Project/Area Number |
23K13880
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 38030:Applied biochemistry-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
辻 徳治 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (50845112)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 羊水 / 表皮組織 / 表皮分化 / 表皮角化細胞 / トランスグルタミナーゼ / 脂質代謝 / ケラチノサイト / 三次元立体培養 |
Outline of Research at the Start |
表皮細胞は、分化を繰り返すことで「表皮多層構造」を形成する。胎児の表皮形成は、羊水で満たされた羊膜内腔で進行するため、羊水中には表皮形成を促進する因子が存在すると考えられる。しかし、表皮細胞を液体培地中で培養する「液相培養」では、多層構造の再現が困難であり、羊水由来因子を介した表皮形成促進機構については未解明な点が多い。 本研究では、ヒトを含む有羊膜類の中でも、短い胎生期間で成熟した表皮構造を獲得するニワトリに着目し、採取したニワトリ羊水中から表皮形成を強く促進する因子を探索、同定する。さらに、当該の羊水由来因子が、どのように表皮形成を促進するのか、その分子機構の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「羊水中には表皮組織の形成促進に関わる未知の因子が存在する」いう仮説のもと、ヒト表皮細胞の分化促進に寄与するニワトリ受精卵由来因子の同定および同定因子の作用機序の解明を目的として研究を進めている。本年度は、ニワトリ受精卵から採取した羊水が、ヒト表皮角化細胞の分化促進に寄与するかを明らかにすることを目的として以下の解析を行った。 まず、異なる胎生期のニワトリ受精卵から羊水を採取し、羊水添加あるいは羊水非添加の増殖用培地を用いてヒト表皮由来不死化角化細胞株であるKer-CT細胞を一定期間培養した。そして、Ker-CT細胞における表皮形成関連因子のタンパク質発現量が、羊水添加によってどのように変化するかを検証した。結果、特定の胎生期の羊水を培地中に添加することで、表皮形成に必要不可欠なタンパク質架橋化酵素であるトランスグルタミナーゼをはじめ、その基質タンパク質群や複種類の表皮細胞分化マーカータンパク質の発現が増加することを明らかにした。 次に、特定胎生期の羊水が表皮分化関連因子群の発現制御にどのように寄与するのかを詳細に検証するため、qPCR法を用いた網羅的な解析を実施した。結果、特定胎生期の羊水添加によって、ヒト1番染色体上の表皮分化複合体に位置する遺伝子群や、表皮分化の制御に関わる複数の転写因子の発現量が増加することを明らかにした。また、細胞内の脂質代謝に関わる因子の遺伝子発現量も増加する可能性を見出した。 以上の解析により、羊水中には表皮細胞の分化を促進する何らかの制御因子が含まれている可能性を示すことができ、ヒトを含む有羊膜類動物の表皮形成メカニズムの一端を理解するための基礎的知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はKer-CT細胞株を用いたin vitro解析を実施し、ニワトリ羊水がヒト表皮由来細胞株における表皮分化関連因子の発現制御に与える影響について精査した。結果、羊水中に含まれる何らかの因子が、表皮形成の鍵因子となっている可能性を示すことができた。また、羊水添加によって発現が促進することが認められた因子の中には、トランスグルタミナーゼなどの表皮分化関連因子に加えて、計画当初に着目していた表皮構造の成熟に必要な脂質成分の代謝関連因子も含まれていた。 引き続き、羊水添加による発現促進が認められた因子に着目した解析を継続することで、胎生期の表皮形成機構における羊水由来因子の作用機序の一端が明らかになることが期待できる。さらに本年度は、羊水中の何らかのタンパク質性因子が分化関連因子の発現促進に寄与している可能性を予備的に見出しており、当該因子の同定を目指したタンパク質精製実験の条件検討も進めている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、特定時期のニワトリ羊水を給源として、カラムクロマトグラフィーを用いたタンパク質精製の実施を計画している。これにより、表皮分化関連因子の発現促進への寄与が予想される羊水由来の候補因子(群) の同定を試みる。また、表皮多層構造の形成を再現できるin vitro三次元立体培養法を用いることで、特定胎生期の羊水や取得した精製画分の添加によって、表皮多層構造の形成が促進されるかを検証する。この際、Ker-CT細胞株に加えて、ヒト新生児由来正常表皮角化細胞を用いた解析を計画している。
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