Project/Area Number |
23K14124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43010:Molecular biology-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
磯部 真也 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (50897147)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ヘテロクロマチン / DNA損傷応答 / 転写 / 非膜性核内構造体 / DNA修復 / 液-液相分離 |
Outline of Research at the Start |
申請者はDNA二重鎖切断修復に関わる53BP1、ヘテロクロマチン形成に関わるAHDC1、転写装置のRNA Pol IIとそれぞれ結合するSCAIを見出した。SCAIと結合するこれらの因子は、それぞれ液-液相分離による非膜性構造体を形成することが示唆されていることから、SCAIは、DNA修復装置や転写装置が形成する非膜性構造体を、同じく液-液相分離により構築されたヘテロクロマチンとリンクさせる働きをしているのではないかと着想した。これらの特徴的な相互作用を手掛かりに、修復、転写のどのようなステップの機能や動態にヘテロクロマチンとのリンクが必要なのかを分子レベルで解明することを試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
ヘテロクロマチンでは、その凝縮した構造からDNA上でおこるイベントに関与する因子はそのままの状態ではDNAにアクセスできず、クロマチン構造の再編がイベント毎に行われている。これまでに、ヘテロクロマチン因子HP1の新規結合タンパク質として同定されたSCAIが、DNA二重鎖切断修復に関わることを報告してきた。その研究過程でSCAIが、DNA修復装置の構成要素である53BP1や転写装置のRNA Pol II のうち、高度にリン酸化されたものだけに結合していること、加えて、他の結合様式でヘテロクロマチン形成に関わるAHDC1と結合することを見出した。SCAIが結合するこれらの構成因子はそれぞれ自己集合活性を持ち、液-液相分離による非膜性構造体を形成することが示唆されていることから、SCAIはクロマチン構造やクロマチン上のイベントに関わる非膜性構造体をそれぞれ結びつけ、制御しているのではないかと着想した。 本年度の研究では、まず、SCAIのAHDC1、53BP1、RNA Pol IIとの結合変異体の作製を試みた。AlphaFold2による構造予測からSCAI との結合に重要と思われるアミノ酸に変異を導入することや、部分欠損変異体を作製したが結合が完全には欠失しない変異体か、発現しない変異体しか取得できなかった。そのため、次に、ヒト細胞、マウス細胞の両方でAHDC1ノックアウト細胞を作製し、AHDC1変異体として、HP1結合、SCAI結合、自己集合活性を欠失したものを確立し、AHDC1の側面から研究を進めようと修正を考えている。また、SCAIノックアウト細胞の作製や、CRISPR/Cas9によるヘテロクロマチン領域上に損傷を誘発させる系、近接ライゲーション法の導入は現在行なっており、またRNA-seq、ChIP-seq解析なども含めて今後の解析する系の目処が立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画として、SCAIの変異体の作製を行い、SCAIノックアウト細胞でのリプレイス実験を行う予定であったが、AHDC1や53BP1、RNA pol IIと結合が予想される領域でのSCAI点変異体は、結合が完全には消失せず、また、部分欠損SCAIは発現しなくなるなどの理由から、現在、SCAI変異体の作製が思うように進捗できていない。そのため、まずは平行して進めていた研究として、AHDC1ノックアウト細胞の機能解析を行った。ヒトAHDC1ノックアウト細胞は放射線照射やDNAインカレーターとして働くドキソルビジンに対して感受性を示したことから、AHDC1はDNA損傷応答に関わることが示唆された。また一方で、マウスAHDC1ノックアウト細胞ではサブセントロメア領域のmajor satellite non-cording RNAの増加が見られることから、AHDC1はヘテロクロマチン領域の転写制御、もしくはクロマチンへのRNAの取り込みなどに関与している可能性が示唆された。そのため、AHDC1の解析から見えてきた、DNA損傷応答、転写制御やクロマチン制御への機能にSCAIとのリンクが重要か、またその関与ついてAHDC1の解析を介して深く掘り下げていくことを考えている。加えて、現在、SCAIノックアウト細胞を作製しており、また、AHDC1上のSCAI結合部位や、自己集合に必要な領域のみならず、ヘテロクロマチンやクロマチンリモデリング複合体との結合部位を同定している。これらの変異体のリプレイス細胞を樹立し、また、CRISPR/Cas9によるヘテロクロマチン領域上に損傷を誘発させる系の導入を行い、実際に損傷を誘発し観察することができた。これらの新しい実験系の導入なども含めて、今後の着目する表現型とその解析手段に目処が立ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、AHDC1のSCAIとの結合や自己集合活性を消失した変異体、またはヘテロクロマチンやクロマチンリモデリング複合体とのリンクを欠損した変異体を野生型AHDC1と置換した細胞株をゲノム編集技術などによってそれぞれ樹立する。それらの細胞株を用いて、ヘテロクロマチン領域上にCas9で損傷を誘発させた場合に、DNA損傷応答にどのような影響が生じるのかをgH2AXや他の修復応答因子のDNA損傷部位へ集積の経時観察を行う。加えて、近接ライゲーション法により、ヘテロクロマチン近傍に集合している修復因子がAHDC1ノックアウトや結合変異体、もしくはSCAIノックアウトによってどのような変化が生じているかを解析し、AHDC1やその結合因子が、損傷応答のどのステップで働き、どのような影響を与えているかを明らかとする。 また、広汎な遺伝子発現への影響を調べるために、SCAIやAHDC1の機能不全による表現型を、RNA-seq や、ヒストン修飾のChIP-seqなどで評価することで、各因子の機能や相互作用がヘテロクロマチンと転写装置へのリンクに与える効果について解析する。加えて、リピート領域などのヘテロクロマチンをターゲットにdCas9-転写活性化ドメイン融合タンパク質によって強制的に転写させた際の制御や転写産物の動体について解析することで、SCAIやAHDC1がヘテロクロマチン上で起こる転写調節への関与していることを示す。 最後に、SCAIを介して、ヘテロクロマチンとDNA修復装置、転写装置が相互作用しているかを、近接ライゲーション法によって解析し、SCAIやAHDC1の機能不全による、それらのリンクに与える影響を調べることで、異なる非膜性構造体の相互作用の実態を示すことに挑戦する。
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