Project/Area Number |
23K13062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蒋 男 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (90909342)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | らせん磁性体 / スピン流 / ファンデルワールス層状物質 / 層状物質 |
Outline of Research at the Start |
磁性体中ではその磁気秩序を反映した内部自由度が存在する。その内部自由度が外場とどのように結合し、制御できるかは非常に重要な課題である。磁気モーメントがらせん状に秩序化するらせん磁性体は、“位相”と“ヘリシティ”という磁場だけでは制御できない内部自由度を持っている。伝導電子のスピン角運動量の流れであるスピン流は、単なる磁場とは異なる外場として利用でき、磁性体の内部自由度とどのように結合するかは大変興味深い。またスピン流は微小磁性体の磁化を感度良く検出・制御でき、近年注目されている層状磁性体と実験的に相性が良い。そこで本研究では、層状らせん磁性体の内部自由度のスピン流による制御・検出を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
物質の内部自由度と外場がどのように結合するかは物性物理学の基本問題の一つである。磁性体中ではその磁気秩序を反映した内部自由度が存在する。その内部自由度が外場とどのように結合し、制御できるかは非常に重要な課題である。磁気モーメントがらせん状に秩序化するらせん磁性体は、“位相”と“ヘリシティ”という磁場だけでは制御できない内部自由度を持っている。そこで申請者は、伝導電子のスピン角運動量の流れであるスピン流に着目した。スピン流は単なる磁場とは異なる外場として利用でき、磁性体の内部自由度とどのように結合するかは大変興味深い。またスピン流は微小磁性体の磁化を感度良く検出・制御でき、近年注目されている層状磁性体と実験的に相性が良い。そこで本研究では、層状らせん磁性体の内部自由度のスピン流による制御・検出を目指す。具体的には、らせん軸に垂直な面で劈開するCrNb3S6と、らせん軸に平行に劈開するCeSiIを非局所スピンバルブ素子に組み込み、内部自由度のスピン流による制御・検出を目指す。 今年度は主にCrNb3S6を非局所スピンバルブ素子に組み込み、スピン物性測定を行った。特に、高密度パルススピン流を注入できるよう、高周波用導波路も組み合わせたデバイスを作製し、位相の検出に成功した。CeSiIに関しては、非常に大気不安定な物質であり、その取扱いに苦戦中である。大気不安定な物質の取り扱いに習熟するために、CeSiIよりかは安定であるが、大気不安定なRTe3(R=希土類元素)における磁気輸送特性を調べた。その結果、特にCeTe3において電荷密度波と磁性が結合していることを示唆する結果が得られ、論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CrNb3S6に関しては、そのスピン拡散長、スピンホール効果の温度依存性は調べ終わっている。現在論文にまとめているところである。位相検出に関しては、実験的には成功しているが、その解釈が不透明なところがあり、現在理論家と議論中であり、理論計算をしていただいているところである。また、位相制御に関しては、非局所スピンバルブ素子に、高密度パルススピン流を注入できるよう、高周波用導波路も組み合わせたデバイスを作製した。そのデバイスにおいて、らせんの位相の観測に成功した。高周波デバイスは、静電気でデバイスが壊れやすいという事情もあり、位相の制御にはまだ成功していない。 CeSiIのヘリシティ制御に関しては、CeSiIが非常に大気不安定な物質であり、その取扱いに苦戦中である。大気安定なhBNでサンドイッチ構造を作れば大気中に出しても問題ないことまではわかった。その上でさらに電極を付けることに苦戦している。インジウムシールした自作ボックスの中でも、最低数時間安定に存在することもわかった。これらを組み合わせれば、近い将来測定可能になると考えている。 また、大気不安定な物質の取り扱いに習熟するために、CeSiIよりかは安定であるが、大気不安定なRTe3(R=希土類元素)における磁気輸送特性を調べた。その結果、特にCeTe3において電荷密度波と磁性が結合していることを示唆する結果が得られ、論文にまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
CrNb3S6の位相制御に関しては、現状の自作高周波インサートでは静電気対策が不十分であり、デバイスが壊れてしまう問題が頻発しているため、そのような事故が少ない高周波プローバーを用いた測定を考えている。高周波プローバーは現在の研究室にはなく、共同研究である。まずはその測定系・デバイス構造でパルスが印加できるかを確かめたのち、CrNb3S6を含むデバイスで位相観測・制御を行う。 CeSiIに関しては、これまでの大気保護技術を組み合わせる。hBNでサンドイッチしたのち、ArミリングでhBNを削り、削ったところだけにAu電極を付ける。さらにそのデバイスを、自作インジウムシールボックスに入れて、配線をする。また、自作インジウムシールボックスが付くようなインサートを自作し、それに取り付けて電気抵抗測定を行う。このようにして初めて測定が可能になると考えている。また、上記にように取り扱いが難しい物質であるため、CeSiIを非局所スピンバルブ素子に組み込むことは、難しい。そこでまずは電流・磁場を用いてらせん磁性体のヘリシティを制御することを試みる。さらに、同様の大気保護技術を用い、CeSiIと同じく非常に大気不安定な物質であるGdGaIの輸送測定も行う。この物質も最近らせん磁気構造であることが示唆されている新物質である。この物質でもヘリシティの制御を試みる。
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