Project/Area Number |
23K14192
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大塚 尭慶 新潟大学, 脳研究所, 助教 (30972111)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 再生 / アフリカメダカ / 老化 / 細胞老化 |
Outline of Research at the Start |
私たちヒトを含む哺乳類の持つ器官再生能は極めて限定的である。しかし、再生が阻害されている要因に注目した研究は研究方法上の制約もありほとんど行われていない。本研究では、老化により再生能が低下することが報告されているアフリカメダカをモデルにすることで、「老化が再生を阻害するメカニズム」を明らかにすることを目指す。尾ビレの再生に注目し、個体老化により進行しかつ正常な再生に影響を及ぼすと考えられている、①細胞老化、②細胞増殖能低下、③免疫老化のそれぞれについて、これらの現象がどのように連関して再生を阻害するかを組織学・分子生物学的手法により再生を阻害している因子の振る舞いを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
魚類や両生類など脊椎動物の一群は、我々哺乳類には見られない高い器官再生能を有する。これらの生物モデルを用いて再生のメカニズムの理解を目指す研究は多く行われているが、一方、再生が阻害される要因に注目した研究は研究方法上の制約もありほとんど行われていない。本研究では器官再生能を阻害する1つの要因である「老化」に注目し、老化により再生能が低下することが報告されているアフリカメダカの尾びれ再生をモデルとして、細胞老化・細胞増殖能低下・免疫老化の観点から老化が再生を阻害するメカニズムを明らかにすることを目指す。 2023年度は組織学的な解析を中心に行い、アフリカメダカが老化により再生能が低下しているかどうかの再評価を行った。まず、2.5, 5, 7ヶ月齢の個体を用いて尾びれを切断し、その後の再生過程を経時的に追跡した。2.5ヶ月齢ではおよそ2週間で切断部位の再生は概ね完了しているのに対し、5, 7ヶ月齢の個体では切断後28日においても平均して6, 7割程度の再生率であり、老化による再生能の低下が示唆された。また、老化細胞を可視化するSA-β-gal染色を実施し、尾びれにおいて未切断時に老化細胞の蓄積は加齢に伴い進行はしないものの、尾びれ切断時には若齢個体、老化個体共に切断部位への老化細胞の蓄積が観察されることを確認している。次年度はこれらの定量解析を行う他、介入実験を行い老化細胞の除去が再生に及ぼす影響を評価する。 次年度以降の解析で用いるため遺伝子改変アフリカメダカの樹立を目指して実験を実施したが、未だ系統の樹立には至っていない。原因として一細胞期の受精卵の数を十分に確保できなかったこと、ゲノム情報が十分に整備されていないアフリカメダカのプロモーター部位をコンストラクト作製に利用したが、個体内でこの領域の活性化が生じていない可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度の予定では組織学的な解析を中心に行う予定であった。この目標は概ね達成できたと言える。アフリカメダカの老化による尾びれの伸長率の低下を確認した。また、若齢個体では老齢個体と比較して再生中の個体の成長が著しいため、体長に対する尾びれの長さの比率を求め、老齢個体では若齢個体と比較して有意に低下することも確認した。以上の結果からアフリカメダカの老化による尾びれ再生能の低下は再現性を伴い起こる現象であるという結論を得ている。しかし組織染色のうち抗体を用いた免疫組織化学は予定していた計画を終えることができなかった。これは抗原の保存性の低さにより市販の抗体を用いた免疫組織化学が実施できなかったことが要因として上げられる。したがってアフリカメダカのタンパク質を抗原とした抗体作製を受託し、得られた抗体を用いて注目するタンパク質の再生過程における発現変化を確認することを計画している。 遺伝子改変アフリカメダカの作製は2023年度中の系統樹立を達成することができなかった。一度に得られるアフリカメダカの受精卵が少なくコンストラクトのインジェクションが困難であったため、飼育環境を見直し安定的に受精卵を得られるように改善を行った。また、アフリカメダカのプロモーター領域を増幅しコンストラクトを作製したが、ゲノム情報が十分に整備されていないため、標的プロモーター領域が正しく増幅できているかの判断がつかなかった。そこで現在はゼブラフィッシュのプロモーターをコンストラクトに組み込み遺伝子改変アフリカメダカの作製を進めている。標的とする遺伝子について、異なる種(アフリカツメガエル)においてもゼブラフィッシュのプロモーターが活性化し系統樹立が可能であることが報告されている。2024年度前半に系統を樹立し、後半には解析に利用できるように実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子改変アフリカメダカの樹立を最優先に実験を進めている。ジェノタイピングにより候補となる個体が確保できたら早急に次世代個体をサンプリングし系統樹立の可否を判断する。インジェクションも継続的に行っており、2024年度前半の系統樹立を目標としている。樹立した系統は組織学的な解析と細胞ソーティングにより細胞を回収し、RNA-seqを行い老化により発現が変動する遺伝子の同定を行う予定である。また、遅れている組織学的解析は抗体の作製を受託し、再生過程における経時的発現変化を追跡する予定である。 2023年度は定性的な評価が中心となったので、2024年度は定量的な解析を中心に行う。具体的には老化細胞の定量やqPCRおよびRNA-seqによる遺伝子発現変化解析を計画している。既に再生過程における尾びれを経時的に回収しRNAの抽出やqPCRの予備実験は始めており、2024年度に予定している計画は順調に進めることができると期待している。 2024年度はさらにインヒビターアッセイなど尾びれ再生への介入実験を開始することを予定している。これらは飼育水中に混合するため、適切な濃度の条件検討を行う。2023年度の解析により切断後2週間で若齢個体と老齢個体で再生能の差が確認できているので、エンドポイントとして設定し、介入実験により再生能が変化するかの検証を行う。変化が確認できた場合は組織学的解析や遺伝子発現変化の解析を進める予定である。
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