Project/Area Number |
23K13140
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 優里 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (90816191)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2027: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | 銀河進化 / 高光度赤外線銀河 / 星間化学 / 銀河形成 / 電波天文学 |
Outline of Research at the Start |
大型望遠鏡の高感度化・広帯域化により、星間物質に含まれる様々な分子から放たれるスペクトル線が検出できるようになった。銀河の進化において力学的・化学的に変化の著しい段階にある高光度赤外線銀河に対し、分子スペクトル線データの解析により星間物質の化学組成と温度や密度、紫外線の輻射といった物理状態を解き明かす。近傍の高光度赤外線銀河の理解から、分子スペクトル線を銀河の進化のプローブとして体系づけ、空間分解観測が困難な遠方の銀河への応用の可能性を探る。
|
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、近傍の高光度赤外線銀河および超高光度赤外線銀河(U/LIRG)、計23天体に対する、HCNとHCO+の2種類の分子輝線の観測データの解析結果をまとめ、査読論文として投稿した。このデータは、大型干渉計ALMAを用いてU/LIRGの高感度・高空間分解観測を行う国際的なプロジェクトで取得されたものである。U/LIRGでは中心核での爆発的星形成や超大質量ブラックホールの成長を引き金として、銀河規模でガスが押し出されるアウトフローが生じる場合がある。空間・速度を分解した解析を行うことで、HCN/HCO+輝線強度比が他の領域よりもアウトフロー中で数倍高まること、その原因は衝撃波による加熱にあることを見出した。衝撃波およびそれに伴って生じた高温環境は、HCNやHCO+のみならず他の分子種の存在比にも影響を及ぼすことが予期され、現在は他の分子種の輝線を含むデータの解析に取り組んでいる。また、上述のプロジェクトの他に、ALMAのアーカイブデータとして公開されているものでU/LIRGに対するHCNやHCO+輝線の観測を含むものを選び、解析・比較も進めている。
分子輝線の観測データは、星形成の母体となる分子雲が含まれているガスの総質量や、その中でまさに星形成が起こる特に密度の高い領域の割合を調べる上でも重要な手がかりを与えると期待されている。複数の分子種について、輝線強度と星形成率との関係を、分子の空間的な分布や輻射輸送の特徴を考慮したモデルで定量的に分析した。このモデルでは、先行研究で示されていたCOやHCNといった明るい分子輝線の強度と星形成率の関係を再現した上で、近年の高感度観測でデータが徐々に増えつつあるN2H+やCNといったやや暗い分子輝線についても星形成率との関係を予測できた。現在、この結果を論文にまとめる作業に取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に書いたように、研究計画で予定していた、ALMAによる近傍U/LIRGの分子輝線観測データの解析を進めることができている。アーカイブデータからの有用なデータの掘り起こしについても、特に興味深い結果が期待されるデータを選んで進めている。アーカイブデータは莫大な量があるため、網羅的に調べ尽くしたとまでは言えないものの、最重要なものは押さえられたと考えている。
また、最近出版された論文や、研究会での関連研究者との交流に刺激を受け、分子輝線の強度と星形成率の関係を調べるモデルを作ることもできた。このようなモデルの研究は具体的な形としては当初の計画には含まれていなかったものの、いざ取り組み始めると、先行研究の観測結果とよく整合し、今後いっそう増えるであろう様々な分子輝線の観測データについても豊かな示唆を与えることが見込まれたため本腰を入れて取り組むこととした。このモデルは近傍銀河に限らず、銀河系内分子雲や遠方銀河にも応用できるモデルであり、その意味では研究計画の最終年度に予定していた、特徴的な分子を活用した銀河進化診断手法の開拓にも繋がる成果だと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の研究計画に沿って、次年度はALMAによる近傍U/LIRGの分子輝線観測データの解析を続け、さらにその先の物理・化学状態の探査に繋げていく予定である。これまでの取り組みから、アーカイブデータの掘り起こしについては、とにかく全データを網羅するよりは、特に重要な結果が期待できるものを選んで重点的に解析するほうが効率的かつ効果的であるように感じており、この方針で進めていきたいと考えている。また、最近報告されている研究結果から、CO分子の回転振動励起輝線などにも有用性を感じるようになった。最新の研究の動向を踏まえ、新規観測についても意欲的に計画を考えていきたい。
分子輝線強度と星形成率との関係についてのモデルは、これまでの成果を論文にまとめて投稿する予定である。さらに発展として、銀河系内分子雲のマッピング観測データとの比較によるモデルパラメータのより精密な調整や、より多数の近傍銀河の観測データとの整合性の調査も視野に入れ、研究を進めたいと考えている。
|