細胞膜脂質の恒常性維持を担うホスホリパーゼA2の基質特異性と機能制御機構
Project/Area Number |
23K14145
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43030:Functional biochemistry-related
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
林 大輝 神戸大学, 農学研究科, 助教 (50937208)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
|
Keywords | ホスホリパーゼA2 / 過酸化脂質 / 分子動力学シミュレーション / アンキリンリピート / フェロトーシス / Phospholipase A2 / グリセロリン脂質 / 酸化 |
Outline of Research at the Start |
Group VIA calcium-independent phospholipase A2 (GVIA iPLA2) は、脂質を分解する酵素であり、神経疾患や癌等、様々な疾患に関与する。しかし、GVIA iPLA2の働きやその制御メカニズムの詳細は未だに不明な点が多く、このことがGVIA iPLA2をターゲットとする創薬開発の妨げとなっている。本研究では、これらのことを明らかにし、GVIA iPLA2の働きを理解する基盤的な知見を得るとともに、将来の創薬開発に役立てることを目的とする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象である、GVIA iPLA2は細胞質型のホスホリパーゼA2であり、膜リン脂質を分解する酵素である。これまでに、GVIA iPLA2の変異が複数の神経疾患の原因となることが知られており、病原性の変異は100種類以上に及ぶ。GVIA iPLA2は多くのリン脂質を基質とするため、生体膜脂質の恒常性維持を担うと考えられており、神経疾患以外にも様々な疾患に関与することが報告されている。しかし、その複雑な基質特異性や、局在及び活性制御の分子基盤については不明な点が多く、その重要性に比して理解があまり進んでいない酵素である。本研究では、GVIA iPLA2の基質特異性の分子メカニズム及び、その局在及び機能制御機構を明らかにすることを目的に研究を遂行している。本年度の研究において、計算機による酵素-基質複合体の全原子分子動力学シミュレーションを行い、GVIA iPLA2と各種酸化脂質との相互作用を検証した結果、GVIA iPLA2が酸化リン脂質を認識する分子メカニズム及び責任残基を示唆する結果が得られた。現在、シミュレーションで得られた仮説を基に、変異蛋白質を作成することで仮説の検証を行っている。さらに、脂質の過酸化が引き起こす細胞死であるフェロトーシスを誘導することにより、GVIA iPLA2が細胞内で局在移行することを見出した。そこで、機能制御ドメインと考えられるアンキリンリピートドメイン (ARD) がフェロトーシス刺激における局在変化にどのように関与するのかを検証している。加えて、各種実験に使用するリコンビナントGVIA iPLA2の発現・精製条件を最適化し、高純度の精製タンパク質の作成に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の取り組みにおいて、分子動力学シミュレーションの実施環境を整え、実施することにより、GVIA iPLA2の酸化リン脂質に対する活性の分子メカニズムを示唆する結果が当初の計画通り得られた。さらに、シミュレーションで得られた結果を実証するために、培養細胞を用いた実験系を構築し、検証中である。これまでのところ概ね良好な結果が得られており、GVIA iPLA2の酸化リン脂質に対する活性の分子メカニズムの解明を達成できる見通しである。また、培養細胞を用いた実験において、フェロトーシス刺激によるGVIA iPLA2の局在移行が観察された。フェロトーシスにおけるGVIA iPLA2の関与は報告されているものの、局在移行の発見は初であり、この現象を基に、GVIA iPLA2の局在制御機構の一端が明らかになると期待される。また、GVIA iPLA2の機能・局在制御機構解明に用いる組換えGVIA iPLA2の発現・精製条件を改良することで高純度の組換え蛋白質の作製に成功しており、次年度における研究に使用する予定である。以上のように、本研究の目的達成に向けて着実に実験結果を積み重ねており、次年度に向けての準備も充分であることから本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、培養細胞及び変異GVIA iPLA2を用いて、酸化リン脂質分解活性の分子基盤を明らかにしていく。また、局在移行については、脂質及びタンパク質との相互作用を念頭にin vitro及び培養細胞を用いた実験により明らかにする。また、精製GVIA iPLA2を用いて、その活性制御機構を検証する。
|
Report
(1 results)
Research Products
(4 results)