Project/Area Number |
23K14237
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
畑 貴之 弘前大学, 医学研究科, 助教 (10939995)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 転写活性化 / 遺伝子進化 / プロモーター / エピゲノム |
Outline of Research at the Start |
遺伝子配列の誕生とゲノムへの固定、成熟・多様化といった、「遺伝子の一生」に関する研究は、これまで主に生物種間で遺伝子配列を比較する「比較ゲノム」の手法で進められてきた。しかし、比較ゲノムのアプローチでは、遺伝子生成の最初期プロセスのメカニズムや動態の解析は事実上困難だった。一方我々は、植物細胞を使った独自の人工進化実験から、ゲノム中に挿入したタンパク質コード配列が、新規に転写能を獲得する「de novo転写」という現象を世界に先駆けて発見した。本研究ではde novo転写を軸に、誕生直後のコード配列が真核ゲノム中で転写能を獲得し、「遺伝子」へ成熟していく初期プロセスを実験によって解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子配列の誕生とゲノムへの固定、成熟・多様化といった「遺伝子の一生」に関する研究は、これまで主に生物種間で遺伝子配列を比較する「比較ゲノム」の手法で進められてきた。一方我々のグループでは、実際に植物の核ゲノム中に新規のコード配列をランダム挿入し、偶然にも発現した系統を解析する独自の実験進化的手法から、コード配列のすぐ上流で新たな転写開始点(de novo転写)が生まれることを発見した。このde novo転写の転写活性化には、周辺クロマチンのエピゲノム状態の局所的変化の関与が示唆されているが、技術的な困難さもありいまだ未解明な部分が多い。本研究では、de novo転写の転写活性化に関与するエピゲノム因子を明らかにすることを目的とし、遺伝子座特異的ChIP法(enChIP法)によるde novot転写領域周辺クロマチン構造の解析を試みる。enChIP法はゲノム上の特定座位のクロマチンを特異的に濃縮できる手法だが、植物サンプルでの実績はこれまでにない。そこでまずシロイヌナズナを実験材料に、相互作用既知のゲノム領域として、FLC遺伝子をモデルに実験系の確立を試みた。FLC遺伝子はその遺伝子領域の5’末端と3’末端とが物理的に相互作用していることが知られている。In vitro条件でのenChIP法で検討を重ね、非常に低回収率(濃縮率)ではあるがFLC遺伝子特異的なクロマチンの濃縮に成功した。しかし、目標であるde novot転写領域周辺のクロマチン構造の解析には現在の効率では足りないことが予測されており、系のさらなる改善を進めている。また、de novo転写の発現動態を選択圧下で観察するための実験サンプルの準備も進めており、ベクターおよび培養環境の準備が完了次第挿入変異系統の作出・維持に進む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安定的な植物・植物培養細胞の培養環境構築に予想以上に時間を要したこともあり、植物あるいは植物培養細胞を用いた遺伝子組換え実験、生理学的実験等については安定的な培養環境構築を待たざるを得なかった。その間については、in vitro enChIP法の検討や、形質転換ベクターの構築、in silico解析等を進めた。特に、植物サンプルでのin vitro enChIP法について、低効率ながらもモデルサイトでのゲノム座位の濃縮に成功している。植物・植物培養細胞の両面から現在も系の改善を進めており、次年度中には当該手法を応用したde novo転写領域のクロマチン濃縮についても検討を開始する予定である。またこれについて、当初計画ではMPRA(Massively Parallel Reporter Assay)法による網羅的解析と組み合わせたゲノムワイドなクロマチン動態の解析を予定していたが、本年度の検討結果よりこれが非常に厳しいことが強く予想された。このため、既知のde novo転写領域からいくつかモデルサイトをピックアップし、クローンを確立させたのちに進める予定である。 また当初計画にはなかったが、植物培養環境の構築期間中よりde novo転写領域のin silico解析を進めており、de novo転写開始に必要な要素について既報のゲノム・トランスクリプトーム・エピゲノムデータを統合したモデルの構築を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
植物サンプルでのin vitro enChIP法について、現在モデルサイトでの領域特異的なクロマチンの濃縮に成功している。その一方で、濃縮率はいまだ低く今後も系の改善に努める。特に、非特異的結合を抑制するための洗浄条件の検討が重要で、これを含めてプロトコルの最適化を進める。また、in vitro enChIP法での濃縮率では、de novo転写周辺のクロマチン解析に十分ではない可能性が本年の研究より得られている。そこで、in vitro enChIP法と比べて高い濃縮効率を得られるin vivo enChIP法についても検討を進める予定である。 選択圧下でのde novo転写の発現動態研究については、実験サンプルの準備を進めており、次年度中の変異系統の作出・サンプリングを予定している。 これらwet実験系に加えてin silicoでの研究として、既知のde novo転写領域の情報をもとに、de novo転写領域となりうる領域の深層学習予測を試みる。
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