Project/Area Number |
23K13767
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 34010:Inorganic/coordination chemistry-related
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 文也 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 助教 (90884205)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | 機能性金属錯体 / 極性分子配列 / 溶媒蒸気応答性 / 発光特性 / ベイポクロミズム / 機能性金属錯体薄膜 / 溶媒蒸気応答 / 強誘電性 |
Outline of Research at the Start |
分子性強誘電体の開発は、従来の金属酸化物強誘電体などで課題とされてきた膜厚やドメインサイズによる負のサイズ効果を克服できるという点で、ナノデバイス化等の観点から広く注目を集めている。本研究では、溶媒蒸気曝露による極性集積構造変換が可能な強誘電性単核金属錯体に着目し、薄膜化することで溶媒蒸気に応答可能な多機能性強誘電体薄膜の開発と新機能創出を目指す。同時に、薄膜試料による分子配列の直接観察と各種分光分析によるモニタリングを行うことで、これまで不透明であった集積構造変換機構および分極反転機構を解明し、新たな強誘電性発現機構のための分子設計指針の確立とより高度な機能性金属錯体材料開発へと展開する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、溶媒蒸気曝露による極性集積構造の変換および発光色の制御が可能な単核アルミニウム(III)錯体の合成と機能評価を行った。ナフタレン環を含む三座シッフ塩基配位子 1-{[(2-hydroxyphenyl)imino]methyl}naphthalen-2-ol (H2nap) を用いた錯体 [Al(nap)(acac)(solv)] (solv = MeOH, DMSO, pyridine) を合成し、単結晶X線構造解析および発光特性評価を行った。MeOH体およびpyridine体は構造解析の結果から、それぞれ溶媒分子が配位した目的の錯体であり、非極性空間群にて結晶化していることが明らかとなった。DMSO体に関しては、極性空間群であるPna21にて結晶化していることが明らかとなり、DMSO分子の配位と極性集積構造の形成を確認した。溶媒蒸気の曝露実験を行ったところ、MeOH体およびpyridine体はDMSO蒸気の曝露によってDMSO体へと変化し、極性集積構造を形成することが明らかとなった。DMSO体においては第二次高調波発生(SHG)が観測され、MeOH体に比べて比誘電率の上昇も観測された。また、DMSO蒸気の曝露前後において圧電力応答顕微鏡(PFM)による分極ドメイン観察を行ったところ、MeOH体では顕著な常誘電体挙動が観測されたのに対して、DMSO体では明確な強誘電体ドメインの形成が観測された。さらに、MeOH体およびpyridine体では大きく発光色が異なっており、黄色発光から橙色発光への顕著な発光色の変化も観測された。これにより、極性集積構造と発光色の協奏的な制御が可能なアルミニウム(III)錯体の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合成した新規アルミニウム(III)錯体において、溶媒蒸気曝露に伴う極性集積構造変換と発光特性の協奏的な制御が可能であることが示唆され、DFT・TDDFT計算によってその起源を明らかにした。これらの結果は、ベイポクロミズム特性を示すアルミニウム(III)錯体における初めての報告例となり、極めて興味深いものである。現在は、薄膜試料の作製に着手しており、更なる材料開発へと展開している、以上より、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、薄膜試料の作製と構造・配向性評価、ならびに強誘電性評価を進めていく。また、中心金属イオンとして磁性イオンを用いた錯体の使用により、スピン状態変換や単分子磁石特性といった機能性との複合化による多機能性分子材料開発に関しても並行して進めていく。
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