Project/Area Number |
23K13632
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 28030:Nanomaterials-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
古茂田 将人 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 特任助教 (80846361)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 酸化グラフェン / 電気化学酸化 / 粉末黒鉛 / バインダー / 圧力容器 / 3Dプリンター / 成形 / 集電体 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、電気化学的手法で粉末黒鉛から酸化グラフェンを合成する方法を検討する。粉末黒鉛は化学酸化には適しているが、電気化学的に酸化することは難しいとされてきた。本研究では、バインダーによる固形化や独自設計の圧力容器による固定などの方法で電気化学的酸化を可能とし、高収率で酸化グラフェンを合成する方法を検討する。さらに、粉末黒鉛の酸化に適した電解質を計算科学と実験を併用して探索するとともに、黒鉛の電気化学酸化のメカニズムの解明を目指し、効率化を図る。反応液の回収・再利用が可能な電気化学法で安価・入手容易な粉末黒鉛から,既存と同様の物性の酸化グラフェンを得ることを可能にし、本分野の発展を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、トップダウン法による黒鉛からの酸化グラフェンの合成方法として粉末黒鉛の成形および反応器による酸化を実施した。二次元炭素材料の普及を目指すには、安価かつ大量に合成できる製造方法の確立が必要になってくる。そのためには、黒鉛を剥離するトップダウン法、特に反応試薬を使いまわせ、安全に剥離ができる電気化学法が望ましい。しかし、電気化学法が適用できるのは大きな固形状の黒鉛のみであり、原料が高価かつ生成に多大なエネルギーを使用することになる上に入手性にも問題があった。その問題点を解決するには、安価かつ入手性が高い粉末黒鉛を原料に酸化グラフェンを合成する方法が必要になる。しかし、粉末黒鉛は電気を通しにくいうえに電解液中に沈殿しやすいなど、粉末のままでは電気化学的に剥離することが難しい。そこで、本研究では、黒鉛を電気化学的に剥離しやすくするために成形による固形化、および完全に剥離するための反応器の作製を目標とした。 まず、反応器の方は3Dプリンターによって層構造の反応器を設計し、出力した。ガラスフィルターを成形した黒鉛を圧迫しながら電解液と接触させ、ダイヤモンド電極の集電体を通して電気信号を印加することでほぼ完全に粉末黒鉛を酸化グラフェンにまで剥離することに成功した。加えて、反応時のジュール熱を冷却する機構を追加することにより、連続的に剥離させることのできる機構とした。 粉末黒鉛の成形については、成形に使用するバインダー、溶剤の検討を実施し、フッ素樹脂系バインダーと有機溶剤の組み合わせにより、従来のイソプレンゴム系バインダーよりも強固に成形でき、限定的ながら解放系でも粉末黒鉛を酸化可能な成形体の作製に成功した。 本研究の目的である、黒鉛の成形方法の確立および反応器の作製ともに順調に進んでおり、粉末黒鉛から酸化グラフェンを電気化学的に合成できる方法が確立しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は粉末黒鉛の成形方法の確立と成形した黒鉛を完全に酸化するための反応器の開発である。このうち、反応器の開発の方は事前研究の段階からある程度進んでおり、今年度の研究において構造を一部改良することで成形した黒鉛をほぼ完全に酸化グラフェンまで酸化、剥離できるものが作製できている。研究目的の“粉末黒鉛を完全に酸化グラフェンにまで剥離する”という観点から見れば目標をほぼ達成している。ただし、反応器を使用した場合、電流効率が悪いため剥離に時間がかかること、長時間の電流の印加に伴う冷却しきれないジュール熱により生成した酸化グラフェンが還元してしまうなどの欠点があることから、反応効率を向上させる必要がある。 粉末黒鉛の成形方法については、事前研究よりも進んでおり、最適な条件が判明してきている。具体的には“100度以下で除去可能な極性溶媒に溶解する熱可塑性樹脂をバインダー”を使用し、溶解させたバインダーと黒鉛を混合のうえ、ホットプレスすることで強固かつ酸化に適した成形体を作製することができることが判明した。また、この成形体は反応器の中の密閉系にとどまらず、黒鉛が残留するものの解放系でも酸化、剥離を行うことができることが判明した。これまでの粉末黒鉛の酸化は先行研究を含めて密閉系の中で酸化、剥離することしかできなかったため、解放系で実施できるようになったことは大きな進歩といえる。さらに研究を進行し、解放系で完全に酸化グラフェンを合成できればさらに大きな進歩となりえる。 これらを踏まえると、反応器の開発、粉末黒鉛の成形方法の開発ともに研究目標を達成しつつあり、双方ともにさらに改良を進めることで酸化グラフェンの合成効率を向上させる段階になりつつあることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策は反応効率の向上である。まず、反応器については解放系と比較して反応時間が長いうえにジュール熱が大量に発生するなど、反応効率がいいとは言い難い状態にある。これを改善し、解放系と同等の反応時間で酸化グラフェンの合成ができるように改良を行う。 具体的な改良予定は反応器の海洋である。溶液との接触を担うガラスフィルターの目の変更や黒鉛の成形体を固定する際の反応器のストロークの引き延ばしなどの反応器側の構造の改良に加え、高濃度の電解液の使用の検討などの反応条件面での改善も実施する予定である。 くわえて、成形体の作製方法も改良を行う予定である。現段階では、反応器の内部では成形した粉末黒鉛は完全に酸化グラフェンにまで剥離が進んでいるが時間がかかる、解放系では反応が不十分であり、XRDなどの解析で黒鉛が残留していることは判明している。これは電気伝導の経路、電解液の浸透経路のどちらかが不十分なことを示しており、それによって反応が阻害されていることを意味する。この問題点に対し、成形方法を改善することで改良を行う。具体的には黒鉛とバインダーの比率の再検討、ホットプレスする際の圧力、温度およびダイス素材の検討など、均一かつ強固な成形体を構成する要素の検証を行い、密閉系、解放系双方で効率よく剥離が可能な成形体の作製方法を開発する。 以上のように、反応容器、成形方法の双方の最適化を行い、反応効率を向上させることで粉末黒鉛を完全に酸化グラフェンまで剥離できる反応系の開発を検討する。
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