Project/Area Number |
23K13094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沼澤 宙朗 東京大学, 物性研究所, 助教 (10912652)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 量子エンタングルメント / 量子重力 / 対称性 / 非平衡 / トポロジー / 量子情報 / ダイナミクス |
Outline of Research at the Start |
一般相対論と量子力学は20世紀における物理学の大きな成果であるが、その融合である量子重力は未完である。本研究では量子エンタングルメントを用いて量子相における量子状態の構造を解明し、量子重力を量子相の立場から研究する。それを通じて量子力学と一般相対論がどのように統合されていくかを研究し、時空が量子系から創発するメカニズムを明らかにする。また、量子重力における対称性が満たすべき条件を量子エンタングルメントの観点から研究する。それによって物性物理における創発ゲージ理論との類似性を明らかにすることで、量子重力における対称性を理解する。また量子ダイナミクスにおける相構造を解明し量子重力の問題に応用する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は時間反転や空間反転対称性について研究を行った。 量子重力では全ての対称性は近似的大域対称性であるか、もしくはゲージ対称性になっていることが期待される。一方、CPT対称性は全ての場の量子論においては厳密に保たれており、また反ユニタリー対称性であることからゲージ対称性として扱うことも難しく、量子重力とどう整合性が取れているのかが謎であった。そこで我々は、時間反転を含む対称性のゲージ化の定式化を行い、その性質を調べた。まず統計力学と整合性の取れた量子重力の理論では、CPT対称性はワームホールの生成によって自然にゲージ化されていることを発見した。さらに、閉じた宇宙では量子力学は実数的な構造だけを持っており、通常の量子力学の複素構造は創発するものであるということもわかった。これらの成果によりCPT対称性がゲージ対称性として扱われることによって量子重力と整合性が取れたこと、また量子力学と重力の密接な関係の理解にもつながったという意味で重要な成果になったと考える。 対称性の量子アノマリー及びそのトポロジカル相との関係は非常に重要である。ところが、これらは主にハミルトニアンで記述される系の絶対零度の基底状態で議論されており、特に非平衡領域や一般の量子チャンネルによる状態変化のもとでは、量子アノマリーとトポロジカル相のどちらも理解されていない。そこで、我々は両方の文脈で重要な役割を持つSachdev-Ye-Kitaev模型を用いてフェルミオン系の量子マスター方程式の対称性による分類を行った。また散逸を含む場合の量子カオスにアノマリーが反映されることも示した。これらは物性の文脈では開放系の量子カオスや非平衡トポロジカル相の理解の進展に役立ち、また量子重力でもブラックホール生成と蒸発において対称性から課される制限を与えるなど両者の文脈で重要な貢献をしたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
量子重力におけるCPT対称性の扱いと解釈は長らく謎であったが、本研究によって一つの解決法を与えることができた。当初の研究計画の一つでもあり、プレプリントまで書くことができたので計画以上の進展と言える。 また、非平衡における量子アノマリーとトポロジカル相を分類することは量子コンピュータの進展に伴って重要なテーマになっており近年流行中のテーマである。その流行の前に時間反転という重要な対称性に基づいた非平衡開放系の量子アノマリーの分類理論を作ることができたのは大きな進展と言える。量子コンピュータで量子ブラックホールとそのダイナミクスを調べる上での基礎的な理論基盤にもなっており、本テーマの中でも重要な研究という位置づけである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は古典重力の描像が良い領域を主に調べてきた。 次年度はより弱結合側である弦理論的な効果が影響する領域を調べる予定である。そのためには、非臨界M理論や、その次元簡約であるtype 0A理論などの非臨界理論を調べるのが良いと考えている。それらに行列模型などからアプローチするためには、フェルミ流体などの従来の場の量子論を超えた理論の対称性や量子相の基礎的研究も同時に行う。それらの非平衡領域での相分類も行うことで、弦理論における相の理解を行う。 非臨界弦理論は臨界弦理論の超対称性によって保護されたセクター(BPSセクター)とも密接に関係する。そこで、非臨界弦理論で得られた知見を臨界弦理論のBPSセクターへと翻訳することで、それらのトポロジーなどの量子相としての解釈を追究する。
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