Molecular reaction kinetics of the origin of life in deep-sea hydrothermal systems
Project/Area Number |
23K13211
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 17050:Biogeosciences-related
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
岡田 賢 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 研究員 (90780916)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 第一原理計算 / 電気化学還元 / 表面反応 / 熱水噴出孔 / 同位体分別 / 生命の起源 / 電気化学反応 / チオエステル / 電子顕微鏡 |
Outline of Research at the Start |
生命誕生の場として、深海熱水噴出孔は有力候補の一つである。これは、深海熱水噴出孔に含まれる硫化鉱物の表面に電位が生じていること、この電位により硫化鉱物が還元され生じた金属が有機分子合成の触媒になることが一因である。一方、実際の古環境における反応速度や生成量に関する知見が皆無なため、「場」の論争は続いている。申請者は、有機分子合成の反応速度を、分子の反応メカニズムを計算することで算出できると着想した。本研究ではモデル反応として、二酸化炭素を原料とし、還元された硫化ニッケル鉱上で触媒されるチオエステル合成を採用し、必要な反応条件が初期海洋の熱水噴出孔で満たされるかを検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
生命誕生以前の有機化学反応場と反応機構の推定は、生命の起源を探索する鍵の一つである。場の有力候補の一つである深海熱水噴出孔では、噴出孔を構成する導電性硫化鉱物の表面に生じた電位により硫化鉱物が部分的に電気還元されることで、金属化した遷移金属が出現することが知られている。しかし、具体的な活性化学種、原子構造、反応機構は明らかでない。本研究では、第一原理計算等に基づき、生命誕生以前の有機化学反応場を、熱力学を含めて推定することで、生命誕生に必要なタイムスケールの算出を目的とする。本年度はその第一段階として、電気化学還元による化学反応が知られている硫化ニッケルの一種であるヒーズルウッド鉱をモデルとして、その(111)面での硫化水素脱離による段階的な還元反応を模擬した。電子顕微鏡で最表面付近の構造変調を確認し、最表面単位格子のみの構造変調を考慮した。その結果、均質表面では硫化水素脱離は起きにくく、還元後に生じた欠陥周りで還元が進行しやすいこと、部分還元されたニッケル原子で一酸化炭素の吸着が促進されることが明らかとなり、既報の実験事実と定性的に一致する結果を得た。 また、硫化鉄をモデルとし、アンモニアの吸着挙動を計算したところ、部分還元された層間鉄原子へのアンモニア吸着が熱力学的に有利であり、吸着に伴い格子間隔が変化することを明らかにした。この結果は、電気還元によるアンモニア濃集という実験事実とも整合的である。 さらに、吸着・反応化学種である二酸化炭素等の反応経路を推定するのに用いられる同位体分別に関する理論的検討を、環境中試料との比較検討を行う上で検討する必要があると考えた。従来の同位体分別計算手法に疑念を抱き、改良手法を提案し、水と硝酸イオンをモデルケースとして計算を行った。その結果、従来より計算コストを1/10程度に抑え、同等の同位体分別を推定できる手法を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表面構造の第一原理計算において、ローカルコンピュータ上での構造生成、予備計算、計算結果からのデータ注出、解析、およびスーパーコンピュータ上での計算条件を最適化し、効率的に構造探索する手法を確立した。また、外部電位やpHに依存した反応の熱力学を推察する手法の組み込みも行った。さらに、硫化鉄系へのアンモニア吸着や、反応化学種の同位体分別計算という、当初は予定していなかったが実験結果と比較検討する上で必要となるパラメータの算出にも着手し、学会発表等の成果を上げている。よって、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では一酸化炭素の吸着と二酸化炭素還元のみを模擬しているため、今後は他の化学種、具体的には一酸化炭素への水素添加および水脱離によるメタン生成、別環境で生成されたメタンチオールの表面吸着と結合乖離反応、一酸化炭素、水素、およびメタンチオールを原料としたチオエステル合成へと順次計算を拡張していく。その前段階として、表面に水原子を配置することで水和反応を模擬し、水和条件でも同様に硫化鉱物の還元が起こり得るか、また還元に必要なエネルギーが変化するかについて検討を行う。また、実際の鉱物ではニッケル原子の一部が他の遷移金属元素に置換されていることがあり、元素置換により反応が活性化されることも推定される。そのため、最表面の単位格子に含まれる原子一個を他の第四周期遷移金属元素に置換した系を同様に計算し、どの元素がどの位置に置換された場合に反応活性が向上するかを推定する。 これらの計算と並行して、同位体分別の簡易計算法を拡張し、環境中に普遍に存在する低分子化合物を中心として、炭素、窒素、酸素同位体置換による同位体分別係数を推算する。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)