Project/Area Number |
23K13068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
厳 正輝 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (90937327)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
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Keywords | 磁気スキルミオン / 回転対称性の破れ / X線・中性子散乱 / スピン格子結合 / 遍歴磁性体 / 一軸応力 / スピン-格子結合 |
Outline of Research at the Start |
スピンの微小な渦状構造体である磁気スキルミオンは、バルク物質中では通常三角格子や正方格子といった高対称な形状で発現する。ところが近年、正方格子遍歴磁性体EuAl4において4回回転対称性が自発的に破れた菱形格子スキルミオンの発現が確認された。本研究では、EuAl4における菱形格子スキルミオンの安定性を多角的に検証し、その発現機構を微視的に解明する。特に、一軸応力下での磁化・抵抗・磁歪測定や中性子散乱実験を重点的に行い、スピン・電荷・格子といった様々な自由度の相関の理解を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
正方格子遍歴磁性体 EuAl4 における4回回転対称性が破れた菱形スキルミオン発現の微視的起源を理解するために、本物質のスピン-格子結合に着目した実験をいくつか進めている。まず本研究課題採択に先立ち、申請内容の一つであるEuAl4単結晶の低温・磁場下での共鳴X線散乱実験を、Photon FactoryのBL-3Aにて行った。主反射の(400)ピークの分裂と磁気反射を同一の温度・磁場掃引下で観測することにより、直方晶歪みと磁気変調ベクトルの向きの対応関係を全ての磁気相において明らかにすることに成功した。 本結果を踏まえ、令和5年度はEuAl4の一軸応力印加下における各磁気相の安定性を調べた。応力印加にはトップローディング型・可変一軸応力スティックを用い、EuAl4単結晶に対して[010]方向の縦応力印加下での測定を行った。まずは、ゼロ磁場下で発現する4つの磁気相にフォーカスし、電気抵抗測定により磁気転移温度の変化がないかを調べた。その結果、高々数十MPa程度の応力で磁気変調ベクトルのスイッチが生じる磁気転移温度が1~2 K上昇する振る舞いが観測された。この結果を踏まえ、JRR-3のPONTA(5G)にて一軸応力印加下での中性子散乱実験を行ったところ、応力の増加に伴って最低温相における磁気変調周期の系統的な変化や中間温度相の消失といった顕著な磁気状態の変化を観測することに成功した。以上の実験を以て、ゼロ磁場下での実験は完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度までに予定していた共鳴X線散乱実験による直方晶歪みと磁気変調ベクトルの対応関係の決定や、ゼロ磁場下での一軸応力実験による磁気変調ベクトルの変化の観測は完了し、応力印加による磁気相制御が可能であることを示すことができた。この結果は、本物質におけるスピン-格子結合パラメータの見積もりを含めた磁気モデルの構築の上で、有用な足掛かりとなる。一方で、スキルミオンの回転対称性の破れの微視的起源に対する核心的な答えを得るにはまだ至っておらず、磁場中での一軸応力実験や有効理論模型の構築に基づくより深い洞察は今後の課題である。以上の理由を踏まえて、現在までの進捗状況を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、磁気スキルミオン相が現れるc軸方向の印加磁場中での一軸応力実験を計画している。まず、磁化測定によって温度-磁場相図の応力変化を詳細に調べる。この結果に基づいて、ある典型的な強さの応力印加下で中性子散乱実験を行い、磁場誘起相の磁気変調ベクトルの変化を調べる。一軸応力下での磁化測定を行うプローブ・設備はすでに整っており、中性子散乱実験を行うためのビームタイムも確保している。 並行して、菱形スキルミオン相の発現を説明可能な有効理論模型の構築を理論家と共同で進める。従来の理論研究で採用されていた波数空間模型では、スピン格子結合の導入による磁気変調ベクトルの向きの変化を記述することができないので、本研究では実空間ベースの模型を用いて、磁気変調ベクトルのスイッチなどの現象の再現を目指す。
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