Project/Area Number |
23K14158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹川 宜宏 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (50791810)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 分子モーター / べん毛 / 固定子 / アクチン / ミオシン |
Outline of Research at the Start |
生物の中には2種類の分子モーターがある。1つが、細菌の運動器官(べん毛)の根本にあるような回転モーター。もう1つが、アクチン線維/ミオシン系に代表されるようなリニアモーターである。本研究では、それらの回転モーターとリニアモーターを融合して、新規の分子モーターの創生を行う。遺伝子組み換えにより、べん毛モーターの部品をアクチン/ミオシンに置き換える。つまり、異なる分子モーターの間で部品の互換性を確立する。このように生み出された新規融合モーターは、従来とはまったく異なる設計思想で動く回転モーターである。本研究により、生物由来ナノマシンの新しい設計手段を開拓する。
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Outline of Annual Research Achievements |
生物の中には2種類の分子モーターがある。1つが、細菌の運動器官(べん毛)の根本にあるべん毛モーターに代表されるような回転モーター。もう1つが、アクチン線維/ミオシン系に代表されるようなリニアモーターである。本研究では、それらの回転モーターとリニアモーターを融合して、新規の分子モーターの創生を行う。このように生み出された新規融合モーターは、従来とはまったく異なる設計思想で動く回転モーターであり、生物由来ナノマシンの新しい設計手段を開拓に繋がる。まず、アクチン線維/ミオシン系のリニアモーター的な運動機構を、回転モーターであるべん毛モーターに移植する研究を行った。生物由来の分子モーターの部品はタンパク質であり、大腸菌の遺伝子組み換えにより、モーター部品の置換を行う。すなわち、べん毛モーター回転子タンパク質をアクチンと融合することで本来は直線状のアクチン線維を環状にし、さらにべん毛モーター固定子をミオシンやその他のアクチン駆動タンパク質と融合することでアクチン駆動固定子を生み出し、環状アクチンを動かしてモーターを回転させることを目指した。ある種の滑走性細菌はべん毛モーター固定子のホモログが、細菌アクチン線維の上をリニアモーター的に動くことで、細菌細胞の滑走運動を駆動されることが知られており、本研究では同固定子ホモログタンパク質のアミノ酸配列を参考に、同様のタンパク質の大腸菌発現系を構築した。そのペリプラズム側領域を大腸菌べん毛モーター固定子のペリプラズム側領域に置換したキメラタンパク質の発現系を構築した。また、ある種の藻類のアクチン/ミオシン系は他の植物と比べ高速運動することが知られており、本研究では同ミオシンのヘッドドメインに類似したタンパク質の大腸菌発現系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
滑走性細菌Myxococcus xanthusの滑走運動は、べん毛モーター固定子ホモログであるAglR/AglQ/AglSが、GltG/GltJ/GltI/AglZ/MglAを仲介して細菌アクチン(MreB)繊維上をリニアモーター的に動くことで行われる。今回、AglR/AglQ/AglSの大腸菌発現系およびそのべん毛モーター固定子MotA/MotBとのキメラタンパク質の発現系の構築に成功した。また、シャジクモ類のアクチン/ミオシン系は、被子植物のミオシンの数倍から十倍の速度で運動することが報告されている。シャジクモのアクチン/ミオシン系を参考に、そのミオシンヘッドドメインの部分断片の発現系を構築し、べん毛モーター固定子との融合のための形を整えた。研究の方向性としては想定通りの方向に進んでお り、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
生物の運動はすべて分子モーターによって行われる。アクチン線維上を移動するミオシンは、ATPの加水分解エネルギーを力学的な働きに変換する。これらは直線的な運動を行うリニアモーターとして、筋肉運動をはじめとするさまざまな生体運動に関与している。一方、回転運動を生み出す細菌べん毛モーターは、細胞膜の外から内へのイオン流を力学的な働きに変換する。このように、分子モーターとひとくちに言っても、それらを構成する部品は、機能的にも構造的にもあまりに異なる。今後は、それらの部品の互換性を生み出すために、リニアモーターのしくみで動く回転モーターを創生する。これまで進めていた通り、大腸菌のべん毛モーターの固定子をミオシンのヘッドドメインへと一部置換し、回転子をアクチンへと一部置換する。ミオシンはシャジクモ由来ミオシンホモログなどを使用する。またミオシンとは別に、滑走細菌由来固定子ホモログを改変してい使用する。アクチンはシャジクモや滑走細菌由来アクチンホモログを使用する。これらを組み込んだ融合モーターを使って動くキメラ大腸菌を作成し、遊泳解析およびべん毛の回転計測を行うことで融合モーターの機能を評価する。そこから更に改良を繰り返すことで、最効率な融合モーターを作り出す。加えて、従来型固定子とアクチン駆動型固定子を共発現し、イオン駆動力とATP加水分解エネルギーの両方で動くハイブリッドモーターを作成・機能解析を行う。このキメラ大腸菌の細胞膜を破壊しても、通常のべん毛モーターと違い、融合モーターは機能を維持するはずである。界面活性剤等により大腸菌の膜を緩やかに半可溶化し、外部からATPを添加することでモーターが回転する様子を確認する。そのうえでさらに完全に膜成分を取り除いて完全精製した融合モーターの回転を検出する。これらの結果は、今後の生物由来ナノマシンの開発・応用技術を発展に繋がる。
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