Project/Area Number |
23K13206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 17050:Biogeosciences-related
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
冨松 由希 福岡大学, 理学部, 助教 (40945359)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 層状チャート / コノドント / 放散虫 / T/J境界 / ジュラ紀付加体 / 三畳紀/ジュラ紀境界 / 地球化学 / 層位・古生物 |
Outline of Research at the Start |
三畳紀末大量絶滅は地球史上で起こった5大絶滅事件の一つであり,大規模な火成活動に伴う急激な気候変動によって陸上の四肢動物群や多くの海棲生物群(アンモナイトやコノドントなど)が絶滅した.しかし三畳紀末の約30万年間はほとんど化石記録が残っておらず,実際にどのような環境変動が生物大量絶滅を導いたかについては詳しく分かっていない.本研究では,三畳紀末遠洋性堆積岩から産する「空白の30万年」を生き延びたコノドント化石試料の化学分析から,三畳紀末に起こった大規模火成活動による地球表層環境の変化(特に古海水温の変動)を明らかにし,それに伴う生物絶滅の原因を解明する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,三畳紀末遠洋性堆積岩から産する微化石について,化石層序および地球化学的検討を行う.そして三畳紀末の「空白の30万年」の期間に起こった大規模火成活動による古海洋環境の変化,それに伴う陸上と海棲生物の多様性の低下,絶滅の関連性について検討を行う. 2023年度は,三畳紀末の遠洋生堆積岩が連続的に露出する研究セクションにおいて研究を進めた.研究試料は,美濃帯(岐阜県坂祝町,各務原市)の上部三畳系から下部ジュラ系層状チャートを中心に,チャートおよび頁岩の採取を行った.化石記録に乏しい三畳紀末の「空白の30万年」において,信頼性の高い年代決定を行うために,層状チャートの年代決定に必要なコノドント・放散虫化石の抽出行い,属種の同定及び堆積年代の決定を進めた.研究セクションからは後期三畳紀後期ノーリアンからジュラ紀最前期(約2.1億から2億年前)のコノドントおよび放散虫化石を得た.さらにT/J境界付近にのみ特徴的に産出する放散虫化石(Mesosaturnalis属)を発見した.この放散虫化石は,ヨーロッパテチスやゴンドワナ大陸縁辺部のT/J境界セクションでも産出が報告されており,他地域とのT/J境界の対比を行う上で重要な指標となる可能性がある. また,当時の海洋表層における基礎生産量の変動を評価し,微化石研究の結果と組み合わせて世界各地のT/J境界セクションとより高精度な年代対比を行うために有機炭素同位体比(δ13Corg)の測定を,九州大学の分析オンライン質量分析計(EA-IRMS)を用いて試みた.これまでの予察的な分析によって,三畳紀末における有機炭素同位体の負の変動と正の変動が見つかった.同様の有機炭素同位体比の変動は,日本およびヨーロッパや北米各地にて行われた先行研究の結果と類似することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究において,野外調査で岩相層序の記載と,研究セクションの堆積年代決定に必要な微化石抽出用試料の採取,有機炭素同位体比測定用試料の採取・下処理,および有機炭素同位体比分析の手法の確立を行った. 研究試料においては予定していた試料数を十分に採取することができた.また,微化石を効率的に抽出・回収するための設備の整備を整えることで研究の発展につながった.本研究を遂行する上で重要な微化石層序の確立については,研究セクションにて3つのコノドント化石帯(下位からMishikella hernsteini帯, Mishikella posthernsteini帯, Mishikella ultima帯)を設定し,6つの放散虫化石帯(下位からPraemesosaturnalis pseudokahleri帯,Haeckelicyrtium takemurai帯,Haeckelicyrtium breviora帯,Mesosaturnalis多産帯,Pantanellium tanuense帯,Bipedis horiae帯)を設定することができた. 特に,T/J境界の対比を行う上で指標となりうるMesosaturnalis属の多産する区間について設定することができた.これにより,ヨーロッパ・北米の各地や日本におけるT/J境界セクションとのコノドントおよび放散虫化石を用いた層序対比が可能となった.有機炭素同位体比分析については,予察的な段階ではあるが,同位体比の変動を本研究セクションの三畳紀末からジュラ紀最前期にかけてみつけることができた. 以上から,本研究は概ね順調に進行していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に十分な研究試料を得ることができているが,チャートから得られるコノドント化石の数は放散虫化石に比べてはるかに少なく,年代決定のための完全な個体を得るためには何度も抽出作業を繰り返す必要がある.今年度はより多くのコノドントの個体を抽出するために,コノドント抽出用の追加の試料採取を予定している. また三畳紀末からジュラ紀最前期にかけて,コノドントおよび三畳紀型放散虫群集の絶滅とジュラ紀型放散虫群集出現によって微化石群集がが大きく入れ替わるため,より詳細な微化石記録の解読にも取り組む予定である. 有機炭素同位体比測定に関しては,サンプリングの解像度を上げるため,測定試料には従来用いられていた頁岩試料ではなく,チャート試料を用いた同位体分析を進めている.フッ化水素および三フッ化ホウ素を用いてチャートを構成するSiO2を分解し,チャート中の全有機炭素量を濃縮することによって分析を行っている.今年度は昨年度の処理法および分析手法をより改善し,微化石層序の結果と有機炭素同位体比の結果を組み合わせ,世界各地のT/J境界セクションとの対比を行うことによって年代決定の精度向上を目指す. また,2023年度に加えて得られる試料について,粉末試料を作成し,蛍光X線分析装置や誘導結合プラズマ質量分析装置を用いた主要・微量元素分析を進める予定である.これにより,後期三畳紀ノーリアンからジュラ紀の最前期にかけての地球化学的情報を取得し,酸化還元環境に鋭敏な元素に着目した海洋酸化還元状態について検討を行う. 以上の研究の過程で得られた成果は,積極的に国内外の学会で発表していく.
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