Project/Area Number |
23K13246
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 18040:Machine elements and tribology-related
|
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
桑原 卓哉 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (10851917)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
|
Keywords | トライボケミストリー / 添加剤 / 第一原理計算 / ZDDP / 量子化学 |
Outline of Research at the Start |
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)は耐摩耗添加剤の一つであり、金属表面においてナノオーダーの膜厚の反応膜を形成することで金属材料の摩耗を防ぐ。その優れた耐摩耗性故に、ZDDPは半世紀以上にわたり自動車用エンジン油中で使用されてきた。しかし、原子・ナノスケールでのZDDPの分解及び反応膜形成のメカニズムは未だ謎に包まれている。そこで本研究では、量子化学計算手法を用いることで、液中及び金属表面におけるZDDPの化学反応素過程、そして反応膜の形成メカニズムを明らかにする。さらに、それらの温度・荷重・せん断速度依存性を解明することで、ZDDPの化学反応・反応膜の原子構造制御の実現を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
ジアルキルジチオリン酸塩(ZDDP)のせん断下での分解プロセス及び材料表面における反応膜の生成過程を明らかにするために、量子化学/分子動力学シミュレーションを実施した。初年度は、ポリアルファオレフィン(PAO)中におけるZDDPのせん断下の挙動を観察するために、Lees-Edwards境界条件を適用し一様なせん断流を生成した。温度・圧力を変数としてシミュレーションを実施し、ZDDPの化学構造変化への影響を解析した。温度300 Kでのせん断ではZDDPの化学構造変化は見られなかったのに対し、温度700 Kのせん断では化学結合の組み換えが観察された。温度に関わらずせん断下では、Zn-S結合の解離・生成が頻繁に繰り返されたが、温度の上昇によってZn-S結合がZn-O及びS-S結合に完全に置き換わった。一方、PAOの反応は確認できなかった。次に、圧縮応力を付加した際の酸化鉄表面でのZDDPの分解過程を、第一原理計算手法を用いてモデル化した。酸化鉄表面との相互作用により、ZDDP中のS原子と表面のFe原子、Zn原子と表面のO原子が結合を生成することで、ZDDPの分解が起こった。荷重が増加すると、P-S結合が解離し、ZDDP中のP原子と表面のO原子が結合を生成した。また、アルコキシ基は表面のFe原子と反応しP原子との結合が解離した。これまでアルキル基の脱離が起こると考えられてきたが、アルコキシ基が脱離し、表面のO原子と新たにP-O結合を生成することで、リン酸ネットワークが形成されるという新しいメカニズムを解明した。さらに、せん断及び高温環境下では、ZDDP分子内の化学結合の解離が促進され、P2O5の形成が確認できた。これは、トライボフィルム形成の初期過程であると考えられる。今後は、シミュレーションを続けることで、リン酸ネットワークの成長を可視化する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
購入した並列計算機を用いることで、大規模・長時間の分子動力学シミュレーションが可能になった。当初の予定通り、ジアルキルジチオリン酸塩を添加したポリアルファオレフィン中でのダイナミクス計算を実施した。温度・圧力をパラメータとして、両者を系統的に変化させながらシミュレーションを実施することで、液体中での分子の挙動及び温度・圧力の影響を明らかにした。これまで取り組まれてこなかった酸化鉄表面でのジアルキルジチオリン酸塩の分解過程及びポリリン酸塩の形成過程のモデル化により、新しい知見を獲得することに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、第一原理分子動力学法を用いたジアルキルジチオリン酸塩の分解及びポリリン酸塩の形成メカニズムの解明を目指す。温度・圧力の影響を解析するとともに、鉄表面でも同様のシミュレーションを実施し、酸素がポリリン酸塩の形成に与える影響を明らかにする。パラメータ空間の探索を通じて、ポリリン酸塩の形成に必要な条件を特定する。また、実験グループと協力し、得られた知見の実験による実証を行う。研究成果を研究期間中に論文としてまとめ、国際学術誌への掲載を目指す。
|