混相の壁乱流における変調現象とそれを活かした工学応用
Project/Area Number |
23K13253
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 19010:Fluid engineering-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本告 遊太郎 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (20906911)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 壁乱流 / 混相流 / 秩序構造 / 固体粒子 / 乱流輸送 / 乱流変調 / 直接数値シミュレーション / 乱流 / 自由界面 |
Outline of Research at the Start |
乱れた流れ、とくに、壁近傍に発達する壁乱流は工学的に重要な流れである。本研究では、固体粒子や気泡の添加による壁乱流の制御を大きな目的として、数値シミュレーションを軸とした研究を行う。添加物による乱流変調の仕組みを理解できれば、目的に応じた乱流促進や低減を達成できるが、我々は「大小さまざまな秩序だった渦」に着目して、壁乱流の変調機構を明らかにする。つまり、乱流の維持に重要な役割を果たす「秩序渦の階層」の変調機構を理解できれば、それを活かした工学応用が可能になると考えた。まずは、粒子や気泡を含む混相の壁乱流の数値シミュレーションを実施し、最終的には、得られた知見を活かした壁乱流の制御法を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、壁によって維持される乱流に対して、固体粒子が混ざった場合に起こる現象を主に調べた。具体的には、(1)質点粒子および(2)有限の大きさをもつ粒子が平行平板間乱流中に懸濁した数値シミュレーションを実行し、(1)乱流による粒子の輸送および(2)粒子による乱流変調を明らかにした。
(1)壁乱流中に非常に小さな質点粒子を分散させると、粒子は乱流により輸送され、クラスタをつくる。こうした粒子の輸送は、乱流中の大小さまざまな秩序だった渦で説明できる。壁乱流中には、壁からの高さと同程度の大きさをもつ渦が階層的に存在する。これらの渦は、その大きさに応じて、渦が旋回するのにかかる時間が異なる。一方、粒子は、(その大きさと質量密度により決まる)速度緩和時間をもつ。我々は、ある緩和時間をもつ粒子の輸送は、それと同程度の旋回時間をもつ渦により決まることを示した。より具体的には、重い粒子は、粒子と同じ「時間スケール」をもつ渦の中心から掃き出され、一方、軽い粒子は、渦の中心に集積する。
(2)粒子の大きさが、乱流中の渦の大きさに対して無視できなくなると、粒子は乱流を変調させうる。乱流変調においても「時間スケール」が重要になる。前述したように、壁乱流中には、さまざまな大きさの渦が共存する。ある高さに存在する粒子の緩和時間が、その高さと同程度の大きさをもつ渦の旋回時間よりも長くなると、粒子はその渦に追従できない。このとき、平均流にも追従できなくなる。結果として、平均流から乱流へ伝達するエネルギー伝達率が低減し、その高さの乱流エネルギーも低減する。こうした物理機構に基づいて、壁乱流の変調が起こることを、数値シミュレーション結果を用いて示した。つまり、乱流輸送および乱流変調のいずれを考える場合も、粒子と壁乱流のもつ「時間スケール」が重要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、1年目は、(1)壁乱流中の粒子の輸送および(2)粒子による壁乱流の変調現象に関する新たな知見を得ることができた。(1)の乱流輸送に関する成果は、熱流体に関する国際誌に掲載された。この論文では、とくに、壁乱流中における軽い粒子の輸送現象に焦点をあてた。したがって、この成果は、本研究課題の最終目標のひとつである、気泡による壁乱流の変調現象の理解においても重要な知見となる。
また、(2)粒子による壁乱流の変調に関する成果も、混相流に関する国際学会やワークショップにて発表済みであり、論文投稿の準備を進めている。粒子による乱流変調は、古くから研究されている重要な課題であるが、とくに、壁乱流の変調現象の理解は、乱流のもつ非一様性ゆえに、(壁から離れた乱流のモデルである)一様等方乱流に比べ遅れている。工学的な現場では、壁に囲まれて維持される混相乱流の理解が重要であり、本研究で得られた成果は、将来の工学応用に対しても重要な知見となる。
また、混相乱流の変調現象を理解する上で、単相乱流の理解をさらに深めることも重要である。今年度は、円柱状の固体壁背後にできる乱流(円柱後流)の維持機構に関する研究も進めた。この成果は流体力学の国際誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、(2)の固体粒子による壁乱流の変調現象の理解を深めるとともに、新たに、(3)自由界面を伴う壁乱流の数値シミュレーションを実施し、気泡による壁乱流の変調機構を明らかにする。
(2)得られた数値シミュレーション結果に基づいて、固体粒子による壁乱流変調の全容を明らかにする。これまでの我々の結果によれば、粒子が各高さの渦に追従できなくなると、平均流からのエネルギー伝達が低減し、乱流エネルギーが低減する。ただし、壁乱流には、高さ(バッファ層、対数層および外層)によって、乱流が維持される仕組みが質的に異なる。こうした壁乱流の維持機構の(高さに依存する)個別性に注意して、今後の研究を進める。
さらに、(3)気泡による壁乱流の変調現象に関する研究も本格的に着手する。そのために、気液二相流の数値シミュレーションを実施し、気泡が壁乱流にもたらす影響を系統的なパラメータサーベイにより明らかにする。具体的には、壁乱流中の秩序構造に基づく我々独自の解析を駆使し、気泡と乱流中の秩序構造の相互作用を明らかにする。最終的には、粒子や気泡が壁乱流をどのように変調させるかといった物理機構の包括的な理解を目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(15 results)