Project/Area Number |
23K13029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤本 和也 東京工業大学, 理学院, 助教 (40838059)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2027: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ランダム行列 / 相関伝播 / 非平衡揺らぎ / 部分系の揺らぎ / 厳密解 / 界面粗さ成長 / 量子回路 / 動的スケーリング |
Outline of Research at the Start |
近年、非平衡統計力学で発展してきた古典界面成長の知見を用いて、量子ダイナミクスの普遍的な性質を明らかにする研究が理論・実験の両面で注目を浴びている。本研究課題では、このような界面成長の視点で量子情報分野のランダム量子回路の手法を用いて量子ダイナミクスの普遍的性質を理論的に解明することが目的である。これまでの多くの先行研究は1次元量子系を扱っていたが、本研究課題ではランダム量子回路を用いることで、1次元系だけではなく2次元系を含めた量子ダイナミクスの普遍的な性質を明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は1次元格子上の相互作用しないフェルミオン系における相関伝播と非平衡揺らぎの成長に関する理論研究を行った。
相関伝播の研究では、交代状態を初期状態としたダイナミクスに焦点を絞り、異なるサイト間の相関が空間的に伝播するときに生じる相関界面近傍の揺らぎの性質を解析的に明らかにした。この研究を通して、伝播する相関界面近傍の揺らぎを捉えるために、積算相関演算子なる新しい演算子を導入した。これにより、伝播する相関界面近傍の揺らぎを定量的に評価することができるようになった。その結果、1次元格子上の相互作用しないフェルミオン系では、その揺らぎの全てのモーメントが、ランダム行列のガウス型直交アンサンブルとガウス型シンプレティックアンサンブルの固有値が従う普遍的な多点相関関数の組み合わせで特徴付けられることを明らかにした。本研究成果はアメリカ物理学会誌のPhysical Review Letters誌からEditors' Suggestionとして出版された[論文の詳細はPhys. Rev. Lett. 132, 087101 (2024)を参照]。
非平衡揺らぎの成長の研究では、部分系に含まれる粒子数の揺らぎを理論的に研究した。このような揺らぎの性質を理解することは、量子多体系の流体的性質を理解する上で重要である。本研究では、この粒子数揺らぎの分散に関する厳密解を導出して、漸近解析を行うことでその揺らぎの分散が時間とともに線形に成長することを解析的に示した。さらに、2023年にこの分散の観測が冷却原子実験で行われており、その実験データと本研究で得た解析解との比較を行った。その結果、我々の解析解が実験観測された揺らぎの分散の成長を定量的に説明できることを明らかにした。本研究成果は論文にまとめて、現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請書で記載した計画に基づいて、1次元格子上の相互作用しないフェルミオン系における部分系の粒子数揺らぎを解析的に研究を行い、その揺らぎの成長に関する厳密解を得ることに成功した。さらに、本研究課題に取り組んでいる期間中に我々の理論研究を検証できうる冷却原子実験のプレプリントがarXivにアップロードされた。この実験結果と我々の理論を比較したところ、我々の厳密解が実験観測された粒子数揺らぎの成長を定量的に説明できるという予想外の結果を得ることができた。これにより当初の計画以上に初年度の研究を進めることができた。
さらに、上記の研究で用いた相互作用しないフェルミオン系における相関伝播の性質を偶然調べたところ、ランダム行列(ガウス型直交アンサンブルとガウス型シンプレティックアンサンブル)の固有値に関する普遍的な固有値相関関数で相互作用しないフェルミオン系の相関伝播の揺らぎが特徴づけられることを解析的に示すことができた。この研究成果は当初の研究計画にはない興味深い理論的発見であり、Physical Review Letters誌からEditors' Suggestionという形で出版することができた。
以上の研究成果より、当初の初年度の研究計画を遂行しただけでなく、その過程で予想外の理論的な発見が得られたため、本年度は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の申請時の初年度計画は予定通り遂行することができたので、次年度では(A)1次元ランダム量子回路と(B)2次元自由フェルミオン系の研究を行う。
研究(A)では、相互作用しないフェルミオン系では捉えられない量子ダイナミクスの普遍的な側面を1次元系のランダム量子回路を部分系の物理量の揺らぎの成長の視点で解析・数値計算の両面から探索する。解析的な研究では、これまで提案されてきた可解なランダム量子回路を念頭に研究を進める予定である。数値的な研究では、解析的に扱うことが困難なランダム量子回路に焦点を絞り、その性質を調べる。
研究(B)では、2次元格子上の相互作用しないフェルミオン系の非平衡ダイナミクスを厳密解の手法で調べて、高次元量子系における非平衡ダイナミクスの理解を深めることを目指す。一般に、高次元系には1次元系には存在しない質的に異なる振る舞いを示す。例えば、古典界面成長においてラフ二ング転移のような高次元系に特有の非平衡ダイナミクスが現れることが知られている。研究(B)では、我々が初年度に得た1次元格子上の相互作用しないフェルミオン系の厳密解と比較しながら、2次元系特有の非平衡ダイナミクスを解明する。この研究をうまく進めることができれば、2次元系のランダム量子回路のダイナミクスを用いて、相互作用しないフェルミオン系とは質的に異なる性質を探索する予定である。
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