が短く円滑な脚の運びが可能になるなどの歩容改善効果がみられた。また、同年齢であっても運動・活動習慣の有無により歩容が大きく異なったことから、歩行アシスト型のスパッツを高齢者に提供し、日常の運動を促すことの重要性も指摘された。 C.温熱的快適性からのアプローチ:高齢者の歩行をアシストする上において、靴下の特性を検討することは非常に重要である。そこで、靴下の温熱的特性および靴を着用した歩行を伴う着用実験を行い、靴下の素材・編構造がはき心地を左右する靴下内温湿度に及ぼす影響を検討した。一方、高齢者の歩行時の熱中症予防として、蒸発(潜熱)放熱を利用した冷却ベストを試作して、そのクーリング効果を検証した。冷却ベストのクーリング効果に及ぼす影響と日射を想定した冷却帽子の提案により、暑熱環境下のような顕熱移動が伴わない環境下においても円滑な体熱放散を行うことができることを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況については、以下の理由により「計画以上に進展している」と判断される。 A.試作スパッツの素材の力学特性からのアプローチ:スパッツを構成する素材の物性として、引張試験を行い、スパッツに適切な生地およびテープ布の検討を行った。 B.着用実験による歩行安定性、圧的快適性からのアプローチ:高齢者の歩容と筋電図との関係を明らかにし、歩行をアシストする具体的なスパッツ設計のための指針を導出した。本研究については、現在、論文を執筆中である。圧的観点からの検討では、医療従事者用X線防護衣が非常に重い(コート型では約6kgにも及ぶ)ことから、身体拘束性の観点から追加研究を行った。共同開発により開発された新規防護衣と、既存型防護衣を用いて、素材の力学的特性が可撓性に及ぼす影響と、肩周辺にかかる接触圧強度およびその分布を明らかにした(学会発表2件)。 C.温熱的快適性からのアプローチ:靴下の着用は、歩行時の圧衝撃から足を保護する上において必須である。温熱的に快適な靴下の設計のために、はじめに足部の皮膚性状として皮表角層水分量および経表皮水分蒸散量を明らかにした(査読無:論文1編)。また、靴を着用し、歩行を行った時の靴下内温湿度の変化挙動から、温熱的に快適な靴下素材および編構造を明らかにし、さらには「蒸れ」に起因する靴下の消臭性や抗菌性をもつ素材についても明らかにした(査読有:論文2編、学会発表1件)。さらに、歩行時の高齢者の熱中症予防として、潜熱移動に着目した冷却ベストを試作・開発を行い、日射を想定して冷却帽子をも試作し、体熱放散に及ぼす効果についてその有効性を明らかにした(査読有:論文1編)。 以上、様々な観点から高齢者の歩行を支援する衣服設計に向けた基礎的研究と応用研究について着実計画を実行している。なお、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、筋負荷軽減と歩容動態の観点から、歩行を支援するスパッツの具体的な設計指針を得ることを目的として、ハーフ(膝丈)スパッツを用いてテーピング方法を検討した。今後、さらに解析を進めるとともに、論文執筆の準備段階にある。これを学術論文に投稿すべく解析と執筆を急いでいく。 一方、ハーフスパッツを用いたテーピング効果は、フルレングスのスパッツに比べて、歩行アシスト効果がやや限定的であることも明らかとなってきた。そこで、今後の研究としては、ハーフスパッツとフルレングススパッツが人体生理に及ぼす影響について検討する計画である。市場のテーピングスパッツのほとんどがフルレングスである。これは、膝関節の屈曲と伸展がテーピングテープの張力と回復力に起因して筋負荷軽減に繋がっているところが大きいためである。しかし、フルレングススパッツを着用しての歩行が代謝の増大と疲労に繋がると仮定すると二律背反であると考えられる。 そこで今後の研究においては、ハーフスパッツとフルレングススパッツが歩行時の発汗量、心拍数、衣服内温湿度に及ぼす影響から、スパッツ丈と温熱生理との関係を明らかにする。スパッツを着用した際の衣服圧を、エアパック式接触圧センサーを用いて臀部、腹部、大腿部前面、大腿部後面等で測定する。それらの結果から、接触圧による拘束性と、発汗による滑り(あるいは滑りにくさ)と歩行動態との関係を検討し、ハーフスパッツの特徴を明らかにしていく計画である。 なお、これらの研究には、素材の引張り特性や熱・水分移動特性の把握が重要であることから基礎研究として測定を実施する計画である。 またこれまでの研究において、温熱的不快感が作業効率(歩行効率)の低下をきたすことを見出しており、これらの結果についても論文としてまとめる計画である。
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