Project/Area Number |
23K13894
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 38040:Bioorganic chemistry-related
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上田 大次郎 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60843919)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
|
Keywords | テルペン / 生合成 / 昆虫 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、テルペンの伸長反応と環化反応の触媒機構の違いを明らかにすることで、伸長酵素にはない昆虫環化酵素に特有の活性部位残基を見出す。そのためにハムシ環化酵素(PsTPS2)の詳細な機能解析と立体構造解析を行う(研究①)。それらの残基の重要性を変異実験により明確にし、昆虫環化酵素に特有の配列モチーフを特定する(研究②)。さらに、そのモチーフを基に昆虫環化酵素のゲノムマイニングを行い、テルペン探索の未開拓生物材料であった昆虫から効率的に数多くの新規テルペンを見出す(研究③)。
|
Outline of Annual Research Achievements |
一般的なテルペンの生合成には、鎖状のプレニル二リン酸を形成する伸長酵素と、構造多様性に重要な環状骨格を構築するテルペン環化酵素が主に寄与する。植物や微生物の両酵素は配列類似性をもたない。興味深いことに、昆虫のテルペン環化酵素は、従来のテルペン環化酵素とは類似性がなく、伸長酵素と類似性があることが最近の研究で判明した。 伸長酵素はDMAPP等のアリル二リン酸とIPPを基質にして伸長反応を行うため、IPP結合部位が存在する。それに対し、昆虫のテルペン環化酵素はFPP等のアリル二リン酸のみを基質とするため、活性部位内にIPP結合部位は存在せず、環化を触媒する特有の残基や環化に必要な空間が存在することが予想される。しかしながら、伸長酵素と昆虫環化酵素の触媒機構の違いは未だに明らかになっていない。本研究では、酵素(後述:着想に至った経緯のハムシ、カメムシのテルペン環化酵素)の機能解析・立体構造解析や変異酵素解析から両酵素の触媒機構の違いを明らかにする。さらに、そこで特定された昆虫テルペン環化酵素に特有の配列モチーフを基に昆虫テルペン環化酵素のゲノムマイニングを行い、昆虫特有の新規テルペンを数多く発見することを目的とする。 以前、新規化合物をPsTPS2より見出したが、収量が不十分なため、立体化学を決定することができなかった。そこで、収量を上げるためにPsTPS2の詳細な酵素諸性質を解析した。結果、NMR解析に十分な化合物量を得られ、構造決定に至った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の一年目の予定は次のとおりである。新規化合物をPsTPS2より見出したが、収量が不十分なため、立体化学を決定することができなかった。そこで、収量を上げるためにPsTPS2の詳細な酵素諸性質を解析する。その後、得られた最適条件下で新規化合物を酵素合成し、HPLC等にて単離を行い、NMRやX線解析等で絶対立体化学を含めて構造決定する。また、PsTPS2のX線結晶構造解析を行い、伸長酵素の活性部位構造との違いを明らかにする。他の既知酵素(PsTPS1, 3-5, MhTPS, NvTPS)は現在発現が確認されず、PsTPS2よりもN末端に31~46アミノ酸の余計な領域が存在するため、発現が見られないことが考えられる。それらの欠損体を発現し、良好なものに関して同様に機能解析や立体構造解析を行う。 今年度は生成物の収量を上げるため酵素の活性向上を検討した。PsTPS2の諸性質解析(金属イオン、pH、基質濃度など)及び反応時の重層溶媒の検討から、収率を4.1倍に向上させることに成功した。NMR解析を行った結果か生成物の構造が明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、解析の報告例がないIDS-type TPSホモログを多様な昆虫ゲノムから探索し、3種類について大腸菌組換え酵素の反応解析を行った。そのうち1種類について環状セスキテルペンと予想される生成物が確認された。その酵素に対してX線結晶構造解析を行う予定である。この結果より得られた基質周辺の立体構造情報からテルペンの伸長と環化に関与すると考えられる残基を絞り込む。部位特異的変異によって環化にのみ関与する残基を特定し、昆虫環化酵素モチーフを見出す。特に、伸長酵素を環化酵素に、環化酵素を伸長酵素に改変することでモチーフの証明を目指す。結晶化が困難な場合には、一次構造の保存領域とモデリング構造の情報を駆使して昆虫テルペン環化酵素モチーフを特定する予定である。
|