Project/Area Number |
23K13093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
陳 詩遠 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 特任助教 (60953651)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 超伝導量子ビット / ダークマター / ダークフォトン / アクシオン |
Outline of Research at the Start |
GeVスケールの重いダークマター (DM) へ厳しい制限がつく中、軽いDMの直接探索の重要性は増している。極低温環境での共振空洞を用いたハロスコープ実験は、アクシオンやダークフォトンといった電磁相互をするDMに対しmeV以下で最強の感度を誇る一方、共振器の変調が難しく探索できる質量範囲が狭い。周波数可変型の超伝導量子ビットは、共振器との強結合を実現することで、ラムシフトを通じた共振器変調、もしくはDMによる直接励起を使った新しい探索を可能とする。2次元共振器でそのような深強結合は報告されているが、DM探索に使用するような3次元共振器では強結合の上限はまだ未知であり、本研究はその追求を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
実験では昨年に引き続き東大武田先端知、OIST、EPFLなどのナノファブリケーション施設にて超伝導量子ビットの製作・改良研究を行った。Alでパッドとジョセフソン接合を同時に蒸着で製作する従来の方法から、パッドをNbやTiNなどの超伝導薄膜をエッチングしてあらかじめ作る2段階製法にプロセスを切り替えたことにより、緩和時間の大幅で悪化させることなく量子ビット結合を大きくできることを確認した。現在10us程度の量子ビット緩和時間で、3D共振器に入れた状態で確認された中で最も大きい結合は50MHzほどであり、初年度の目標を概ね達成することができた。またSQUID型の量子ビットを使って、Lambシフトを通じた3D共振器の変調も実証した。8.7GHzの共振周波数を持つ共振器に対してQ値を悪化させずに10MHzほどの変調ができることを確認した。そのセットアップでダークフォトンダークマターの最初の物理探索データの取得を行い、予想感度を学会で報告した。現在取得したデータの解析が進行中であり、近々物理結果を公開する予定である。
また昨年度提案論文を発表した、量子ビット直接励起を用いたダークフォトンダークマター探索実験の準備実験も進めた。量子ビットの読み出しの較正・読み出し精度およびその温度依存性の測定など行い、最初の物理探索データの取得が間近に迫っている。さらにこの実験方法をエンタングルした多ビットに拡張したスキームも理論研究者との共同研究を通じて考案し、新たな提案論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験の方は概ね想定通りのペースで進行している。結果もさることながら、昨年に比べて製作されるサンプルのクオリティが明らかに改善されており、さらに製作歩留まりの上昇や技術の習熟による実験効率の向上、有限要素法による電磁界シミュレーションの基本的な整備の完了もあり、2年目に結果をテンポ良く出すための準備を充分に行うことができた。
理論の方では共同研究者と昨年度に考案した実験スキームを深化させた結果を新たに出すことができた。これは2bitゲート操作でエンタングルさせた量子ビット間の干渉を利用したもので、ビット数が増えた際にダークマター由来の信号頻度を格段に向上させることができるため、昨今の超伝導量子コンピューターの飛躍的な性能向上も相まって注目されている。また実際の超伝導量子コンピューターにおけるゲート操作と読み出しだけでダークマターが探索できる (ダークマター探索が量子回路の設計問題に帰着する) 可能性も示唆しており今後につながるものとなっている。これは当初の計画以上の出来である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験はまず昨年度に取得したデータを解析して探索結果をまとめる。また引き続き1量子ビットでの共振器との結合を最大にできるデザインを有限要素法電磁界シミュレーションで研究し、製作に反映させる。100MHzくらいまで達成したら多ビットへ拡張を始め、数100MHzの結合を目指す。また量子ビットの緩和時間を現状の10us程度から100usほどまで伸ばし、共振器の量子ビット経由の緩和を抑制する。これによりLambシフトで大きく変調させた際の共振器のQ値悪化を改善する。50MHz程度の共振器変調を目指し、そのセットアップで物理探索データを取得し結果をまとめる。また3Tの磁場の中で運用することでアクシオンへの探索も目指す。 理論では磁場なしでアクシオンへの転換するスキームの追求を引き続き行う。
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