Project/Area Number |
23K14008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 40030:Aquatic bioproduction science-related
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
吉田 和広 佐賀大学, 農学部, 助教 (80952027)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 珪藻 / 休眠期細胞 / 珪藻生理生態学 / 生物海洋学 / 赤潮 |
Outline of Research at the Start |
珪藻スケレトネマは、沿岸域で最も重要な基礎生産者であるが、しばしば異常増殖し、赤潮化することもあり、海藻など養殖業に大打撃を与える。スケレトネマ赤潮の初期発生は、海底で眠る休眠期細胞の発芽から始まる。このような、スケレトネマの「タネ」を定量は、赤潮の予兆検出につながるため、スケレトネマ赤潮が深刻な有明海をモデルに、スケレトネマ種別の休眠期細胞分布解明を目指し、遺伝子に基づいた種別休眠期細胞定量の新手法開発および「入眠」遺伝子定量法開発を行う。室内実験で手法を確立し、その手法を有明海現場試料に適用することで、スケレトネマの「発芽ー増殖ー入眠サイクル」を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年は、有明海奥部では毎年のように赤潮が発生しているスケレトネマを対象に、種別の休眠期細胞の分布を解明し、その分布特性を明らかにした。季節ごとに採取された有明海奥部の7地点の底泥と、有明海に接している六角川、早津江川の上流、中流、下流の底泥を試料として、試料を段階的に希釈分注して培養するMPN法を実施した。すべての希釈段階試料のDNAを用いて、スケレトネマ種判別PCRを行い、各底泥試料における、夏季主要種のS. costatumおよび冬季主要種のS. japonicumの休眠期細胞数を算出した。これを「MPN-PCR法」と名付けた。S. costatumでは、冬と春に河川に由来する休眠期細胞の供給と物理的循環流で休眠期細胞が河口域に集中していた。同様に、S. japonicumでも、春と秋に河川流出と物理的循環流で、休眠期細胞が河口域で蓄積された可能性を示した。一方、各種の増殖に最適な季節では、休眠期細胞は激減し、休眠期細胞が発芽して、栄養細胞となり、その後に赤潮を引き起していた。 こうした河川流入や物理的循環流といった移流などの外的要因のほかにも、いずれの珪藻種でも、増殖の最適シーズンに発芽して休眠期細胞数を減らし、赤潮期から堆積して休眠期細胞数を増やす休眠ー発芽サイクルといった内的要因によって、休眠期細胞分布が変化しつつ推移することが示唆された。 したがって、河川流入や沿岸流による移流で、休眠期細胞が河口域に集中した一方で、最適に発芽すれば、赤潮化につながるといったスケレトネマ各種の休眠期細胞の生態や休眠ー発芽サイクルを明らかにできた。今後は、MPN法に代わる遺伝子発現定量による簡易休眠期細胞定量法を開発し、さらに大量の試料の休眠期細胞を定量することで、スケレトネマ休眠期細胞の分布や生態理解を大きく進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スケレトネマの種判別PCR法と底泥限界希釈法(MPN)を組み合わせたMPN-PCR法を有明海の底泥試料に展開することで、沿岸最重要珪藻のスケレトネマが、「どこに」分布し、「いつ」発芽して、赤潮化するかが現場で検証された。これは、初めての試みであるだけでなく、本研究課題のもう一つである今後の遺伝子発現解析による簡易休眠期細胞定量法開発の十分な基礎データを与えたといえる。 また、海洋での発芽時期を特定できたことから、休眠から発芽する環境条件がかなり絞られたことから、スケレトネマの休眠と発芽をコントロールする道筋が見えたため、休眠ー発芽サイクルを制御して、休眠・発芽遺伝子の特定へ大きな一歩を踏み出したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年の研究で明らかとなったスケレトネマ種別の分布から、対照的な休眠期細胞数をもつ試料を対象に、徹底したMPN培養実験(様々な水温、光条件)を実施し、種別の休眠期細胞数と種別の遺伝子発現量解析を同時に実施し、MPN培養実験結果と遺伝子発現結果を突き合わせ、簡易休眠期細胞数定量法を開発する。 また、本年は70試料以上の有明海底泥試料を採取したため、簡易休眠期細胞定量法確立後に、現場の海泥試料に簡易法を展開し、MPNも実施しながら、簡易定量法を完成させる。
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