Project/Area Number |
23K13147
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
谷本 敦 鹿児島大学, 理工学研究科, 特任助教 (00897415)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 超巨大質量ブラックホール / 活動銀河核アウトフロー / 輻射流体計算 / 輻射輸送計算 / 活動銀河核 / X線精密分光観測 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、活動銀河核(Active Galactic Nucleus: AGN)アウトフローの駆動機構の解明である。この目的を達成するため、まず私はAGNアウトフロー駆動機構の最有力候補である、輻射駆動噴水モデルからのX線精密スペクトルモデルを計算する。そして私は、作成したX線精密スペクトルモデルをX線天文衛星XRISMによるX線精密分光観測結果に適用し、AGNアウトフローの駆動機構が、輻射駆動噴水モデルで説明可能なのかどうかを検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、国立天文台のスーパーコンピュータであるアテルイIIを利用して、輻射駆動噴水モデルからのX線精密スペクトル計算に取り組みました。AGNアウトフローの駆動機構の最有力候補の1つは、輻射駆動噴水モデルです。この輻射駆動噴水モデルでは、ダストを含むガスが、降着円盤からの非等方輻射圧やX線加熱により、不規則なAGNアウトフローを駆動するモデルです。実際、輻射駆動噴水モデルは、近傍AGNの電波観測結果や赤外線観測結果の再現に成功しています。しかしながら、AGNアウトフローの駆動領域において、電波法者源の分子ガスや赤外線放射源のダストは、降着円盤からの強いX線放射により破壊されてしまいます。 AGNアウトフロー駆動機構の理解には、輻射駆動噴水モデルとX線観測結果の比較が必要不可欠です。例えば、観測された吸収線のエネルギーと静止系における吸収線のエネルギーのずれから、AGNアウトフローの速度分布を調べることが可能です。そこで私は、輻射駆動噴水モデルからのX線精密スペクトル計算に取り組みました。まず私は、輻射流体計算コードCANS+を利用して、2次元輻射流体計算を行いました。得られた密度分布・速度分布に基づいて、モンテカルロX線輻射輸送計算コードMONACOを利用して、X線精密スペクトル計算を行いました。この結果、輻射駆動噴水モデルに基づいたX線スペクトルの場合、約300 km/s程度のアウトフローによる青方偏移したHe-like FeやH-like Fによる吸収線が観測される可能性があることがわかりました。得られた結果をまとめ、私は国際会議や国内会議で口頭発表を行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると考えています。以下に主な理由を2つ記します。 まず1つ目の理由として、2023年度には、国立天文台のスーパーコンピュータアテルイIIを利用し、多くの輻射流体計算やモンテカルロX線輻射輸送計算を実行出来たためです。研究実績の概要に記載した通り、私は輻射流体計算やモンテカルロX線輻射輸送計算を行い、輻射駆動噴水モデルからのX線スペクトルモデルの作成に成功しました。また得られた結果から、輻射駆動噴水モデルからのX線スペクトルモデルの場合、約300 km/s程度のアウトフローによる青方偏移したHe-like FeやH-like Fによる吸収線が観測される可能性を明らかにしました。 次に2つ目の理由として、本研究課題で必要不可欠なX線天文衛星X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission (XRISM)が2023年09月に無事に打ち上げられたためです。XRISMは世界初のマイクロカロリメータ検出器(Resolve)を搭載しています。このResolveは、従来のCCD検出器と比較して、約30倍のエネルギー分解能を有しており、AGNアウトフローの駆動機構を理解する上で非常に重要です。XRISMは、2024年08月まで、その性能検証期間として、近傍宇宙の様々な天体の観測が予定されています。 以上の通り、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると考えられます。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に引き続き、輻射駆動噴水モデルからのX線精密スペクトル計算とX線天文衛星XRISMによるX線精密分光観測結果との比較に取り組む予定です。 輻射駆動噴水モデルからのX線精密スペクトル計算では、様々なEddington ratioに対して、X線精密スペクトル計算を行う予定です。輻射駆動噴水モデルにおいてAGNアウトフローは、主に中心天体からの輻射圧により駆動されています。すなわち、その重力と輻射圧が釣り合う光度であるEddington luminosityに対する比である、Eddington ratioは、非常に重要なパラメータです。2023年度の計算では、1種類のEddington ratioのみに対して計算を行っていたので、2024年度の計算では、4種類程度のEddington ratioに対してX線精密スペクトル計算を行い、X線スペクトルのEddington ratio依存性を明らかにします。 X線天文衛星XRISMによるX線精密分光観測結果との比較では、理論計算から得られたX線スペクトルと性能検証期間に得られたX線精密分光観測結果の比較を行う予定です。XRISMは、研究計画に記載した近傍宇宙のセイファート1型銀河NGC 3783の観測が予定されています。NGC 3783の観測結果が届き次第、理論計算結果と比較し、AGNアウトフローの駆動機構として、輻射駆動噴水モデルで説明出来るのかどうかを検証します。また、2024年09月以降、XRISMはJAXA等に提出された観測提案を元に、観測天体を決定する予定なので、私はNGC 3783以外のセイファート1型銀河の観測提案をJAXAに提出する予定です。
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