量子臨界性における多極子揺らぎとスピン揺らぎの研究
Project/Area Number |
23K13051
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷口 貴紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70849950)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 強相関電子系 / 量子臨界現象 / Yb化合物 / Pr化合物 / 重い電子系 / 量子ビーム / 核磁気共鳴 |
Outline of Research at the Start |
異方的超伝導やスピン液体など、量子揺らぎによる特異な物性を誘起する量子臨界性は、新奇物性探索の観点から固体物理学の最も重要な研究テーマである。特に、スピン以外の自由度による量子臨界性の発見は、臨界現象に関する学理の発展において重要であり、その有力候補として多極子が脚光を浴びている。 本研究では、単結晶Yb1-4-1系とPr3-4-13系を対象として、複数の微視的手法を横断的に活用することにより、多極子揺らぎとスピン揺らぎの関係性、および多極子揺らぎによる量子臨界の性質を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度の本研究では、最近我々が純良な試料合成に成功したYbCu4Niに対して、マクロ測定とミクロ測定を包括的に用いた研究を展開した。具体的には、粉末X線回折 (XRD)、粉末中性子回折 (NPD)、電気抵抗、そしてミュオンスピン回転緩和 (muSR)測定である。 YbCu4Niは先行研究で巨大な電子比熱係数が報告された。しかし、我々のNPD実験から結晶構造に本質的にdisorderが入る系であることが明らかになったことから、巨大な電子比熱係数の起源は(i) Kondo disorderと(ii)量子臨界性の2つの可能性がある。本研究で実施された実験は、muSR測定を用いて、(ii)の可能性が妥当であることを決定した。詳細を下記に述べる。 Kondo disorderは、近藤温度が分布することで、特定の物性において量子臨界性と似た物性を示す現象である。そのため、量子臨界性との違いを決定する手段は限られている。本研究では、muSR測定を実施し、内部磁場の分布の温度依存性を調べた。Kondo disorderを示す場合、磁化率が増大すると内部磁場の分布も増大する。今回はTF-muSRスペクトルをフーリエ変換し、スペクトルの線幅から内部磁場の分布を調べた。その結果、磁化率が増大すると反対に内部磁場の分布が減少することが分かった。これは、Kondo disorderとは反する結果である。さらに、LF-muSR測定を行い、低温においてミュオンスピン緩和率が増大傾向にあることがわかった。特に、最低温度においても大きなスピン揺らぎが存在していることが明らかになった。これらの結果から、我々はYbCu4Niの巨大な電子比熱係数の起源は、量子臨界性であると結論づけた。本研究結果は、Physical Review B誌で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度はYbCu4Niに加えて、Pr3Ru4Sn13も量子臨界物質であることを決定し、論文にて報告することができたので、計画以上の進捗であると判断した。下記に詳細を述べる。 これまで、我々はYbCu4Niに対して、複数の実験プローブを用いて量子臨界物質であることを決定した。YbCu4Niの詳細は研究概要の実績で述べているので、ここではPr3Ru4Sn13について述べる。Pr3-4-13系は、Pr3Co4Sn13とPr3Rh4Sn13の合成報告があり、物性については基底状態がシングレットである。そのため、負の圧力を印加できれば、量子臨界点に近づくと我々は考えた。そこで、新物質Pr3Ru4Sn13の合成に挑戦し、単結晶を得ることができた。まずは粉末X線回折、単結晶X線回折、そして粉末中性子回折実験を行い、結晶構造を決定した。格子定数はPr3-4-13系で最も大きいことが分かった。次に、電気抵抗・比熱・磁化測定を行い、磁性はPrが担っていると決定した。そしてmuSR測定を行い、0.3 Kまでスピン揺らぎが残っていることが明らかになった。これらの結果から、Pr3Ru4Sn13はPr3-4-13系で量子臨界点に最も近い物質であると我々は結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、高品質な試料合成および多角的なミクロプローブによる実験を行うことができた。加えて、YbCu4Niは単結晶合成にも成功した。単結晶を用いると磁化の異方性が明らかになるために、結晶場準位の決定に貢献できる。また、Pr3Ru4Sn13も同様な状態にある。そのため、来年度はこれらの試料を用いて中性子非弾性散乱実験を行い、結晶場準位を決定する。 測定に必要なマシンタイムはすでに確保している。そのため、来年度に実験を実施して、すでに得ている磁化と比熱の結果と比較しながら、結晶場準位を決定する。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)