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螺旋形発光性有機πラジカルの開発と機能追求

Research Project

Project/Area Number 23K13731
Research Category

Grant-in-Aid for Early-Career Scientists

Allocation TypeMulti-year Fund
Review Section Basic Section 33010:Structural organic chemistry and physical organic chemistry-related
Research InstitutionTokyo Metropolitan University

Principal Investigator

伊藤 正人  東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (40943999)

Project Period (FY) 2023-04-01 – 2025-03-31
Project Status Granted (Fiscal Year 2023)
Budget Amount *help
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Keywordsラジカル / 発光 / push-pull 構造 / OLED / 螺旋構造 / 発光材料 / ヘリセン
Outline of Research at the Start

本研究では,開殻系分子である有機πラジカルに着目し,不対電子の性質を活かした特徴ある光機能性分子の創製を目指す.有機πラジカルの特異な機能のうち,発光性が近年注目を集めており,中でもOLEDの発光層に用いた研究が脚光を浴びつつある.しかし,発光性ラジカルの分子設計指針は限定的であり,それゆえに発光性と同時に高度な機能性の付与は依然として困難である.そこで,有機πラジカルを安定化する因子を構造面から整理し,π拡張に基づく近赤外発光や,キラリティー導入による円偏光発光性の付与など,光機能性を追求する.得られた知見をもとに,OLED 素子の開発に挑み,有機EL材料の進展に貢献することを目標とする.

Outline of Annual Research Achievements

有機πラジカルは不対電子に由来して,可逆な酸化還元特性や長波長領域での吸収,発光を示すなどの優れた光,電子物性を示す.近年では,有機電解発光素子 (OLED) への応用が期待されている.しかし,実践的応用には本質的な不安定性が問題となる.一般に,安定性の獲得には,かさ高い置換基の導入や平面固定化,π共役系の拡張が用いられる.しかし,これらの安定化によって得られたラジカルは分子構造の対称性が高く,対称禁制遷移となるため発光効率が低く,OLED の発光層としての利用には不向きとなる.従来では,かさ高い置換基によって保護されたラジカル骨格に対し,電子ドナーを導入することで,分子内電荷移動 (ICT) 性を付与し,対称禁制を回避することで発光性を獲得している.OLED への活用を検討されたほとんどがこの分子設計であり,設計戦略が極めて限定的である.本研究では,平面固定化による安定化に着目し,架橋部位に電子供与基,電子求引基の役割を付与することで安定性と発光性を両立できるのではないかと考えた.さらに完全に架橋するのではなく部分的に平面固定を解いた構造を構築することで,立体構造に由来した機能性の獲得も狙っている.本年度は,架橋部位に酸素原子とカルボニル基を有する誘導体の合成法の確立と,標的ラジカルの光物性および安定性の評価を行った.
化合物の合成はジフェニルエーテルを出発原料とした非対称型有機πラジカルの合成法の確立に取り組んだ.6段階の合成により標的ラジカルが得られた.得られた誘導体の光学特性を測定したところ,トルエン中で吸収・発光極大波長がそれぞれ629 nmと658 nmに観測され,発光量子収率は2.9% でありICT性に由来して発光特性を獲得していることが確認された.一方,安定性は,大気下,溶液中において半減期が7.5時間と十分な安定性を有していないことも明らかとなった.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

