Project/Area Number |
23K13063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
湯井 悟志 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (70965102)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 量子流体力学 / 量子乱流 / 超流動ヘリウム4 / 量子渦 / 二流体モデル / 渦糸モデル / 2流体モデル |
Outline of Research at the Start |
2流体モデルは超流動を理解するための標準的な現象論である。しかし、量子渦を介して2流体が結合した量子乱流状態では、どのように超流体と常流体が連立して運動するかはほとんど未解明なままである。本課題では、超流動ヘリウムにおいてそのような結合した2流体モデルの物理学を理論的・数値的に開拓する。特に重要な問題として、2流体の結合が引き起こすと予想されている超流体の2段階乱流遷移の解明にとり組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は,主に準古典乱流の研究を行った.超流動ヘリウムの量子乱流には,古典乱流とのアナロジーをもつ形態がある.その形態は準古典乱流とよばれ,量子渦が局所的に向きをそろえたバンドル構造を形成していると考えられている.有限温度の準古典乱流の理解には量子乱流と常流体成分の乱流の連立ダイナミクスを考える必要があるが,そのような2流体乱流状態は十分には研究されていない.そこで,我々は量子乱流と常流体乱流の連立ダイナミクスを数値計算し,得られた量子乱流の性質を調べた.ここで,計算領域は全方向周期境界としており,常流体成分を乱流にするために外力を加えた.結果として,常流体成分の渦管の位置に対応して,量子渦のバンドルが形成されることがわかった.さらに,超流体成分のエネルギー・スペクトルや,量子乱流の減衰のべき則を解析することで,今回得られた量子乱流の性質が準古典乱流のものと整合することを確認した.また,熱対向流を印加するとバンドルが解けるという傾向も発見した.得られた結果は,国際会議QFS2023や日本物理学会で発表した. 他にも,当初の計画からは少し外れるが,量子渦のKelvin波も研究した.量子渦芯の波であるKelvin波は,量子乱流の素過程として重要なダイナミクスである.近年,ナノスケールの振動物体の実験により量子渦のリアルタイム検出が行われた.同様の実験によりKelvin波の外的な励起も期待されている.我々は,渦糸モデルの数値計算により微小な振動物体によるKelvin波の励起を研究し,共鳴振動数において大きくKelvin波が励起されることを確認した.これにより,もし実験が行われたらKelvin波の励起が期待できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに研究が進んでいる.計画では,1年目に2流体同時乱流を周期境界条件で計算するとしていたが,今年度は実際にそのような計算が実行できた.その計算により,2流体同時乱流において常流体乱流が量子乱流に与える影響を調べ,興味深い結果が得られた.これらの成果は,今後の研究推進において重要な足掛かりとなるだろう.さらに,当初の計画になかったが,上記に加えてKelvin波の研究も並行して行ない,興味深い結果が得られている.以上より,現在までの進捗状況はおおむね順調であると言えるだろう.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,準古典乱流の研究を継続して行い,さらにデータを集めて論文として成果を発表する.Kelvin波の研究も,実験グループと協力して研究をさらに推進していく.そして,本題である量子乱流のT1-T2遷移の解明に取り掛かる.T1-T2遷移は,常流体成分の乱流遷移により生じると信じられている.常流体を乱流遷移させるために,数値計算に管壁として固体境界条件を適用する.管壁からのせん断応力により常流体が層流から乱流に遷移するはずなので,そのときの量子乱流の変化を解析する.これによりT1-T2遷移のメカニズムが明らかになれば,量子流体力学における一里塚的な成果となるだろう.
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