Project/Area Number |
23K13993
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 40020:Wood science-related
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
徳永 有希 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (00963282)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | リグニン / バイオリファイナリー / 成分分離 / セルロース / ヘミセルロース / 分子構造解析 |
Outline of Research at the Start |
木質バイオマスに含まれるリグニンは、木質バイオマスから単離する過程で、高エネルギー処理によって化学構造を複雑に変化させる。その結果、化学構造が部分的にしか特定できないような多様かつ複雑な生成物として得られる場合が多い。申請者はこの点がリグニンの素材化を困難にしていると考え、リグニンの化学構造の多様化を抑制することに主眼を置いた木質バイオマスの変換プロセスを提案する。具体的には (1) リグニンの分子内縮合を抑制する保護剤と、(2) 低温から常温でセルロースを膨潤・溶解できる溶媒の組み合わせを模索し、最適な反応条件を本研究にて開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
木質バイオマスに対して様々な成分分離を行う過程で、リグニンは高エネルギー処理に由来する分解と自己縮合を繰り返し、最終的にその化学構造が部分的にしか特定できないような多様かつ複雑なリグニン誘導体として得られる場合が多い。本研究では、リグニンの分子内自己縮合を抑制する保護剤と、低温から常温でセルロースを膨潤・溶解できる溶媒を組み合わせ、リグニンの化学構造の多様化を抑制することに主眼を置いた変換プロセスを模索している。 2023年度はまず、実験に使用する針葉樹・広葉樹木粉の調製および組成分析を行った。そのうえでセルロースを膨潤溶解する溶媒として、報告例の多い濃硫酸を選定し、リグニンの分子内縮合を最小限に抑える添加剤の検討を行った。木粉の濃硫酸処理においてはリグニンのベンジル位に生じるカチオンが、リグニン芳香環と自己縮合することが知られている。従って、(1)自己縮合が進行する前に抽出してしまうことを狙って、濃硫酸に対して安定かつ不均一層を形成するトルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルムを添加剤として検討した。あるいは(2)リグニンのベンジルカチオンに可逆的に結合し、リグニン芳香環による自己縮合と競合しうるアルコール(ブタノール)を添加剤として検討した。 トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルムを添加して木粉の濃硫酸処理を行うと、リグニンの抽出率は低く、得られた画分も溶媒への溶解性が極めて低かったため、自己縮合が進行したことが示唆される。一方でクロロホルムを用いた系であってもブタノールを加えて濃硫酸処理を行った場合に、リグニン抽出率が向上した点から、アルコールによるベンジルカチオンの保護がリグニン自己縮合の抑制に効果的である可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、低温から常温でセルロースを膨潤・溶解できる溶媒として、申請書で挙げていた溶媒のうち濃硫酸に絞って実験を進めた。また、リグニンの分子内自己縮合を抑制する添加剤として数種類の化合物を比較し、ブタノールが効果的である可能性を見出した。ただし、ブタノールの添加量や、異なる長さの脂肪族側鎖を持つアルコール(ヘキサノール、ペンタノール)に対する反応性については十分な検証ができていない。また、得られるリグニンの化学構造解析を実施し、反応メカニズムを明らかにする必要があり、これらは2024年度の検討事項とする。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度はまず、前年度に検討できなかった反応条件の詳細を検討する。反応場に添加するアルコールの量や、使用するアルコールの種類、反応時間などを変更して得られるリグニンの収率や性状を比較する。リグニンの性状解析においてはFT-IR、分子量分布測定、熱重量分析等を行い、脱リグニンした残渣画分については構成糖の解析を行う。また、リグニンについては二次元NMRにより、その化学構造を明らかにする。以上の解析により、常温でセルロースを膨潤・溶解できる溶媒として濃硫酸を用いた系における成分分離挙動をまとめ論文化を目指す。
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