Project/Area Number |
23K13946
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 39030:Horticultural science-related
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
清水 拓 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 研究員 (70759133)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | リンゴ / 果肉褐変 / 難褐変性 / 褐変する速さ |
Outline of Research at the Start |
リンゴ果実に含まれるポリフェノール類は様々な健康機能性を有するが、同時に果肉褐変反応の基質でもある。この褐変現象はリンゴの用途を制限する一因であり、近年は外食や中食産業における有用性から褐変がほとんど発生しない難褐変性のリンゴが注目されている。しかし、既存の難褐変性リンゴ品種のポリフェノール含量は総じて少なく、難褐変性品種はリンゴの特長を1つ損なっているといえる。本研究では、「褐変する速さ」に注目し、リンゴ品種・育成系統群の褐変する速さの品種間差とDNA多型情報を解析して、健康機能性と難褐変性を両立する理想的な育種素材とその遺伝的要因を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
「果肉が褐変する速さ」という観点からポリフェノール類による健康機能性と果肉の切り口が変色しにくい果肉難褐変性を両立するリンゴ育種素材を明らかにするため、リンゴ96品種・育成系統の果実について、経時的に果肉の褐変程度を測定した。この褐変程度のデータを用いたHill equation型関数への回帰分析により、各品種・育成系統の果肉褐変指標値が最大値の50%に達するまでの時間(BT50)が推定された。5 品種の果肉サンプルの撮影画像から、BT50と果肉が褐変する速さが対応することが改めて確認され、BT50の品種間差が理想的な育種素材の探索に用いる指標として適切であることが示された。 果肉が褐変する速さに関わる遺伝的要因を明らかにするため、褐変する速さを解析した96種について遺伝解析を目的としたゲノムDNAの抽出を行った。これらのDNAを用い、次世代シーケンサを用いたGRAS-Di法により遺伝子多型情報を解析することを計画していたが、抽出した大半のゲノムDNAが次世代シーケンサによる解析に必要な品質基準を満たしていなかった。このため、R5年度におけるGRAS-Di解析は延期し、R6年度に計画していたサンプルと併せて解析を行うこととした。 抽出したゲノムDNAが低品質であったことについては、R5年の夏期に天候不順から試験圃場で病害が大発生し、DNA抽出に用いる健全な葉が十分に得られなかったことが原因であると推測される。病害防除の方法とサンプリング時期を見直すことで改善が可能であると考えられるため、R6年はこれらの点に注意してサンプリングを実施する。R6年のサンプルと同時に解析を行うことにより、研究全体としては期間の終了年月であるR8年3月までに遅滞なく遂行可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リンゴ96品種・育成系統の果実を収穫適期に収穫した。これらの果実から果肉切片を作成して経時的に写真を撮影し、画像より色彩値の抽出を行うことで、褐変程度の測定を行った。さらに、測定で得られた褐変程度の指標値を種ごとに用量-反応曲線として知られるHill equation型関数に回帰し、回帰モデルのパラメータを取得した。パラメータの内、褐変程度が最大値の50%に達するまでの時間を表すBT50 が達観で評価した際の褐変する速さによく一致していることを複数の品種の測定画像から再度確認した。 果実の解析を行った96種について、当年枝から葉を採集し、自動DNA抽出装置(クラボウPI-50α)によってゲノムDNAを抽出した。これらの個体についてGRAS-Di法によるDNAマーカー遺伝子型の解析を実施しようと試みたが、次世代DNAシーケンサの委託解析のための品質基準である濃度20 ng/μL以上、A260/A280の値が1.8以上を満たすサンプルが96サンプル中40サンプル程度と少なく、精度の高い解析は困難であると考えられた。このため、R5年度におけるGRAS-Di解析の実施は断念し、R6年度に再度ゲノムDNAを抽出し直して解析に供試することとした。十分な品質のDNAが得られなかった理由としては、リンゴの葉のサンプリング適期である6月から8月に試験圃場で病害が大発生してしまい、健全な葉が十分に得られなかったことが理由として考えられる。R5年の同時期は天候不順が続いたため降水量が例年より多く、病害が発生・拡大しやすい条件がそろって薬剤防除が有効に機能しなかった。R6年は薬剤による防除間隔を見直し、病害発生前にサンプリングを済ませる等の対策を行って、確実に高品質なゲノムDNAを獲得する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
褐変する速さについて、当初の計画の通りにリンゴ品種・育成系統・育種交雑実生の測定と解析を継続する。R6年度は、R5年度に解析した96種の反復測定に加え、50種程度の解析も新たに行う予定である。 ゲノム情報の取得について、R6年度にGRAS-Di法によるDNAマーカー情報を取得予定のリンゴ50種から葉のサンプリングを行い、ゲノムDNAを抽出する。加えて、サンプルの品質が不十分でR5年度に解析できなかった96種についても再度サンプリングとゲノムDNAの抽出を行う。GRAS-Di法によるライブラリの作成及び次世代DNAシーケンサによる配列決定、DNAマーカー情報の解析は計画通り業務委託によって実施する。その後の計画であるゲノムワイドアソシエーション解析や表現型によるクラスター解析を実施するには、供試するすべての種の情報が必要であり、当初計画においてもR6年度以降の実施としているため、R6年度中にゲノム情報の取得を完了することで当初の計画に遅滞なく研究を遂行できる見込みである。
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