Project/Area Number |
23K13662
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 29010:Applied physical properties-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
野間 大史 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (30846283)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
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Keywords | キラリティ / ペロブスカイト / スピン / 光電流 |
Outline of Research at the Start |
有機無機ハイブリッドペロブスカイトは円偏光の照射によってスピン光電流が発生することが知られており、スピントロニクスへの応用が期待されている。本研究では、キラル分子を含んだ「キラルペロブスカイト」のスピン光電流の発生原理を明らかにするため、スピン分裂状態や、各励起波長における電子遷移過程について詳細に評価を行う。さらに、様々な結晶構造を持つキラルペロブスカイトを作製し、新たな機構で発生するスピン光電流の探索を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
ペロブスカイトにキラル分子を挿入したキラルペロブスカイトにおいて円偏光ガルバニック効果(CPGE)が発生することが近年報告されている。CPGEは円偏光照射によって生じるスピン偏極電流であり、ラシュバ効果やドレッセルハウス効果などのスピン分裂が発生起源となっている。ラシュバ効果は外部電場によって制御できるためスピントランジスタへの応用が期待できる一方、ドレッセルハウス効果は材料の結晶構造によって異なる方向にCPGE電流を発生させるため、光スピントロニクスの多様化が期待できる。しかし先行研究ではCPGEのキラリティ依存性に焦点が当てられており、スピン分裂状態の評価は十分に行われていない。本研究課題はキラルペロブスカイトのスピントロニクス応用に向けて、CPGEの測定によりキラルペロブスカイトのスピン分裂状態を明らかにすることを目的としている。具体的には光の入射面とCPGE電流の発生方向の関係、ならびにCPGE電流の励起波長依存性や温度依存性について評価を行う。 令和5年度は、極性のキラルペロブスカイト((R)-(-)-1-cyclohexylethylamine (R-CYHEA))8Pb3I14単結晶を評価した。円偏光によって発生する光電流の方向が材料のキラリティによって反転することから、結晶構造に起因するドレッセルハウス効果によってCPGE電流が発生していることを明らかにした。また、光の入射面を検討することで、ラシュバ効果とドレッセルハウス効果の両方の寄与で発生するCPGEも観測することができた。一連の成果は、同時並行で研究を進めてきた、同材料で発生するバルク光起電力効果の成果と併せて学術雑誌に発表した。本成果はこれまで十分な議論が行われてこなかったキラルペロブスカイトの光起電力の発生原理を明確にする重要なものであり、今後のデバイス開発を促進するものとして位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の令和5年度は、無極性のキラルペロブスカイト単結晶のスピン光電流を評価することを目的として研究を行った。しかしながら、自身の実験条件では光電流測定を精度良く行える良質な無極性結晶の合成が困難であることが分かり、良質な結晶が得られた極性キラルペロブスカイト(R-CYHEA)8Pb3I14の光電流測定を行うことにした。(R-CYHEA)8Pb3I14では結晶のキラリティに依存して発生するCPGEを確認でき、一部の結果は学術雑誌で発表した。しかし一方で、電極間距離が数百マイクロメートル程度の単結晶試料では、発生する光電流はpA未満と非常に微弱であり、本研究課題の目標である波長依存性測定などの詳細な解析には不十分であることが明らかとなった。加えて、単結晶の合成や試料作製も容易ではなく時間を要する。そこで現在は、作製が比較的容易で、大きな光電流の発生が期待できる厚さ数百ナノメートル程度の薄膜試料の評価を進めている。 課題は見つかったものの、キラルペロブスカイトのスピン光電流を観測できたことから、本研究課題はおおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は令和5年度で課題となった微弱な光電流や試料作製プロセスを克服するために薄膜の評価に取り組む。はじめに、薄膜の成膜条件や電極構造を最適化し、照射する光の入射面とCPGE電流の発生方向の関係からラシュバ効果とドレッセルハウス効果を精度良く評価できるようにする。その後CPGEの励起波長依存性を測定する。測定には白色光源と分光器、光弾性変調器を用いる。測定結果を円二色性(CD)スペクトルや円偏光発光スペクトルと比較して、キラルなスピン構造がCPGEに与える効果をエネルギー的に明確化する。また、温度依存性も測定し、フォノンとスピン分裂状態の関係を調べる。これらの測定により、キラルペロブスカイトのスピン分裂状態についてスピントロニクス応用に向けた新たな知見が得られると考えている。また、余裕があれば、異なる有機分子を用いたペロブスカイトも測定して結果を比較し、挿入する有機分子とスピン分裂の関係を明らかにしたい。
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