Project/Area Number |
23K13540
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 26010:Metallic material properties-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤嶺 大志 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (40804737)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 形状記憶合金 / 水素脆化 / 電子顕微鏡 / 超弾性 / Ti-Ni合金 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、Ti-Ni超弾性合金における水素誘起相の結晶学的・熱力学的性質と水素侵入量に応じた相変態挙動の変化を明らかにすることを目的としている。具体的には、水素誘起相の結晶構造同定、熱弾性マルテンサイト変態に及ぼす水素の影響の評価、水素侵入量に応じた変態点と潜熱量の変化、水素の拡散挙動と相変態挙動、および水素チャージによる変形挙動の変化と応力誘起相変態の観察を行う。これらの成果は、水素環境下で使用される超弾性合金の設計および評価に資すると考えられる。
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Outline of Annual Research Achievements |
Ti-Ni系形状記憶合金の特性や相変態におよぼす水素の影響を調査した。従来、水素が侵入したTi-Ni合金では、表面に硬化層が形成されることが多くの研究で指摘されていたが、その微細構造や相変態との関連は明確ではなかった。本研究では、水素チャージしたTi-Ni合金の断面組織について電子顕微鏡(SEM, TEM)によるex situおよびin situ観察を実施し,詳細な評価を試みた。その結果,(1)硬化層が既報の水素化物(正方晶)とは異なる直方晶構造を有すること、(2)直方晶相が母相と格子対応関係を有すること,(3)冷却時に成長する非等温変態挙動を示すこと,(4)水素を含有した母相に対して応力を負荷することによっても直方晶相が誘起されることを明らかにした.これらの特徴は新たに見出された直方晶相がマルテンサイト的性質を有することを示しており,水素誘起マルテンサイト(HIM; hydrogen-induced martensite)とも呼ぶべき現象がTi-Ni形状記憶合金で生じることが明らかとなった。また,応力誘起によってもHIMが生成することは,水素の侵入によってB2→B19'という従来のマルテンサイト変態がB2→直方晶相への変化することを示唆しており,機械的性質にも影響を及ぼしうるという可能性が見出された.これらの研究成果は、論文として専門誌Journal of Alloys and Compoundsに掲載された。これらの成果はTi-Ni形状記憶合金に及ぼす水素の影響に関して新たな視点をもたらすものであり,本成果を考慮した合金設計や水素による機械的性質の変化に関する理解進展が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の目標としていた「水素誘起相の結晶学的・熱力学的性質の解明」に関しては順調に進展し,水素誘起相の結晶構造や相変態挙動を明らかにした.成果は論文として専門誌に掲載された.次年度の目標とする「水素侵入量に応じた相変態挙動の変化の解明」についても,現在順調に進展しており水素チャージ時間と相変態挙動の変化の間には明確な関係があることが見出されている.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は「水素侵入量に応じた相変態挙動の変化の解明」に継続して取り組む.水素チャージ時間を変化させた試料の水素吸蔵量を評価するとともに相変態挙動の変化を熱分析および電子顕微鏡を用いた組織観察により明らかにする.また,SEMに搭載されたTOF-SIMS分析を通して断面組織における水素分布の評価を試み,チャージ時間の長短による水素の拡散挙動の違いを調査する.また,水素チャージ後に室温で試料を保持しておくと,組織が変化する傾向が見られており,室温での水素拡散が生じている可能性がある.このため,チャージ後の室温時効の影響についても詳細に調査する予定である.水素チャージした線材試料の力学試験も実施し,上記の相変態挙動の変化と機械的特性の関係についても評価を試みる.
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