Project/Area Number |
23K13542
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 26020:Inorganic materials and properties-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 龍平 東北大学, 材料科学高等研究所, 特任助教 (90867714)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 協奏的な運動 / 超イオン伝導 / パーシステントホモロジー |
Outline of Research at the Start |
協奏的イオン輸送は複数のイオンが同時に動く効率的な輸送であり、制御することで次世代電池の性能向上が期待される。しかし協奏的イオン輸送は周囲環境の変化が影響する複雑な多体問題で詳細な輸送機構は理解されていない。そこで本研究は数理科学的手法を利用して、協奏的イオン輸送の輸送機構を解明し、性能向上のための制御因子を明らかにすることを目的とする。具体的にはこれらのイオン伝導材料に関する分子動力学計算の結果にパーシステントホモロジー解析を適用し、イオン輸送中の複数原子が構成するリング構造変化を解析することで周囲環境の影響を含めた輸送機構を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
協奏的イオン輸送は複数のイオンが同時に動く効率的な輸送であり、制御することで次世代電池の性能向上が期待される。本研究は数理科学的手法を利用して協奏的イオン輸送の輸送機構を解明し、性能向上のための制御因子を明らかにすることを目的とする。本年度は、回転する錯体を含むLiCB9H10について解析を行った。 第一原理分子動力学計算の結果を元に機械学習ポテンシャルを構築したところ、このポテンシャルは低温相・高温相の相転移を再現し、低温相の同定に成功した。また、錯体周りのLiに関する強いサイト選択性がみられ、paddle-wheel機構による輸送が確認された。グラフ理論に基づいたLiの結合性の解析では、高温相でのみ短いLi間距離を持つLi鎖が確認されており協奏的な輸送が起こっていることを表している。これは第一原理分子動力学計算で確認されていた錯体回転に伴い、近接Liが同時に輸送される描像と一致しており錯体回転による協奏的な輸送が明らかになった。 また、本研究のような数理科学的手法が平衡状態のイオン輸送だけでなく非平衡状態のイオン輸送にも有効であることを確認した。超伝導体として知られるスーパーハイドライドは高圧下でヒドリド超イオン伝導性を示すことも近年報告されている。このスーパーハイドライド合成反応にパーシステンス図を適用したところ水素化中にH-が連鎖構造を取り、協奏的にバルク内に侵入していく反応の中間状態をAgIの場合と同様、事前情報なしに捉えられることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度毎の計画を多少前後する形になっているが、イオン伝導体重要な制御因子に関するReveiw論文の共著者としてこれらの材料に求められる物性について議論まとめ投稿している。また計画の通りLiCB9H10のような複雑な多成分系の機械学習ポテンシャルを構築し、錯体回転との協奏的輸送について解析を行った。パーシステント図の反応中の非平衡イオン輸送ダイナミクスの解析というより発展的な応用例を示し、数理科学の材料応用という観点からは大きな進捗があったためこのように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の解析によりパーシステンス図でのイオン輸送の解析は、材料内の空孔濃度に解析のしやすさが大きく依存するような結果がみられておりこの点に関する知見が必要である。現時点のAgIやLiCB9H10などの材料系の解析結果ではイオン同士の局所的な相互作用で協奏的なイオン輸送が説明されることを示唆しているが、パーシステンス図は長距離秩序の解析や相互作用の時間発展まで解析することは難しい。この課題解決のため、グラフ理論などの他の手法や機械学習・AI、渋滞学等の知識を取り入れより汎用性の高い手法の開発を検討したい。 また協奏的なイオン輸送の支配因子の解析のため、既存の原子間ポテンシャルを元にパラメータを制御した際の協奏的なイオン輸送特性の変化を検討したい。しかし、この実現可能性は既存のポテンシャルの精度に大きく依存する。また機械学習ポテンシャルや第一原理計算は人為的にパラメータを制御することはできない。既報の原子間ポテンシャルがこの検討に耐え得る精度でない場合は、輸送機構解析から得られる知見に基づいた考察にとどめ、上記の手法開発に注力する。
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