部分平面構造を有する新規な非対称型有機πラジカルの創製を目指し,本年度は,アリール基同士の架橋部位に酸素原子とカルボニル基を,それぞれ電子ドナー,電子アクセプターとして有する誘導体の合成法の確立と,得られた標的ラジカルの光物性および安定性の評価に取り組んだ.
現在までの進捗として,ラジカルまわりのアリール基同士を2箇所架橋した骨格を提案し,片側を酸素原子で架橋し,もう一方をカルボニル基で架橋したPush-Pull型の誘導体の合成法の確立に取り組んだ.ジフェニルエーテルを出発原料とした計6段階の合成法を考案し,実際に合成を行った.その結果,この一年間で標的ラジカルの合成まで達成している.
得られた非対称πラジカル種のOLEDへの応用を見据え,基礎的な光学特性と安定性の評価を実施した.トルエン中における吸収・発光スペクトルの測定の結果,吸収・発光極大波長がそれぞれ629 nmと658 nmに明瞭な振動構造を有するスペクトルとして観測された.発光量子収率の測定の結果2.9% となり,Push-Pull構造に由来する分子内電荷移動性遷移により発光特性を獲得していることが確認された.一方で,酸素を飽和させたトルエン溶液中,暗所に静置した場合の安定性を吸収スペクトルの測定により評価したところ,時間変化に伴い,スペクトルの減衰が確認された.結果として,半減期が7.5時間と十分な安定性を有していないことも明らかとなった.
そこでこの安定性の問題を克服するため,π共役系を拡張した分子を設計し,不対電子のスピン密度をより効果的に非局在化することによる安定性の獲得を目指している.今回確立した合成法に立ち返り,合成の初期段階に導入するアリール基をベンゼンからナフタレンに変換した誘導体を次の標的化合物に設定した.現在その合成法の検討を行っており,おおむね順調に研究計画を進行している.

Strategy for Future Research Activity

現在までの結果として,トルエン中における発光量子収率が2.9%という値を示し,高い値ではないものの,本分子系の設計により発光性が獲得できることが確認されている.一方で,安定性の観点からはまだ改善の必要があるため,今年度はπ共役系の拡張によるスピン密度の非局在化を利用することで,安定性の確保を目指す.
そこでまず,合成初期に使用する反応剤のπ共役骨格を,ベンゼンからナフタレンに変更した分子系において,昨年度に確立した合成法が同様に利用できるかの検討から始める.実際にナフタレン体においても合成が進行し,標的とするラジカル種を合成することができた場合,光学特性の評価を実施する.具体的には,合成した誘導体に対し,紫外可視赤外吸収スペクトル,蛍光スペクトル,蛍光量子収率測定を行う.加えて固体薄膜状態で同様の測定を行い,高効率な発光を達成するための分子設計指針の確立を目指す.また,このラジカル種が十分な安定性を示すことが確認できれば,続くOLEDへの応用を共同研究により実施する.薄膜状態で高効率な発光を示すラジカルを用いてOLEDの発光層としての機能を評価し,素子化を行った際に生じた問題を改善するための分子骨格の造り込みを行う.
さらに,同様の手法を用いて,ナフタレンをフェナントレンに変更し,螺旋構造のような三次元的な構造を有する誘導体も合成する.これらの分子系の比較を行うことで,立体構造や電子効果が及ぼすラジカルの光物性や安定性へ与える影響についての知見を得る予定である.一連の評価を通して,ラジカルの安定化や円偏光特性等に重要な要素を明らかにし,より安定かつ優れた光学特性を示す誘導体の創出に取り組む.加えて,ラジカルの発光特性のより詳細な理解のために,励起状態の量子化学計算を行い,新たな分子骨格の設計と合成を行っていく.

Report

(1 results)
  • 2023 Research-status Report
  • Research Products

    (3 results)

All 2023

All Presentation (3 results)

  • [Presentation] 速度論的に安定化された平面形有機πラジカルの合成と物性に及ぼす元素効果2023

    • Author(s)
      京谷萌衣,福水友哉,伊藤正人,久保由治
    • Organizer
      第33回基礎有機化学討論会
    • Related Report
      2023 Research-status Report
  • [Presentation] 典型元素架橋有機πラジカルの物性に及ぼす元素と周辺置換基の影響2023

    • Author(s)
      伊藤正人,京谷萌衣,福水友哉,久保由治
    • Organizer
      第50回有機典型元素化学討論会
    • Related Report
      2023 Research-status Report
  • [Presentation] 近赤外発光性有機πラジカル種の合成と物性2023

    • Author(s)
      京谷萌衣,福水友哉,伊藤正人,久保由治
    • Organizer
      日本化学会第104春期年会 (2024)
    • Related Report
      2023 Research-status Report

URL: 

Published: 2023-04-13   Modified: 2024-12-25  

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