Project/Area Number |
23K13645
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 28040:Nanobioscience-related
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
原島 崇徳 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (90972860)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | DNA / ナノ粒子 / 分子モーター / 一分子 |
Outline of Research at the Start |
近年、生体分子モーターの運動機構を模倣した人工のDNA分子モーターの開発が注目されている。DNA分子モーターは塩基配列の設計により、運動に関わる結合サイトとの結合・解離を自在に制御できる点において優れている一方、歩行速度が生体分子モーターに比べ大きく劣ることが課題である。そこで本研究は、まずDNA分子モーターの反応系を最適化し、生体分子モーターに匹敵する100 nm/s以上の歩行速度を実現する。さらに、DNAモーターを部品とした新たな分子機械として、自在に方向転換する二輪駆動型DNAモーターカーを創成する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、DNAモーターの歩行過程のボトルネックを特定・改善することにより歩行速度を高速化することを目指している。本研究の最終段階では、高速化させたDNAモーターに基づく新たな分子機械として、自在に方向転換する二輪駆動型DNAモーターカーを創成する。 本年度は、サイクル時間(τ)の最小化によるDNAモーターの高速化に取り組んだ。高速高精度の一粒子トラッキングと速度論シミュレーションに基づき、DNAモーターの運動素過程を解明し、酵素結合過程が律速であることを明らかにした。酵素濃度に比例してサイクル時間(τ)は減少し、歩行速度は最大で100 nm/sまで増加した。生体分子モーターの歩行速度は10-1000 nm/sであることから、本研究により人工分子モーターの歩行速度を生体分子に匹敵する水準まで高速化できた。 一方、歩行速度が10 nm/sを超えるとRNA表面からのモーターの脱離が増加し、運動距離が減少してしまうトレードオフが発生した。酵素が高濃度の条件では律速過程が酵素結合からDNA/RNA二重鎖形成へ切り替わるため、新たな二重鎖の形成より先に、既に形成している二重鎖がすべて分解される確率が増加し、脱離が促進された。そこで、二重鎖形成の速度を仮想的に4倍に増加させたシミュレーションを行った結果、トレードオフは発生しないことが予測された。この予測に基づき、二重鎖形成速度が3.8倍大きな塩基配列を新たに設計し、歩行速度40 nm/sと運動距離3 umを両立させることに成功した。生体分子モーターのキネシンやミオシンの運動距離は1-10 umであるため、本研究は運動距離についても生体分子に匹敵する水準を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、DNAモーターのサイクル時間(τ)の最小化による歩行速度の高速化に成功した。高速高精度の一粒子トラッキングにより、DNAモーターの歩行過程のボトルネックがRNA分解酵素(RNase H)の結合であることが明らかになった。この知見に基づきRNase Hの濃度依存性を広範に変化させた実験を行った結果、RNase H濃度の増加による歩行速度の顕著な増加がみられた。既報のDNAナノ粒子モーターの歩行速度は約1 nm/sであった一方、本研究では歩行速度は最大で100 nm/sに到達した。生体分子モーターの歩行速度は10-1000 nm/sであることから、本研究により人工分子モーターの歩行速度を生体分子に匹敵する水準まで高速化できた。従って、本年度の目的は達成された。 実験に加え、本年度はDNAモーターの運動特性を予測するシミュレーションの開発にも成功した。DNA/RNA二重鎖形成、RNaseHの結合、およびRNAの分解の三段階の逐次反応を仮定した速度論シミュレーションを独自に構築し、実験におけるサイクル時間(τ)のRNase H濃度依存性を定量的に再現した。 DNAモーターの運動軌跡の詳細な解析により、歩行速度の高速化の代償として、運動距離が低下してしまうことが分かった。そこで、シミュレーションを応用し、高速かつ長距離の運動に必要な条件を探索した。結果として、DNA/RNA二重鎖形成速度の向上が有効であることを見出した。この予測に基づき、二重鎖形成速度が4倍大きなDNA配列を新たに設計した結果、実際に運動距離の低下が抑制された。歩行速度に加え、運動距離についても生体分子と同等の性能を達成した。 以上の成果から、本年度の研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の成果により運動速度の高速化は既に達成されている。2年目はさらなる高速化に向けたステップ長(Δ)の最大化を行う。次いで、本研究の最終段階であるDNAモーターカーの創製に向けた、速度調節機能の実現を目指す。 まず、DNAの配列設計によるΔの制御を行う。具体的には、ナノ粒子に修飾するDNAにスペーサー配列(G30)を導入し、次いでスペーサーと相補的なDNA(C30)を溶液中に加え、二重鎖形成させることによりΔを増加させる。一般にDNAは二重鎖形成に伴い持続長が2 nmから50 nmへ増大するため、Δの増加に伴うさらなる高速化が期待できる。 次に、配列特異的な歩行速度の加速・減速機能の賦与に取り組む。具体的には、スペーサーと二重鎖形成させるDNAをRNAに変更することにより、モーターの歩行速度を制御する。二重鎖を形成したRNAは系中のRNase Hにより随時分解される。このRNAの分解速度は一定である一方、二重鎖形成の速度はRNA濃度に依存する。従って、溶液中に加えるRNA濃度に応じて二重鎖形成および解離状態の平衡比が調節可能となり、歩行速度の制御が実現できる。この速度制御機構をDNAモーターカーの方向転換に活用する。 また、上述の実験と並行して、一年目の成果である速度論シミュレーションによる歩行速度の予測を適宜活用し、研究の効率化を図る。
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