Project/Area Number |
23K13154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山田 智史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (90963520)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | X線天文学 / 赤外線天文学 / 超巨大ブラックホール / 活動銀河核 / 赤外線銀河 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、銀河とその中心にある巨大ブラックホール(以後、“BH”)の進化過程の全貌を解明することである。銀河とBHは単調に成長するのではなく、銀河同士の合体とそれに伴う大規模なBHへの質量降着により急激に成長する。よって、両者の進化過程を知るには、合体時に起きる物理現象を観測する必要がある。しかし、合体時の銀河はガスやダストに深く覆われ、観測することが難しい。そこで、最先端のX線衛星XRISMやTAO赤外線望遠鏡による観測を実施する。これらの観測波長は透過力が高いため、アウトフローの速度と質量を正確に測定し、合体銀河中のBH周辺の物理環境、特にBH近傍から噴出するアウトフローの構造や強度を調べる。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究の要となるX線衛星XRISMの打上げの一年となった。私は2022年4月からXRISM衛星開発チームに所属し、装置性能常時監視ツールの開発に取り組んできた。特にX線精密分光装置であるResolveでは自身が大部分を開発してきた。その活動が顕著な貢献と評され、JAXAからは感謝状、XRISMチームからはOutstanding Contribution Awardを贈呈された。 2023年9月には衛星の打上げが成功しており、XRISM衛星の観測が多くの天体で実施されている。初期観測チームとしてもデータを取得してきた。共同研究者と連携して、申請者は京都大学せいめい3.8m望遠鏡による可視光分光観測の同時モニターも遂行してきた。現在は両装置によるX線と可視光の精密分光データに基づいて、毎週の日米欧会議で論文化に向けて議論を進めている。 観測分野においては、主著論文が1編出版され、2編が受理された。1編目では、合体銀河中の星形成、活動銀河核、アウトフローの3要素を合体段階毎に明らかにするため、近傍の84天体の合体銀河に対して、X線から電波までの多波長データ解析を行った。特に初めてX線スペクトルを同時に扱えるモデルを開発することで、アウトフローのダスト成分による赤外線放射成分の抽出にも成功した。その結果、合体が進むにつれて、星形成、活動銀河核、さらにはアウトフローも発達することが示唆された。また、2本目では高階電離輝線([O IV]や[Ne V])と12um放射を用いることで、合体末期のガスやダストに深く埋もれた活動銀河核を見つける新しい手法を提唱した。3本目では、世界最大のX線のアウトフローのカタログ論文が受理された。 現在までの、装置開発と観測研究の両方での活躍が評価され、理研からは理事長感謝状、井上科学振興財団からも井上研究奨励賞が贈呈された。来年度からは東大TAO赤外線望遠鏡の稼働も始まるため、更なる成果に繋げていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は9月にXRISM衛星が打ち上がり、2024年1月5日にはファーストライトの観測をプレスリリースすることができた。衛星の性能としては、検出機の保護フィルムが外れずに検出効率が1.6倍ほど落ちているが、エネルギー分解能は当初の予定より1.4倍以上も良い。従来のCCDと比べ、6keV帯域では約30倍ものエネルギー分解能である。すでに多くの天体の初期観測データを確認しているが、いずれも驚くほどの面白い結果が得られている。XRISM衛星の初期観測データだけでも非常に多くの論文が出版できると期待され、日米欧で協力して多くの論文化に取り組んでいる。2024年8月からはCycle-1の観測期間が始まるため、4月4日には、責任者で2件、共同提案者で約10件の観測提案を行った。XRISM衛星を用いた研究は順調に進んでいる。 本年度は1編の論文を出版し、新たに2本の主著の査読論文が受理された。特に3本目のApJSの論文では、過去の20年間で発見されてきたX線でのアウトフローを全て集めて、データベースにしたものである。本カタログでは132天体の活動銀河核に対して、約600ものX線観測から、573ものアウトフローを特定し、系統的に整理している。特に、10,000km/sの速度を持つものが非常に少なく、2種類に分かれることが分かった。特にアウトフローの距離とダスト昇華半径を比較すると、速い側のアウトフローはガスで構成され、遅い側はダストを含むという違いも示唆された。 本研究計画ではTAO望遠鏡の観測も重要となるが、稼働開始が遅れており、早くても2024年11月からとなった。そのため計画に遅れは生じているが、その代わりに観測時間の確保や解析技術の習得など準備を進めている。特にX線のアウトフローカタログは、多波長データ解析の論文も準備中であり、TAO望遠鏡の観測に向けて有益になる情報も見積もっている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目的としては、XRISM衛星、TAO望遠鏡、ALMA望遠鏡を用いて、X線・赤外線・サブミリ波という3つの減光を受けにくい波長でアウトフローの多スケール構造を解明することである。解析技術や観測時間の確保に向けては取り組んできたが、XRISMとTAOの観測データはすぐに揃うわけではない。そこで、事前にどのような成果が期待されるか、あるいは、どのような課題を決着すべきか、という2点を明確にするため、自身が責任者として新しいプロジェクト (X-ray Winds In Nearby-to-distant Galaxies; X-WING)を開始した。母サンプルは、X線でアウトフローが見つかっている132天体である。これはXRISMの追観測を視野に入れており、X線や天体の基本情報を全て整理した論文はすでに受理されている(Yamada+24b, ApJS; Paper-I)。これらの天体で紫外線から電波までの多波長データ解析も行っており、さらにはX線から電波までで報告されてきた多波長アウトフローの物理量も整理している(論文執筆中; Paper-II, III)。このプロジェクトにより、現状で得られる最大限の知見を引き出し、最も迅速に本研究のサイエンスを実現するために追観測すべき天体の選定も行いやすくなる。また、将来的にはVLT/MUSEなどの可視光も含め、XRISM、TAO、VLT/MUSE、ALMAによる多波長空間分解観測を用いて、合体の有無によらないアウトフローの三次元構造と速度場の解明の実現にも取り組む。そのため、X-WINGプロジェクトの3本の論文は、TAOの観測が始まるまでに完了できるように進めている。XRISM衛星での観測提案もX-WINGカタログの天体から主に選定しており、今後のCycle-2,3に向けても共同研究者と協力して戦略を議論している。
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