Project/Area Number |
23K14101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 42020:Veterinary medical science-related
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
西森 朝美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 研究員 (80817578)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | 牛伝染性リンパ腫 / 腫瘍発症機序 / B細胞 / 体細胞変異 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、ウシに悪性リンパ腫を引き起こし畜産業に深刻な被害を及ぼす“牛伝染性リンパ腫(EBL)”について、腫瘍細胞ゲノム上の体細胞変異を詳細に解析することで、EBLの発症メカニズムを明らかにすることである。EBLはレトロウイルス感染を原因として一部のウシのみに発生する疾患であるが、どのようにウイルス感染細胞ががん化に至るのか、その詳細な分子基盤はいまだ解明されていない。本研究では、ゲノム解析技術を用いて、EBL発症牛における変異遺伝子や変異パターンの同定、その背景因子の推定を行い、発症までのゲノム変化を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、レトロウイルス感染に起因してウシに悪性リンパ腫を引き起こす“牛伝染性リンパ腫(EBL)”について、がん細胞ゲノム上の体細胞変異を詳細に解析することで、EBLの発症メカニズムを明らかにすることを目的とする。当研究室のこれまでの研究にてEBL発症牛18症例における変異解析を実施したが、本年度はさらに症例数を増やして解析し、合計36症例における体細胞変異の情報を得た。 がん関連遺伝子として知られる21遺伝子についてターゲットリシーケンスを行い、EBL発症牛のがん細胞ゲノム上の体細胞変異を同定した。このとき、1症例から正常部位と腫瘍部位をそれぞれ解析し、腫瘍部位でのみ認められた変異を体細胞変異と判定した。その結果、21遺伝子中8遺伝子(TP53, NOTCH1, KMT2D, CREBBP, KRAS, PTEN, CARD11, MYD88)で体細胞変異が同定され、そのうちTP53遺伝子では全症例の69.4%に変異が認められた。また、がん抑制遺伝子の両方のアレルが不活化される現象(がんの2ヒット説)も全症例の69.4%で認められた。 体細胞変異の様式と発症月齢との関連性を見ると、タンパク質翻訳への影響度が高い変異(ストップコドン挿入、フレームシフト)、あるいは両アレル性の変異を有する症例では発症月齢が有意に低いことが分かった。また、36ヶ月齢未満の2症例でNOTCH1遺伝子に先天性を疑う変異が確認された。一方、96ヶ月齢以上の7症例では変異保有率が有意に低いことが分かった。 同定した体細胞変異のうち一塩基変異に着目して変異様式を評価したところ、EBL発症牛で認められる変異はC→T(および相補的なG→A)変異が多いこと、さらに、変異シグネチャー解析によりCpG部位のメチル化および脱アミノ化が変異の背景因子と推定されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画である「実験1: EBL発症牛におけるゲノム上の体細胞変異の解析」について、予定通り18症例を新たに解析し、合計36症例分の体細胞変異の情報を収集した。また、解析に用いた臨床症例の発症月齢と体細胞変異の様式との比較解析を追加で実施し、新たな知見を得ている。さらに、次年度に実施予定であった「実験2: EBL発症牛の突然変異パターンの解析」を前倒しで行っており、予定している実験計画は研究期間中にすべて終了できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は「実験2: EBL発症牛の突然変異パターンの解析」のためのデータ解析を継続するほか、当初計画から発展させて追加の課題に取り組む予定である。具体的には、EBL発症牛の体細胞変異がCpG部位のメチル化および脱アミノ化による結果である、という本課題の知見を裏付けるため、発症牛のがん細胞ゲノムにおけるDNAメチル化レベルを解析する。EBL症例の臨床検体から抽出したDNAを用いて、バイサルファイトシークエンスにより標的配列中のメチル化シトシンを同定し、その頻度を正常部位および腫瘍部位で比較する。これによりEBL発症牛の腫瘍部位のみでゲノムDNAのメチル化の蓄積が起こっているか否かを評価することができる。
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