Project/Area Number |
23K13658
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 29010:Applied physical properties-related
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
高橋 遼 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (30782023)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
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Keywords | 抵抗加熱蒸着 / 基板冷却 / スピントロニクス / 液体薄膜 |
Outline of Research at the Start |
液体金属薄膜を用いて、液相へのスピン角運動量注入の実証、スピン流注入による動的なナノレオロジー特性の実証を行う。スピントロニクスの中心概念は、スピン流と物質内の角運動量との相互変換にあり、力学的回転もその一つである。流動する液体金属の渦度(局所的回転)からスピン流を生成する実験、理論に基づき、その相反性によれば、液体にスピン角運動量を注入することで散逸的な渦度を生じさせ、注入界面における実効的な粘性の変化を与えられることが示唆される。そこで本研究では、固体で行われているスピントロニクスを、液体薄膜にまで拡張するとともに、スピン流を用いた角運動量変換による新たなナノレオロジー現象の開拓を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、液体金属薄膜を用いて液相へのスピン角運動量注入の実証、スピン流注入による動的なナノレオロジー特性の実証を目的としている。スピントロニクスの中心概念は、スピン流と物質内の角運動量との相互変換にあり、力学的回転もその一つである。流動する液体金属の局所的回転(渦度)からスピン流が生成される現象は研究代表者らにより実証されてきた。相反性によれば、液体にスピン角運動量を注入することによって、散逸的な渦度を生じさせ、注入界面における実効的な粘性の変化を与えることが可能となる。本研究ではこの相反性を基軸として、スピントロニクスを液体薄膜にまで拡張するとともに、スピン流による角運動量変換を用いたナノレオロジー現象の開拓を目指している。 本研究では以下の3つを段階的に推進する研究計画となっている。①液体スピントロニクスにおいて重要となる渦度-スピン流変換係数を、Gaの固相薄膜を用いることで決定する。②固相から液相にわたるスピン流物性をGa薄膜により解明する。これらはスピンポンピング法を用い実現する。③スピン流注入によるナノレオロジーを実証する。これはスピンポンピングとナノ表面力の同時測定により実証する。 当該年度では、この推進計画において肝要となるGa成膜装置の構築に注力し、稼働を開始するに至った。本研究の対象物質であるGaは融点が約30℃と低く、その薄膜は固相の単結晶状態では量子サイズ効果がみられ、液相ではアモルファスに近い短距離秩序構造が空間的に勾配をもちうる。この特徴的な系の作製を、本研究では抵抗加熱蒸着装置を構築し実現することとした。本装置は、基板側を冷却する機構に特長がある。稼働試験により、蒸着時の温度上昇と拮抗させながら、任意の低温で基板温度を保持するハンドリングを実現した。当該年度の装置構築は、本研究で最も重要な測定対象の作製手段を獲得したという点で重要となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
液体金属薄膜を用いて、液相へのスピン角運動量注入の実証、スピン流注入による動的なナノレオロジー特性の発現という目的達成に対し、現在までに、測定対象の作製手段という点で肝要となるGa成膜装置の構築を完了させ、その稼働を開始した。基板温度の低温保持が低融点金属であるGaの成膜において重要となるため、稼働試験によりそのハンドリングを凡そ確立した。 本研究で構築したGa成膜装置は、抵抗加熱蒸着式を採用した。蒸着源のクヌーセンセルの容量は10 cc、基板は1 inとして小型化を図った。メイン排気系には油拡散ポンプを採用し、到達真空度は10の-5乗 Pa台である。蒸着源の最大加熱温度とチャンバーの到達真空度から、Gaを蒸着できる条件を満たす設計とした。固相Gaは、様々な結晶構造の単結晶およびアモルファス構造を有するが、本成膜法では室温付近かつ気相からの成膜であるため、通常の単結晶α-Gaが成膜されると予測される。本装置の特長は基板を冷却する機構にある。液体窒素により基板を冷却しながらの蒸着が可能であり、室温付近に融点を有するGaにおいても、蒸着時の基板昇温に抗しながらの成膜を可能とした。本機構は本導入前のデモ段階ではあるが、室温付近から-175℃程度までの冷却が可能であり、液体窒素量の調整により目的温度の±10℃程度で保持するハンドリングを確立した。段差測定により成膜レートは1 nm/min程度である。しかしながら、成膜された物質には現在のところ金属性が見られず、電気伝導性が確認できていない。 本研究課題1年目では、本装置の構築、成膜の条件出しを行う計画であった。構築は完了したものの金属Gaの成膜には至っていないため、進捗は遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題2年目では、Ga成膜装置に基板冷却機構を本導入し、固相の金属Ga薄膜の成膜を早期に実現させる。基板温度、基板材料、蒸着源加熱温度を変化させながら、成膜の条件出しを実施していく。成膜条件を確定させたのち、スピン流注入源としてよく知られた、フェリ磁性体YIG(Yttrium Iron Garnet)あるいはフェライトなどを基板とした、磁性体/Ga二層膜の作製を実施する。この二層膜を用いてスピンポンピング測定を行うことで、本研究課題の1段階目にあたる渦度-スピン流変換係数の決定を行う。スピンポンピング測定により、固相Gaにおけるスピンミキシングコンダクタンス、スピン拡散長、スピンホール角などのスピン流物性値が実験的に解明されることで、間接的な見積もりが可能となる。Gaのスピン軌道相互作用の大きさから、膜厚を0.5~1 μm程度の範囲で変化させることで、これらを決定できると試算している。ここまでを2年目における到達必須課題と位置付ける。 これらの課題に続き、本研究の2段階目にあたる固相から液相にわたるスピン流物性の解明に向け、液相への融解の条件出しを実施する。固液相転移は精密圧力制御器を用い加圧により実現させる。液相に相転移した際に、基板との接触角によって球状化することを避けるため、PDMSあるいはシリカ膜で全体を覆うことを検討している。並行して本研究の3段階目にあたるスピン流注入によるナノレオロジーの実証に向け、ナノ表面力測定のセットアップの検討と構築を推進する。得られた研究成果は関連分野の学術会議などで発表していく。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)