Project/Area Number |
23K13735
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 33020:Synthetic organic chemistry-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東田 皓介 京都大学, 理学研究科, 助教 (20845466)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 協働作用触媒 / 複核錯体 / 中員環化合物 / 異種二核金属錯体 / ラクトン合成 / 協働触媒 |
Outline of Research at the Start |
二つの反応点を持つ鎖状分子を用いた、分子内でのアルキンに対する求核付加反応による中員環化合物の新規合成法の開発を目的として、異種金属による反応点の近接化と、触媒キャビティによる鎖状基質の折りたたみ誘起を活用した異種二核金属錯体触媒の新規設計を行う。触媒設計には量子化学計算を活用することで合理的な触媒設計手法を確立し、最終的にはキラルな触媒キャビティの設計へと発展させる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、独自に開発したイミダゾピリジニリデン配位子により調製される金-亜鉛異種二核錯体の配位子を適切に修飾することで触媒の活性中心に対しキャビティ構造を誘起し環化反応を促進することでこれまでに合成が困難であった環状分子の合成法を確立することを目的としている。今年度は特に金-亜鉛錯体を用いて、2つの反応点としてアルキンとカルボン酸を持つ鎖状分子である6-ヘプチン酸類縁体を基質としたヒドロカルボキシル化による環化反応の検討を行った。その結果、7員環ラクトンを効率的に合成する触媒系を開発することに成功した。これまでに報告されていた分子内ヒドロカルボキシル化による7員環ラクトン合成では、利用できる基質がベンゼン環を内包し配座自由度が低い基質であるか、配座自由度が高いが置換基を持たない末端アルキン基質に限定的であった一方で、今回開発した触媒系では配座自由度が高い内部アルキンを基質として利用できることから様々な置換基を持つ7員環ラクトンが合成可能となった点で大きな発展があったといえる。さらに、金-亜鉛異種二核錯体の設計過程で開発したイミダゾピリダジニリデン配位子が金原子と種々の3d金属が金属-金属相互作用を持つ異種二核錯体を容易に合成できるテンプレートとなることを見出した。実際に単結晶X線構造解析によって得られた錯体の詳細な構造を同定し、得られた構造を参考にして量子化学計算によって金属-金属相互作用の評価を行った。本異種二核錯体も新たな触媒となり得るために今後の発展が期待できる成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の7員環ラクトン合成における触媒開発の初期段階において、基質のオリゴマーが主たる副生成物として得られていた。この結果を受けて事前に環化段階とオリゴマー形成段階の遷移状態を量子化学計算によって算出し、非共有結合性相互作用を可視化することでイミダゾピリジニリデン配位子の窒素原子上の置換基が触媒キャビティ構築に対し大きな影響を与えることを突き止め、実際に窒素原子上の置換基に対し嵩高い置換基を導入することでオリゴマー化を抑制し大幅に7員環ラクトンの収率を向上させることに成功した。本成果は、量子化学計算を使用することで合理的かつ効率的に触媒設計が可能となることを指示する結果であり、本課題の核となるキャビティ構造の重要性も実験的に支持されたことから大きな進展があったといえる。また、窒素原子上の置換基をスクリーニングする過程においてイミダゾピリジニリデン配位子の合成法を大幅に改善することに成功しステップ数の軽減と収率の向上が行えたことから、多様な配位子を簡便に合成することが可能となり今後本研究課題をさらに加速させることができることも特筆に値する点である。さらに、配位子設計の過程で得られたイミダゾピリダジニリデン配位子に対する知見は、本触媒開発のカギとなる反応点の近接化に対し有効な構造的特性を持つ錯体が合成可能であるために今後さらなる研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実験科学的手法及び計算化学的手法両方で得られた触媒設計の知見を基にさらなる異種二核錯体触媒の最適化を進めることで従来法では成し得なかった高難度な変換反応へと挑戦する。特に、触媒分子設計において基質分子が触媒の活性サイトへと入り込み反応点同士を近接化する際に複数の分子間相互作用が重要となると考えられるために、量子計算化学的手法である非共有結合性相互作用の可視化を駆使して触媒キャビティを構築するような配位子設計を引き続き進める計画である。さらに、今年度の検討で空の含窒素芳香族配位子を有する多数の金錯体の合成法を確立しており着実に金原子を含む異種二核錯体のライブラリーが充実してきたため、これまでに本触媒系を用いて検討してきた反応系を見直すことでさらなる触媒反応の高効率化が可能になると考えている。また、本研究過程で見出した新たな異種複核錯体合成のテンプレートであるイミダゾピリダジニリデン配位子を用いることで金属間に相互作用を持つような錯体が容易に合成できるようになった。これは、7員環ラクトン合成に使用した金-亜鉛異種二核錯体よりもさらに近接した位置に金属原子を配置することができるようになったことを示しており、反応点の近接化を有効活用した反応系への応用が期待できる。そのため、これまでに開発してきたイミダゾピリジニリデン配位子によって構築した触媒分子と共に触媒反応への応用を見据えた開発を進めていく計画である。
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