レーザアブレーション加工における衝撃波の圧力計測に基づいたインプロセス計測
Project/Area Number |
23K13235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 18020:Manufacturing and production engineering-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上野原 努 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (10868920)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | レーザ微細加工 / レーザアブレーション / 衝撃波 / インプロセス計測 / フォトニックナノジェット / 振動計測 |
Outline of Research at the Start |
本研究では,レーザアブレーション加工の際に発生する衝撃波を計測することによって,加工径や深さといった加工量をレーザ照射と同時に行うインプロセス計測手法の確立を目指す.加工分解能を向上させるためにフォトニックナノジェットという光ビームを用いる.超短パルスレーザを用いて生成したフォトニックナノジェットを材料に照射した際に発生する衝撃波の圧力が加工量に依存する性質に基づいて,衝撃波の圧力をその場で計測することで加工量の高分解能かつ高精度なインプロセス計測を実現する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,フォトニックナノジェットと呼ばれる特殊な光ビームを用いた微細加工技術の確立を目指している.フォトニックナノジェットは誘電体マイクロ球にレーザを照射することで発生し,小さいビーム径および長い焦点深度を有する.この特徴から,フォトニックナノジェットを3次元微細加工に応用する.フォトニックナノジェットを用いた加工の高精度化のために,加工量のインプロセス計測を導入する.本年度は,加工時に発生する衝撃波の伝搬特性に基づいた加工深さのインプロセス計測について実験的に検討した.アブレーション加工によって発生する衝撃波は伝搬するにつれてその圧力が減衰する.この特性を利用して,加工深さのインプロセス計測手法を提案し,その原理検証を行った.加工ツールとして用いているマイクロ球を衝撃波の圧力を計測するためのプローブとしても利用した.マイクロ球に衝撃波の圧力が及ぼされるとマイクロ球が振動する.その振動の振幅は衝撃波の圧力に依存する.加工実験において,レーザパワーを変化させることで加工深さを変化させ,その時のマイクロ球の振動を計測した.その結果,加工痕の深さが大きいときほどマイクロ球の振動の振幅は小さくなった.加工深さが大きいほどマイクロ球までの衝撃波の伝搬距離は長くなるため,マイクロ球に及ぼす圧力が小さくなったと考えられる.以上の結果から,アブレーション加工によって発生する衝撃波を加工と同時に計測することで,加工の深さをインプロセス計測することができることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来までの研究においてすでに構築していたフォトニックナノジェットを用いたレーザ加工装置に加えて,加工時に発生する衝撃波を計測する装置を導入した.マイクロ球はピペットで保持された片持はり構造をしているため,衝撃波による圧力を受けると振動する.この振動を計測するために,共焦点光学系に基づいた変位計測計を導入した.マイクロ球の変位と共焦点光学系で得られる光強度に関して,あらかじめ既知の変位量を与えた際の光強度を計測することでデータベースを構築した.このデータベースを用いることで高速な振動の計測が可能となった.レーザパワーを変化させて穴加工実験を行い,その際のマイクロ球の振動の振幅を計測した.レーザパワーが大きくなることで試料に照射される光強度が大きくなるため,加工痕はより深くなる.より深い位置で発生する衝撃波はマイクロ球までの到達距離が長くなるため,マイクロ球へ及ぼす圧力が小さくなる.これにより,加工痕が深いときほどマイクロ球の振動の振幅が小さくなることが実験的に確かめられた.実際には振幅が200 から400 nmの範囲で変化した.さらに,加工深さとマイクロ球の振動の振幅は指数関数の関係にある傾向がみられ,これは衝撃波の伝搬特性に一致する傾向である.この結果から,加工と同時に加工深さを計測するインプロセス計測の可能性を見出した. これらの内容をまとめ,国際会議LEM&P 2023で口頭発表を行い,さらにInternational Journal of Automation Technology誌に論文を投稿し,出版された.以上より,本年度の当初の目的であった衝撃波を観測する系に関しては十分な成果が得られたと評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は,より詳細な加工現象の解明に向けて,パルスレーザを1パルス照射した後の衝撃波の観測を行う.1年目に構築したマイクロ球の振動を計測する装置に加えて,衝撃波を直接観察するためのポンププローブ系を新たに導入する.ポンププローブ法では,1つの超短パルスを2つに分割して一方を加工用(ポンプ),もう一方を衝撃波観察用(プローブ)にし,遅延光路を用いて任意の時間差で照射することで,超短パルスによるレーザアブレーション加工のような超高速な物理現象であっても高い時間分解能で現象を観察することができる.これにより,フォトニックナノジェットが試料に照射されて,プラズマが発生および膨張し,やがて衝撃波が発生および伝搬する過程を詳細に観察可能である.具体的には加工用パルスの照射後,観察用のパルスの遅延時間をフェムト秒からナノ秒のオーダまで大きなレンジで制御するために,ダイナミックレンジが大きな遅延光路を構築する.また,ポンプ光とプローブ光の分離をするために,非線形光学効果を用いた波長変換を行う.この際,より小さなビーム径が得られるように,加工用のパルスを半分の波長に変換する予定である.加工パラメータを変化させた際の衝撃波の伝搬の様子とマイクロ球の振動解析を比較することで,レーザアブレーションの詳細なメカニズムを明らかにするとともに,本研究で提案するインプロセス計測の計測精度を向上させる. また,1年目で取り組んだ加工深さのインプロセス計測だけでなく,加工径や除去体積など様々なパラメータと衝撃波の関係を明らかにし,より汎用的なインプロセス計測の確立を目指す.
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)