Project/Area Number |
23K13284
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 20020:Robotics and intelligent system-related
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
矢木 啓介 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (90802710)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | 下肢関節インピーダンス推定 / ウェアラブルデバイス / 歩行 / オンライン推定 / 関節インピーダンス / システム同定 / 動力学解析 / 運動制御 |
Outline of Research at the Start |
本研究では, 歩行フェーズに応じて調節される下肢関節の動的な柔らかさを関節インピーダンスの意味で定量評価し, 人が筋や関節といった身体の構成要素の働きと外環境との相互作用で生じる歩行のダイナミクスを制御する適応的な方策を力学的に明らかにする. 本研究で開発するインピーダンス推定システムと得られる知見を, 外環境の変化やロボットによる物理的介入が歩行ダイナミクスへ与える影響を測る基盤技術として確立する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では歩行フェーズに応じて調節される下肢関節の動的な柔らかさを関節インピーダンスの意味で定量評価する基盤技術を確立させ, 歩行時の身体の運動と環境との相互作用で生じるダイナミクスの制御方策を力学的に明らかにすることを目的としている.2023年度は下肢関節インピーダンス推定システムの開発を行い,トレッドミル歩行を題材に動作試験を実施した. 推定システムのハードウェア面として,低減速比サーボモータを膝関節部や足関節部に備えた長下肢・短下肢装具状のウェアラブルデバイスをそれぞれ製作した.ソフトウェア面としては,ウェアラブルデバイスで計測される各関節の角度データから随意運動成分を減衰させ,デバイスによる摂動トルクへの動的応答を抽出する信号処理法を考案した.検証実験では,4名の参加者を対象に,膝関節および足関節の歩行フェーズに応じたインピーダンス変化を推定した.歩行1サイクルに含まれる立脚期および遊脚期の両方に対して,単一のデバイスで一貫した下肢関節インピーダンス推定を行った事例はこれまでにほとんど報告されていない. 本研究で製作したデバイスの検証結果は計測自動制御学会のシステムインテグレーション部門講演会で発表済みである.さらに,実験で得られた足関節インピーダンスの詳細については国際会議IEEE EMBC2024での発表が決定している.また,開発したデバイスおよび信号処理法は関節インピーダンスのオンライン推定へ拡張可能であり,これに関する検討内容を2024年度の日本機械学会のロボティクス・メカトロニクス部門講演会で発表することが決定している. 2023年度の研究実施計画の完了により,次の24年度に予定されている歩行解析の準備が整ったことに加え,下肢関節インピーダンスの変化を逐次的に活用していくような,新たな技術開発につながる成果が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は,歩行時の身体の運動と環境との相互作用で生じるダイナミクスの制御方策を力学的に明らかにすることを目的とし,下肢インピーダンス推定システムの開発が計画されていた.歩行中のインピーダンス変化をとらえるという観点から,推定システムのハードウェア面で要求される仕様として,ウェアラブルであり,歩行のための随意運動を阻害せず,かつ各関節に適切な大きさの摂動トルクを加えることのできるアクチュエータを備えることが挙げられる.候補となるプロトタイプをいくつか作成して性能を確認し,これらの仕様を満たすデバイスの開発を完了した.また,ウェアラブルデバイスで計測される各関節の運動データは,随意運動によるものと摂動トルクへの動的応答が混在したものとなっている.この計測信号に対して,周波数成分の違いに着目し,より低周波帯にパワーが集中する随意運動成分をハイパスフィルタで減衰させることで,摂動トルクへの応答を抽出する処理を実装した.以上の推定システムの開発完了に加えて,検証実験を通じて歩行時の足関節のダンピング特性とスティフネス特性が異なるフェーズでピークを示していることが確認され,2024年度で予定している歩行ダイナミクスの解析に向けた足掛かりとなる結果が得られている.これらのことから, 本研究計画の進捗状況としては, おおむね順調といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに開発した下肢関節インピーダンス推定デバイスを用いて,歩行解析のためのデータ収集を行う.筋神経疾患歴の無い参加者を募り,トレッドミル歩行および床歩行の条件で実験を行う.いずれの条件においても,足首や膝といった下肢関節インピーダンスの他,下腿および大腿筋群の表面筋電信号と,モーションキャプチャによる全身の関節運動を計測する.床歩行条件では,フォースプレートを用いて床反力も計測する.計測されたデータは,歩行周期1サイクルごとに区切った場合と,3サイクルごとの場合とでそれぞれ集合平均を取る.これらの実験データの収集を,少なくとも10名以上の参加者を募って実施する. 次に,得られたデータに基づき,本研究の焦点となる歩行ダイナミクスの制御方策の解析を実施する.歩行運動を多関節リンクモデルを用いて表現するものとし,解析対象とする運動平面は矢状面とする.従来の歩行時の筋活動や関節運動のデータに基づくシナジーの解析に,本研究で下肢関節インピーダンス推移の視点を加える.関節インピーダンスは筋活動や関節運動に依存して変化するものであり,かつ歩行の動力学に直接的に影響する物理パラメータである.本研究で独自に得られる下肢関節インピーダンス情報をもとに,統計学的に指摘されてきた歩行のための各身体要素の協調構造と,実際に歩行時の身体に表れている力学特性との関係を明らかにする.さらに,歩行時の床との相互作用で各関節まわりに生じる力と運動に対して,関節インピーダンスの構成要素であるダンピングとスティフネスの特性が何らかの制御目標のもとで適応的な補償器の役割を果たしていると解釈し,その制御目標を力学的に明らかにすることに取り組む.
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