Project/Area Number |
23K14160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
大貫 隼 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (90777989)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
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Keywords | 反応座標 / 蛋白質構造変化 / 分子動力学シミュレーション / 遷移経路 / 機械学習 |
Outline of Research at the Start |
蛋白質は構造状態を切り替えることで適切な機能を実現する。構造状態間の遷移進行に関与する自由度(反応座標)を特定できれば、アミノ酸変異による活性向上の指針が得られる。分子動力学計算は原子スケールで構造遷移を観測できるものの、候補となる膨大な自由度の中から反応座標を特定する方法はいまだ確立されていない。本研究では独立成分解析や深層学習を活用することで、分子動力学計算で観測された蛋白質の大規模構造遷移に適用可能な反応座標推定法を確立し、蛋白質の活性向上をもたらすアミノ酸変異候補を提供することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大規模自由度系である蛋白質の構造遷移過程を分子動力学(MD)計算により追跡し、構造遷移の時系列情報から反応座標を推定する手法を確立することを目的としている。構造遷移過程を効率的に観察するために遷移パスサンプリング(TPS)法によるMD計算を実施するが、この効率は遷移状態付近の構造からMD計算を開始できるか否かに左右される。しかし通常この遷移状態は未知であり、TPS法の実施の前に高温下もしくは外力存在下での事前MD計算を行うなど追加の計算労力を要する。初年度である今年度はこの遷移状態付近の構造を効率的に見出すために、構造予測AIであるAlphaFold2(AF2)の活用を検討した。 本研究課題で対象とするシュウ酸トランスポーターOxlTのアミノ酸配列にAF2を適用すると、OxlTがとるべき三構造(外開き、閉、内開き)状態のうち外開き構造のみが予測された。こうした予測構造の偏りはAF2の問題点の1つとして知られている。そこで本課題開始前に実施していたOxlTのMD計算データから構造遷移時のアミノ酸残基間コンタクト変化を調査し、さらに残基間の共進化度をバイオインフォマティクス的手法により解析した。これらの解析から重要残基を特定し、そこに変異をかけて再度AF2による構造予測を実施した。すると予測構造の偏りが解消され、多状態の予測が可能になることを発見した。 さらにAF2によって多状態を予測できるようにすると、安定点である外開き、閉、内開き状態のみならずそれらの中間構造も予測されることを発見した。そこでAF2により予測された中間構造からMD計算を開始すると、期待通り安定な構造状態いずれかに緩和していく傾向が見られた。すなわちこの中間構造は遷移状態に近いことを示唆しており、AF2を活用することでTPS法に利用可能な遷移状態付近の構造を高速に生成できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である今年度は、TPS法を用いてトランスポーター蛋白質を対象に遷移パス探索および反応座標推定まで実施する予定であった。反応座標推定は現状未実施であるが、当初計画にはなかったAF2による予測構造がTPS法に活用できる発見があった。初年度は実際にAF2による予測構造から出発したMD計算によって遷移パス探索を実施しており、目的の達成のため総合的には順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からはTPS法によってトランスポーター蛋白質の構造遷移過程を多数観測し反応座標推定に取り組む。特に、TPS法とAIを組合わせ遷移パス探索と反応座標推定を行う手法が本研究課題開始後にGerhard Hummerらによって発表されており(H. Jung, ..., G. Hummer, Nat. Comput. Sci. 3, 334-345, 2023)、本課題で対象とするトランスポーター蛋白質の構造遷移にも適用できるか調査する。また、蛋白質のような大規模自由度系での構造遷移の反応座標は一つとは限らず、構造遷移の進行メカニズムが異なる複数の反応座標を有する可能性がある。上述のAIと組合わせたものを含め現在の手法では単一の反応座標を前提としているため、本研究では複数の反応座標を見分けて推定する手法の開発も検討する。
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